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家の中に入ってからも気まずい空気のままだった。
夫が帰ってきてからも無言なので、タチノは居心地悪さを感じてそわそわしていた。育児も家事も上の空である。
カイは黙々と食事していて、近寄り難い雰囲気を醸し出していた。
暫く無言の時間が過ぎた後、やがてカイがぽつりと言った。
「なあ、タチノ」
「は、はい」
「嫌だったら逃げていいからな」
「え……」
「他の奴と一緒になったっていいし。……タチノには幸せになってほしいから」
邪神を扱うこの村では神守の家を忌み嫌う者も多い。
カイの家は男が短命な血筋なので、現職に就いている父の代があまりに早く亡くなってしまうと、次の世代の子がまだ十分に成長しておらず後継ぎには時期尚早な場合が多々有った。
そこでその間は他の村の神守に来てもらい祈祷してもらうのだが、何処も皆邪神を嫌がって渋るのだ。
また、やっと来てもらっても途中で邪神に怖じ気づき逃げ帰ってしまう者も居る。
本当はこの村で別の家の者にやってもらえればカイの家より一代が安定して長く続くので他の村に迷惑を掛けなくて済むのだが、皆やりたがらないものだから仕方ない。感謝もされないが。
「……私は神守の家に嫁いだ身です。
ですから、そんな事仰らないで下さい」
「ごめん、俺無神経だったよな。タチノは出て行きたくても出て行けないのに、トキだって」
「っ、……違います私は、私はっ……あなたを……っ!」
「タチノ?」
カイがタチノの様子を訝しんだその時。




