表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

孫の顔

作者: 茶樺ん

 案内役と庭に出ると、大きな声を上げる老婆と、付き添いらしい妙齢の女性が居た。


「孫の顔を見るまでは死ねない」


 老婆が叫んでいるのは、要はそう言う事らしい。


「困った方なんですよ」


 案内役は苦笑した。


「お子さんは亡くなっていて、お孫さんも既にいらっしゃらないので。叶わない願いなんですが、納得して戴けなくて」

「養子を取って、孫を産んでもらえばいいのでは?」


 思い付きでそう言うと、「とんでもない!」とそう言った案内役の表情には、わずかだけれど恐怖が浮かんで見える。


「そんな提案したら、死なせる気かって怒られちゃいますよ。ご家族に」


 なるほど。

 自分の軽率な考えが恥ずかしい。


 何でも、付き添っている女性は曾孫だそうだ。

 なるほどね。


 小さい子が駆け寄ると、途端に老婆の表情が優しくなる。


 その子に手を引かれ、老婆は歩き出した。

 シッカリとした足取り、っていうか結構速いけど、大丈夫?

 子供は老婆に付いて行くのに小走りだ。

 付き添っていた女性は追い付く積もりは無い様で、ノンビリと後を歩いて行く。


 さっき反省したばかりなのに、あちらで子や孫の顔を見るのはまだまだ先なんだろうな、なんて考えが、どんどん小さくなる老婆の後ろ姿に浮かんだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ