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第10話 ミアとの勝負

「それじゃあ、ナタリー。合図をお願いね」


 それぞれが準備を終えると、ミアはナタリーに話し掛けた。


「スタート!」


 まずは五十メートル先へのダッシュとなる。彼女の合図と同時に、


「『速度上昇』」


 アメリアが魔法を唱え、ミアの身体が輝いた。

 おそろしい速さでスタートダッシュを決める彼女を見た俺は……。


「なっ!? ずるくないかっ!?」


「仲間との連携も大事だからね!」


 俺の非難を嘲笑いながら木に向かって走っていく。


「そっちがそのつもりなら……」


 俺は右手でブレイブソードを短剣の形で召喚し、無詠唱で自身に敏捷度が上がる魔法を掛けた。


「こっちもやらせてもらうっ!」


「なっ!」


 アメリアの驚く声が聞こえた気がするがどうでもいい。俺は一気にミアとの距離を詰めると木の手前で彼女に並んだ。


「嘘っ!?」


 まさか追いつかれるとは思っていなかったのか、驚愕に目を見開いている。


「俺も魔法を使わせてもらった。いまさら卑怯とか言うのはなしだぞ?」


 そう切り返している間にも木に到着する。

 見上げてみると、本当に細くて長い。


 木の表面がツルツルしているので、登るのは容易ではなさそうだ。


「コスモの木だよ。天敵から木の実を守るため登りつらくなってるの。余程の木登り名人じゃなきゃ足場が不安定なこれを登りきるなんて不可能だから、怪我しないうちに諦めた方がいいよ」


 ミアはブーツを脱ぐと、木に足をかけて登り始めた。

 身軽な彼女だからこそできるのだろう、危なげなくスルスルと上に登っていく。


「なるほど、追いつかれても別に構わなかった。最初からこの勝負に持ち込んだ時点で自分の勝利を確信していたってわけだな?」


 上手く口車に乗せられていたようなのだが、相手のことをよく知らないで勝負を持ちかけるのはよくないという教訓を学ばせてもらった。


「何ぼさっとしてるのさ! こっちはもう半分登ったよ!」


 あからさまな挑発をしてくる彼女。俺が木に登れないと言うのを確信しているのか余裕がある。


 確かに、俺は木に登ることはできない。

 現代でもやったことがないし、彼女ほど身軽ではないから。


 だけど、方法がないわけではない。


 俺がいい返さないからか怪訝な表情を浮かべるミラ。俺は魔法を使った。


「『遠隔魔法、風刃』」


 通常の魔導師は手元で魔法を練り上げ飛ばすことになる。

 だが、賢者の能力を持つ俺は、好きな場所に好きなように魔法を発生させることができるのだ。


「何して……?」


 俺の言動に注目していた彼女には、俺が何をしたのかわからなかった。

 木の上から実が落ちてくる。


 それを俺は危なげなくキャッチしてみせた。


「あっ!」


 ミラのほうけた声が聞こえる。


「それじゃ、お先に」


 目的の木の実を手に入れた俺は、勝利条件であるゴールまでゆっくりと歩いて戻るのだった


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