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 朝、いつも通りの時間に起きて朝ごはんを作った。ついでに、お昼の分のサンドイッチも用意した。


 食堂でご飯も食べたいけど、今はとにかく節約。それに、お昼を食べなくてもあんなに仕事をが遅いんだから、お昼を食べに出ている暇なんかない。もし少し小腹が空いたら、お部屋で食べてもいいか聞いてみようかな。


 …まあ、聞ければだけど……。昨日の失敗もあるし、余計なことは言わないやらない。


 パンや野菜を使い切ろうと思ったら大きなサンドイッチが6個もできてしまった。肉体労働だし、材料は使い切らなくちゃいけなかったし、残してもいいから、と、色々な言い訳を並べてとりあえず持っていくことにした。



 王城について制服に着替え、エバンズ様のお部屋へ着く。扉を開ける前に、もう一度心の中で、とにかく仕事、余計なことは言わないやらない!と強く唱えてノックをする。


コンコン


…コンコン


……ゴンゴン!!


 で、デジャブ…?


 昨日と同様ノックをしても返事がない。昨日だって返事なく部屋に入ったことは怒られていないし、とにかく入るしかない!行け!メイベル!


 自分を叱咤激励して扉を開ると、



「ギャっ!」



目の前には黒い布の塊…いやこれはおそらくエバンズ様、が床に転がっていた。


 わたしの驚きの声を聞いてもまったく動きがない。たぶん、また寝てる…よね?これは、起こした方がいいやつだよね…?それって余計なことのうちには入らないよね…!?



 昨日の失敗があって、慎重になりながらも、ここに寝ているエバンズ様を放置する方が失礼なはず、と信じて起こすことにきめた。



「エバンズ様〜…エバンズ様〜〜…」



恐る恐る声をかけるが反応がない。ゆ、揺さぶらないと起きないかな…?


 しゃがんでそっと肩の辺りを揺さぶる。


「エバンス様、起きてくださあい…」


起きない…昨日踏まれてようやく起きたくらいだし、少し強い刺激じゃないとだめなのかな…


「エバンズ様、起きてくださあい…!」


意を決して声を大きく、肩を少し強く揺さぶると、




ムクリ




そんな音を立てるかのように黒い布の塊が動き、エバンズ様がまた頭をボリボリとかいて上半身を起こした。




「また寝てたか…」



「お、おはようございます」



窓を見て朝を確認するエバンズ様に声をかける。


「…ああ、昨日から来てるメイドか。」


「はい、メイベル・ペリドットでございます。先日は仕事が終わっていないにも関わらず帰ってしまい申し訳ありません。本日もまた、よろしくおねがいいたします。掃除の続きからよろしいで」



ぐうううう



「……エバンズ様…?」



エバンズ様のお腹から聞こえてきた音に思わず喋るのを止めてしまった。




「…気に、しないでくれ」




髪に隠れて少ししか見えない頬が赤くなっているように見えるのは気のせいなのか。




「もしかしてお腹、空いてますか…?」


「…ん?」



……はっ!またやってしまった…!気にしないでくれって言ったら気にしちゃダメじゃん!!余計なことは言わないんだよ!!ど、どうすんの!!


「あっ!あの、今日わたし、サンドイッチを作ってきていまして!!もし、よろしければ、召し上がりますか?」



「…」



あっああああ!!焦った頭で発言しちゃダメ!!!また失言だ…!!


 もう本当にクビです、呪いです。バロン、お父様、本当にごめんなさい。




「食べる」



?………!?



「え、召し上がるんですか!?」


「君が言ったんだろう」


「あ!あ、ハイ!そうでした!あ、じゃあご用意しますね!座ってお待ちください!」


バロンやお父様の顔が走馬灯のように頭に流れていたが、それを急いで打ち消す。


 エバンズ様のお部屋は広く、来客用に使うソファーとテーブルはあるけど、そこはまだ埃が溜まっていて食べるのには使えない。エバンズ様のお仕事用の机に、持ってきたランチョンマットを広げ、バスケットからサンドイッチを取り出して並べた。


 すでに席に座っているエバンズ様に、


「よろしければどうぞ、お口に合えばいいのですが…」


と声をかけた。


 もうこれも不味かったらきっとクビ……


 だいたい、家族以外に自分の作ったものを食べてもらうなんて初めてじゃない?一応お父様もバロンも美味しい美味しいって食べてくれてるけど、家族の贔屓目で言ってくれてるだけだったらどうしよう。しかも具材も市場で安く売っているものばかりだし、エバンズ伯爵家のようなお金持ちの伯爵家の方にはお口に合わないかも…!


 ああもうサンドイッチが不味いせいでクビだ…!



「おいしい」


「………え?」



え?おいしい?おいしいって言いました!?


 机を見るとわたしが大きく作った6個のサンドイッチは、なんと2個まで減っていた。


「食べすぎた…、申し訳ない…」


エバンズ様がハッと手を止め、申し訳なさそうに誤って、わたしの方へ顔を向けた。


 たしかに、あの大きさの…サンドイッチを6個のうち4個をエバンズ様が召し上がるとは思っていなかったけど…


「お口にあったなら嬉しいです」


「…おいしかった。とても」


「本当ですか!」



美味しく食べてくれたなら本望だ。



「一旦片付けますね」


「…ありがとう」


唯一しっかり見える口元が微笑んでいて、なんだか嬉しい気持ちになった。


 喜んでいただけてよかった。今日のお仕事も頑張れそう!




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