第3話 勇者の力と賢者の力を検証する
「ヒーリング」
自分に治癒魔法をかけると身体中が輝き失われた体力が回復する。
「やっぱり、賢者の魔法で回復できたか……」
先程の、剣を振るたびに体力が消耗してしまう問題はこれでほぼ解決することができた。
一般的な僧侶が行うヒーリングでは回復量も少ないらしいのだが、魔力が多い賢者のヒーリングであれば、瞬時に全快まで持っていくことができる。
「あとは、魔力の消耗をどうするかについてなんだが……」
それについてもアイデアがある。今の時点ではまだ力量が足りずに効果を付与できないのだが、ブレイブソードを召喚した際に付与できる効果に体力吸収・魔力吸収というものが存在している。
これは斬った相手の体力や魔力を吸収することができるものなので、この効果を付与して戦えば消耗した魔力をその場で補うことができるのである。
これさえあれば、無限に戦い続けることもできるので、慣れない異世界生活でも大丈夫。
「それはともかくとして、賢者といえばやはり魔法だよな?」
先程は回復魔法を使ってみたが、賢者はありとあらゆる魔法を習得することができる。
地水火風光闇の六属性魔法。バフデバフなどの状態魔法。転移・インベントリなどの時空魔法などなど。
正直魔法の種類が多すぎて、今の知識でもすべてを補うことはできない。
「とりあえず、インベントリ」
まずはインベントリという亜空間を開く魔法を使ってみた。
次元が裂け、目の前に暗い空間が出現する。
この魔法は亜空間に物を収納することができる魔法で、中では時間が一切経過することがない。
この魔法を覚えるには、生まれ持った才能がある一部の天才が努力を重ねなければならないと言われている。
「流石に何も入っていないか」
開けてはみたものの、この世界に転生したばかりなので、何もアイテムが入っていなかった。
「転移魔法があれば一度行った場所にいくこともできるらしいし、ひとまず行き倒れすることはなさそうだな」
先程、崖下をみた際に川が流れているのを発見していた。例え道に迷ったとしても、水源さえ確保してあれば生き延びることも可能なため、安心して探索をすることができる。
「一応、今の段階でも大規模な破壊魔法を放つことはできるんだけど、落ち着くまではやめておいたほうがいいよな?」
一発放てばモンスターを数百匹単位で殲滅できる魔法が四つほど扱えるらしのだが、放った瞬間魔力が空っぽになってしまう上、他のモンスターの注意を引きかねない。
試すにしても、他の場面を用意して行うべきだろう。
「この世界においての安全性についての目処はたったし、あと一つ検証をしたらそろそろ移動をするか……」
なぜ俺がこの世界に降り立ったのか、根本的な原因がわかっていない。
まずはそれを調べなければならない。
そのためにも自身が何をできるのかできるだけ把握しておく必要がある。
俺は精霊使いとしての能力についての検証を始めることにした。