第15話 飯テロをする
街道沿いの広場とはいえ、それなりに設備が充実している。
現代のキャンプ場程ではないが、カマドくらいなら存在していた。
近くに川があるので洗い物もできるし、近くの林では山菜も採ることができそうだ。
三人から離れた俺は、別なカマドに近付くとそのそばにいる冒険者に声を掛けた。
「すみません、この残り火ってもらってもいいですか?」
カマド近くのテーブルで食事をしている四人が振り向く。
先程までここで料理をしていたのだろう。テーブルの上には簡単に作られた料理と酒瓶が並んでいた。
「構わねえぞ。好きに使え」
リーダー風の男が許可を出し、他の三人も笑顔を返す。
こういった場所では互いに助け合いが必要だからか、友好的な態度をしている。
許可をもらった俺は、残り火に薪を継ぎ足した。
魔法でも着火することができるのだが、温存できるに越したことはない。
鞄に手を入れるふりをしてインベントリから食材を取り出し、調理台に並べる。
ソーセージにチーズ、ジャガイモ、ベーコン、その他様々な野菜に香辛料。
フライパンにオリーブオイルを引き、順番に炒め始めた。
湯気が漂い、肉の焼ける音と共に美味しそうな匂いが漂う。
キャンプでやったら絶対に美味い飯を再現し、皿に盛り付け、朝買った焼きたてパンとスープを添えれば立派な晩飯の完成だ。
ソーセージをフォークで刺すとプツリとした感触が伝わってくる。
持ち上げると、チーズが伸びソーセージに絡みつく。
噛むと「パリッ」と音が弾け、口の中一杯に肉汁が溢れ、チーズと混ざり絶妙な旨さを感じる。
「うん、何の肉のソーセージかわからないが、こっちの世界の食材も美味いな」
店で買い物に悩んでいる最中にオススメされたのだが、少し高めではあったが買って正解だった。
帰りにも立ち寄って追加で購入すべきかもしれない。
一人食事を楽しんでいると、先程まで雑談をしていた冒険者たちがこちらを見ていた。
「あの、何か?」
「お前、そんなに沢山の食糧を運んできたのか?」
護衛依頼では日中ほとんど動き回ることになるので、食材を持ち運ぶのに適していない。
俺はインベントリに入れることができるので、新鮮な食糧を運ぶことができる。
さらに、スープや焼きたてのパンなども保管して置けるので、野営でも食べられる料理の種類が街と変わらなかった。
「食事が趣味なので、荷物のほとんどは食糧ですね」
咄嗟に誤魔化しておく。
「確かに美味そうに食ってたよな」
他の三人も物欲しそうな顔をしている。
彼らの食事も決して不味くはないのだろうが、新鮮な食材で作った俺の料理には劣る。
「まだ食材も残ってるので作りましょうか?」
「いいのか?」
驚く様子を見せるリーダーに。
「荷物これだけで限界だったので、酒を分けてくれるなら」
実際、酒までは気が回ってなかったので買っていない。
それぞれが必要とする物を提供しあうだけだ。
「交渉成立だな!」
互いに右手を差し出し握手を交わす。
それから俺は追加で料理をすると、彼らと食事をともにして、この世界の有益な情報をいくつも教えてもらうことができた。