第一話 プロローグ
今なろうに溢れている成り上がり物を別の視点から書いてみました。
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地方にある僕達の村は普段は食糧品などを売りに来てくれる行商人が月に2、3回来る他には、旅人が一月に一度来るか来ないかといった具合で、中央の街からはほとんど隔離されたような状態だ。
しかし、今日は雰囲気が違った。王都の協会から来たという神官の人やその護衛の人たちで村は賑わっていた。
「なぁグラン、あの人達が僕達のスキルを教えてくれる人達だよな!」
「あぁ、その為にわざわざこんな郊外の街まで来てくれてるんだからな。ロイ」
そう今日は僕達が十歳になってスキルを女神様から貰う日、祝福の日だ。
大きな街では産まれてからちょうど一年になった日に年を取り家族で祝うらしいけど、僕達の村のような小さな村では、村長位しか正確な日にちがわからないのと、余り裕福では無い為、盛大に祝えないなどの理由から、春が始まる頃にある祝福の日に、スキルの授与と誕生日を一緒に祝うらしい。
「なぁ、僕達どんなスキルを貰えるかなグラン!」
「たった一つしか貰えないからすごいスキルがいいよな~」
「昔の英雄王が持ってたっていう『剣聖』のスキル貰えるかな?」
「そんな絵本に出てくるくらい凄いスキルなんて出ないって!そんなたいそれた夢見るの辞めようよ。ロイ」
「いいじゃないか!言うだけならただなんだから。」
そう言うロイに対して僕は呆れた顔をしながらも心の内では少し期待もしていた。
なんでも珍しいスキルが出たら王都の学園へ推薦してもらえるらしい。隣町でも二年前に『治癒』のスキルが出て学園に行った子が居る。
王都のと云えば田舎の僕達からしたら夢の様な場所だ。
「まぁまぁ、そんな事言っちゃって本当はグランも欲しいんじゃないの珍しいスキル」
「べ、別にそんな事思ってないよ!母さん!」
「グランも男の子なんだから恥ずかしがらなくても良いんだぞ。パパも子供の頃は珍しいスキルが欲しいと思ったぞ。ガッハッハ!」
「父さんはちょっと黙ってて!」
そう言ってからかってくるの母さんは三十になるとはわからないほど若く、綺麗な見た目をしていた。
その隣で笑っている父さんは、獣を狩ってきて解体してその肉売る仕事をしている。ただその熊みたいな見た目から、よく旅の人には怖がられている。
「ではスキルを授与する準備が出来ましたので、今日誕生日の方はこの家に入ってきてください。」
スキルを女神様の代わりに授与する事ができる特別な神官の準備ができたらしく、この護衛の人が僕達を呼びに来てくれた。
今回十歳になってスキルを貰えるのは、僕達を含めて6人いる。
母さんと話している間に他の四人は並んでいたので、僕達はその後ろに並ぶ形になった。
一人一人と神官がいる、村長の家に入っていった。
「やった〜〜!『槍術』だ!」
防音も何もない村長の家からは、僕達の前に入って行った子の声が聴こえてくる。どうやら武術系のスキルを貰えたらしく、相当喜んでいる様だった。
「いいな〜」
「やっぱりロイは武術系のスキルが欲しいの?」
「ああ、武器を持って沢山の人を救う人になりたいんだ!」
「ロイならきっと出来るよ。昔からロイは優しくて、強いからね」
「そう言うグランだって頭が良くて、運動神経抜群じゃん」
「いいよ運動なんて疲れるだけだもん。もし戦うなら魔法がいいな〜動かなくていいし」
「そんなこと言うなってグラン。俺はお前と一緒に戦いたいぞ!」
そんな事を話している内に、他の三人も無事に終わってあとは僕達を残すのみとなった。順番的に僕のほうが前に並んでいたのでグランよりも先にスキルを授与してもらう事になった。
「じゃあ、僕の番になったからいってくるよ」
「すごいスキル貰ってこいよ!」
「ハハッ。選べないから何を貰えるかは分からないよ」
そんな会話をしながら村長の家に入って行った。そこには神官さんが座って居て、その横に護衛の人が一人立っていた。
「そちらの席にお掛けください」
「はい、よろしくおねがいします」
「それでは貴方のスキルを伝えましょう」
神官さんの目の前の椅子に座るように誘導された僕は、言われた通りに椅子に腰掛けた。すると神官さんは石板を取り出してそこに書いてある文字を読み始めた。
「貴方のスキルは『身体強化』です」
そう言い渡されても僕には聞き馴染みのないスキルであまりパッと来なかった。
「『身体強化』ってなんですか?」
「あまり知られて無いスキルだけど格闘家なんかが良く持っているスキルで、簡単に言えば力が強くなるスキルよ」
それでも僕にはピンとこなかったが、役に立つという事が分かったのでとても嬉しかった。
家の外に出るとロイがキラキラ目を輝かせながらこちらを見ていた。
「なぁ、どんなスキルだった?」
「『身体強化』っていう力が強くなるスキルだってさ」
「いいな〜!俺もそんなスキルがほしいな〜」
「ロイなら貰えるって!早く貰ってこいよ!」
「おう!言ってくぜ!」
そう言ってロイは機嫌良さそうにスキップで家の中に入っていった。
その家の中でどんな絶望が待っているのかも知らずに……