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あの後滞りなく儀式を終えた。
最奥の間に続く扉から息子が無事に出てきたのを見て、ナコトはほっと胸を撫で下ろしていた。
『邪神がカイの事を“面白い奴だ”って言っててやけに機嫌が良かったんだが……お前、何言ったんだ?』
「……」
そう父に言われた事を思い出す。
先日の儀式の時バクのあまりの身勝手さに腹が立ち、つい楯突いてしまった。
バクは怒るどころか愉快そうに嗤っていたが。
それに気になる事を言っていた。“お前はあの男に似ている”、と。
バクはあらぬ方を見ていて、誰かに思いを馳せている様子だった。
あの男とは一体誰の事だろう。神守をやり始めたこの家の御先祖様の事だろうか。
それにしても先日の自分の言動はいくら何でも浅はかだったと、カイは猛省していた。
いくら邪神の振る舞いが目に余るからといって迂闊に背いていい相手ではない。一歩間違えたら村人達の人生を棒に振ったかもしれなかったのだ。今回は偶々運良く大目に見てもらえただけで。
(やってしまった……。つい、感情的になって……。これからは努めて冷静に接する事を心掛けなくては)
しかしこれから先、あの邪神と上手くやっていけるのだろうか。
カイがあれこれ煩悶していると。
「――お疲れですか?」
「……っ!」
間近でそっと控えめに声を掛けられて、弾かれたように相手の顔を見た。
「た、タチノ……」
「あ、ごめんなさい……。驚かせるつもりはなかったんですけど、カイさん何だか疲れているのかな、と思って……」
「あ、ああ、大丈夫。心配してくれてありがとう」
「いえ……」
その時、あー、という赤子の泣き声が聞こえてきた。
「トキ」




