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「おーおー、何だ、痴話喧嘩か」
「ほらまた、そうやって首を突っ込まないの」
何も事情を知らないナコトがひょこりと顔を出す。
その後ろから女性が窘め、足を少し引きずりながら追って来る。
「父さん。母さんも」
カイの両親が揃って出てきた事で話を一旦中断する。
タチノが何を言いかけたのか気になったが、今この場では聞かない方が良い気がした。
カイの母親・ホミは、カイがまだ赤ん坊の頃に彼を抱きかかえて暴れ狂う邪神から逃げようとした際、転倒して足を怪我してしまっている。その時の後遺症が未だに残っているのだ。
一家の中では特にタチノが身の回りの世話を助けている。
「お義母さん!言って下されば付き添いましたのにっ」
タチノが慌てて近づく。
「子育てだけでも大変なのに、タチノちゃんにそこまで迷惑掛けられないわ」
こう見えて案外身体だけは丈夫なのよ、なんてホミは笑ってみせる。
自身の母親の楽観的な性格はずっと一緒に暮らしてきたカイには見慣れたものだったが、タチノは心配性らしい。
「すっかりここの暮らしに馴染んだみたいね。もう慣れた?」
「はい……」
「そう。うちの息子を宜しくね。……それから、邪神に気を付けてね。今でこそ鳴りを潜めているけれど今後どうなるか……」
何だか胸騒ぎがするのよ、と付け加える。
「おいおい、あまり不安にさせるような事言うなよ」
「私、こういう勘は外れた事が無いのよ」
あなたが一番よく分かっているでしょ、とホミが言うとナコトは心当たりが有るのか押し黙ってしまった。




