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おはなし

評価の程よろしくお願いします。

「アルベル様、お皿をお下げいたしますね」

 俺が頷くと1人のメイドが俺の食べ終えた皿を運んでいく。

もちもちなパンにトマト風味のスープ、新鮮なサラダ、今日も非常に美味だった。

もちろん毎日メニューは変わるが、流石は一流シェフといったところだろうか、何から何まで美味しすぎる。


 俺が俗に言う【異世界転生】をしてもう8年が経つ。

目が覚めた時は非常にビクビクしていたものだが今ではそんなことはない。

むしろ逆だ、毎日が楽しい。というのも俺が非常に恵まれた環境に転生出来たからだろう。


 なんと俺の父さんは見た目が恐ろしいだけではなく、本当に恐ろしい人だったのだ!!

あの言葉を聞いたときには流石に驚いた。

俺の聞き間違いだと何度も疑った。


ある日、父さんの部下は俺と父さん、そして母さんのいる部屋にノックして入ってきて確かに言ったのだ。


「失礼します、魔王様」と。


俺の頭の中は?マークでいっぱいだった。

?マークは俺の頭の中で縦横無尽に走り回り、ごちゃごちゃしていた。

それはまるで人生に絶望した中年のニートの部屋のように。


 俺はどうにか大量の?マークを振り払い、頭の中から追い出した。

ただそれでも混乱状態は続いていた。

両親が部下と話し込んでいたのはありがたかった。

きっとあの時の俺は到底赤子とは思えないすごい表情をしていただろうから。


 「魔王様」と聞いて思い浮かべる姿は沢山ある。

前世で読んでいた漫画に出てきた。

前世ではまっていたゲームにも出てきた。

見た目は同じようなものだったが…


 筋肉はボディービルダー級にむきむきで、背はあり得ないほど高く、角が生え、非常に恐ろしい見た目をした存在。それが俺の知っている「魔王」という存在だった。


 うん、流石に理解してしまったんだ。

見た目なんてそのまんまじゃないか。

逆になんですぐにそれを想像しなかったのだろうか。

父さんが「魔王」だってことに。


 そう、父さんはこの城のみんなに慕われる「魔王」だったのである。

ということはもちろん、俺は魔王の息子。

うん、やばいところに生まれてしまったわけだ。


「美味しかったか?アルベル」

「はい、父さん。美味しくなかったことなんて今までで一度たりともありません!」

「そうか、それはよかった。シェフに伝えておこう」

 父さんはそう言うと近くにいた父さんの部下に何かを伝え、部屋に戻っていった。


 朝食を食べ終えたことだし、とりあえず部屋へ戻ろう。

「お待ちください、アルベル様」

聞いたことのない声だなと思って振り返ると声の主はさっき父さんに何かを伝えられていた部下だった。

「なんですか?」

「お伝えしたいことがございますので、私と共に会議室にいらしてはくれませんか?」

「いいですよ、歯磨きをしたら向かいます」

父さんの部下は「承知いたしました」と言うと去っていった。


前世ではないような歯ブラシだが、質はとても良い。

歯磨き粉もどうやって作っているのかは知らないが前世のものと大差がないように感じる。


歯磨きを終えて会議室に向かうと既に父さんの部下はいた。

高身長でスタイルがいい。顔だって父さんみたいなごつい感じではなくてハンサム系だ。

この世界でもこういう人がモテるのだろうか。


「ご足労ありがとうございます、アルベル様。私、ライザーと申します。」


 ライザー、聞いたことがある。父さん直属の精鋭部隊「魔進軍(ましんぐん)」の1人だったはずだ。きっと相当強いのだろう。


「それで、伝えたいことって何ですか?」

「私ごときに敬語などお止めください、アルベル様」


 真面目な人だな、この人は。しょうがない。

「わかった、要件は何だ?」

(こんな偉そうな態度俺には合わないんだけどな~)


「はい、アルベル様のお父様、魔王レングス様からアルベル様に基礎知識を教えるよう言われまして」

「基礎知識?何の?」

「アルベル様が魔族として立派になられるためにも早いうちにこの世のことを理解してもらう必要があるとのことです」


 これはありがたい。

転生者ということもあり、俺はこの世界のことに疎いのだから。

周りが話していることからある程度の情報は得ていたが、それにも限度があるというものだ。


「なるほど、父さんがそうおっしゃっているのなら頼もう」

「承知いたしました」

 ライザーは相変わらずアルベルが父親の事を尊敬している様子を見て微笑んでいた。


「まず、我々魔族についてです。我々は基本的には魔王レングス様に仕えております」

「基本的にとはどういう事だ?」

「はい、魔族の中にはレングス様を否定する愚かな連中がいるのです。同じ種族といえどあいつらを仲間だと思ったことはございません。なんなら殺害衝動に駆られますから」

 なんでニコッと微笑みながらこんな怖いこと言うの!怖いよこの人……


「そ、そうか。そいつらはどこにいるんだ?」

「はい、反レングス様、いや愚民どもは西の方に固まって暮らしているそうです」

 愚民……

人って見た目だけじゃわからないものなんだな……


「わかり合うことは…」

「無理です、不可能です絶対に」

 即答!!早すぎるよ答えるの。


「そいつらをやっつける事は出来ないのか?」

「はい、残念ながら愚民どもの中には非常に強いのがかなりの数いるのです」

 なるほど、だから対立しているこの状況を放置せざるを得ないということか。

「父さんでも無理なのか?」

「おそらくですが、全員を相手にするのは相当苦戦を強いられるかと。もし全面戦争をするにしてもこちら側にもかなりの被害が生じてしまうのは確かです」

父さんでも無理か……

魔王ってチートってわけじゃないのね。


「ですがアルベル様!これだけは信じて頂きたいのです。決して戦う意思がないというわけではないということを」

「もちろんわかっている」

「それはよかった。私なんて早く戦って、捕まえて、拷問したいのですから!」

 引いた表情をしたアルベルを見てライザーは付け加える。

「もちろん冗談ですよ?」


「よし、じゃあ魔族以外についても教えてくれ」

「ちょ、なんで無視するんですかー!これじゃあ私がヤバい奴になってしまいます!」

「ヤバい奴だろ……いいから早く教えてくれ」

「わかりましたよ、では……」

 ふてくされた表情をしてライザーは話を続ける。


 俺はライザーから魔族以外についても聞いた。魔族以外には「聖人」と「人間」がいるとのことだ。人間がこの世界にもちゃんといるのは驚いた。


 「聖人」は我々魔族の天敵で、魔族の翼が黒色なのに対し、聖人の翼は白色といったように前世でいうところの天使のような見た目の存在らしい。

魔族は魔力を消費して魔法を使うが、聖人は違う。聖力を消費して聖法なるものを使う。内容的には魔法とさして変わらないそうだが非常に強力なものだそうだ。


 「人間」はこの世界では非常に弱い存在らしい。魔族や聖人のように強力な技を使用することが出来ず、それもあって権力もほとんどない。そのため、魔族や聖人に好き勝手されている状況だとか。

世界が違うとはいえど元人間としては複雑な気持ちだ……


この世界は「魔族」、「聖人」、「人間」この3つの種族が支配している。

しかしながら、決して平等というわけではなく、人間が非常に弱い存在であり、虐げられている。

また、西の方に我々魔族、中央に人間、東の方に聖人が住んでいて、これら3つの種族は共存していない。


幸いなことに中央に人間が住んでいてくれているおかげで魔族と聖人の間でのトラブルはかなり減っているわけだ。

ただし、ライザーはこんなことを言っていた。


「魔族と聖人の仲が悪いのは周知の事実ですが、ここ最近戦争が起きていないのは偶々で、これからまた起き始めるでしょう」と。


 俺が生まれる前は当たり前のように戦争をしていたということだ。偶々、俺が生まれてからは起きていないだけでこれから起きるのはほぼ間違いない。


 はあー、やはりこの世界は安全ではないらしい。

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