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第九層 その1 ~オーク~

 ダンジョンの第九層に、若々しくも落ち着いた少年の声が響く。


「この先にいるからな。気をつけろ」

「え! 敵!?」


 敵の存在を伝えるその声を聞いて、のんびりと構えていた私の心臓がドキリと跳ねる。私は声の主──リオに敵の居場所を尋ねる。


「どこに居るの?」

「あそこだ。向こうも気づいているぞ」


 女神装備の力を借りて目を凝らしてみると、確かにこの先の影に何かがいる。ゆらゆらと揺れる松明に照らされて、その姿がちらりと見えた。


〈オークシャーマンです〉


 オークシャーマン。

 その名の通り、豚の頭をした人形のモンスター──オーク族のシャーマンであり魔法を得意とする。オークは筋肉量が多く若々しい個体が多いが、このオークシャーマンにいたっては栄養が不足した老婆のような体格である。その筋張った首には、動物の骨でできた装飾品をかけている。


 アルベルのパーティー〝金色の獅子〟と一緒にダンジョンにきたときには、オークは決して1体で徘徊していることはなかった。必ず複数で連携していたのである。

 それにしても、〝金色の獅子〟のリーダーのアルベルは立派な剣を持っている割に、仲間に戦わせてばかりで自分から前に出ることは殆どなかった。リーダーがリーダーならメンバーもメンバーで、私が前にでて戦っていても支援魔法とかかけてくれないし……。


 などと遥香が余計なことまで思い出しそうになっていると、オークシャーマンが持つ松明の炎に照らされて、その周囲にいる異形の者らの姿が見えてくる。


〈他にも数体いますね。あれは……オークウォリアーでしょうか〉


 オークウォリアーは、いかにもオークらしい筋肉質な体つきで右手に斧とメイスを持った個体がそれぞれ1体づついる。革の胸当てを身に着け、左手には木製のラウンドシールドを握っている。駆け出しの冒険者と同じ程度の装備である。


 オークシャーマンが持つ松明に照らされて、オークウォリアーの後ろにいたオークアーチャーの姿も顕になる。ウォリアーよりは軽装ではあるが、こちらも比較的まともな防具だ。


 彼らと同じく集団で行動していたモンスターとして、キングポルチーニ──第六層に出てくるキノコ型の階層主──がいるが、その配下ソルジャーと比較してもしっかりとしている印象だった。


 よく見るとオークアーチャーもオークウォリアーも首に、装身具をかけていた。動物の骨ではなくなにかの牙に革紐を通しただけの質素な作りだ。

 やけに明るい松明のおかげで、彼らの装備の細部まで確認できる。


 ──それにしても、松明ってこんなに明るかったっけ?


 そう思った瞬間、その炎はぶわっと音を立てて大きく膨らむ。

 それは松明の炎というより──。


「火球だ!」


 遥香が叫ぶと、燃え盛る火の玉は勢いよくこちらへ向けて飛翔を始めた。

 それは松明の炎ではなく、火球──ゲームで言うところのファイアボール──だった。

 放たれる瞬間の火球の明るさでオークシャーマンの手に握られた骸骨付きの杖がちらりと目に入った。一瞬だけ不気味に感じたがすぐさま思考を切り替え、飛翔する火球に意識を集中させる。松明の3倍はある大きさの炎だが飛んでくる起動は直線的だ。

 着替えてばかりのバハムート装備に煤でもついたら嫌なので、十分に余裕をもって回避する。


「矢も来るぞ! 避けろ!」

「大丈夫見えてる!」


 私が火球を大きく避けた所に、オークアーチャーが放った矢が風切り音を立ててこちらへと真っ直ぐに飛翔する。

 壁に突き刺さった矢は矢尻から羽根まで真っ黒に塗られていた。火球で目が暗んだ所を狙って黒塗りの矢を放ってくるあたり、かなり危険な攻撃である。感知系の能力が無ければ気づけなかったかも知れないが、あいにく私達には女神装備の知覚強化や悪意感知がある。アイカはそういった特殊能力は持っていないが、彼女のことなので魔法でなんとかしているに違いない。

 そう思ってアイカの方にちらりと目線をやると、顎に手を当てながら何かを考えるような仕草をしている。


〈連携攻撃とは彼らは知能があるのでしょうか?〉

「いや、午前中戦った感じだと自分から思考してああいう攻撃をしているっていうより、本能的に隙きを狙った攻撃を仕掛けてくる感じだよ」

〈なるほど。敵の情報も集めるだけではなく、行動から相手の思考形態を推測なさっているとは……さすがです!〉

「応戦するぞ」


 尊敬、というより崇拝に近い視線を送ってくるアイカをスルーして、リオが告げる。私たちと行動するうちにリオも徐々にスルースキルを身に着け始めていたのである。というよりも妖精に対して特別視しないようになってきただけなのかも知れないが。

 そう考えつつも私は答える。


「うん!」

〈オークシャーマンは任せてください!〉


 そう宣言したアイカがオークシャーマンに魔法を打たせないように牽制しつつ、私たちに支援魔法をかける。

 リオはオークアーチャーの放つ矢を戦爪で叩き折りながら私の前方を駆け、私はその後に続く。

 こちらへ突進してくる2体のオークウォリアーの一撃をリオは態勢を低くすることで躱し、その横を風のようにすり抜ける。そして、勢いを殺さずに疾走し、オークアーチャーへと肉薄せんと迫る。

 斧で叩き切るはずだった獲物にあっさりと横を抜かれた事でオークウォリアーの意識は一瞬だがリオへと集中する。私は隙きを突いて、ミスリルの剣を横薙ぎに振り抜き一体目を赤い光へと変える。すると、私が剣を振り切ることで見せた隙を狙って、もう一体がトゲ付きのメイスを叩きつけてくる。


「あぶなっ!」


 オークウォリアーが勢いよく振り下ろすメイスに対し、私は女神装備の力を開放してギリギリで身体を捻って躱す。そして、その回転の勢いをのせた剣で反撃の一撃を加え、切られたことで怯んだ所に更に一撃を加えてオークウォリアーを倒した。


 私がそうしてオークウォリアーの相手をしている間に、リオがオークアーチャーを斬り伏せ、アイカがオークシャーマンに氷槍で止めを指していた。

 そんな具合に、ヒヤリとする場面もちらほらあったが、結果的には誰もダメージを受けることなく、5体のオークを倒すことが出来た。



 第九層にまでなると雑魚敵でも明らかに強くなってきている。その上、5対3なので数の上でも負けている状況だ。

 だが、オーク程度の敵であれば女神装備の力を解放すれば勝てる程度の相手だった。リオは速度の遅い敵と相性が良いこともあり、武器の能力を解放しなくても余裕をもって戦っている。

 オークたちの強さは、第七層で戦ったキングポルチーニと概ね同程度だと考えられるが、あのときほど苦戦せずに戦えて居ることから、当時よりも自分たちが強くなっていることが実感できた。


「ちょっときついけど、今の私たちなら普通に倒せる相手だね」

「ああ、連携の練習にちょうど良いな」

「まー練習って言ってもアイカがいないと命がけになっちゃうけどね」

〈回復支援は私にお任せください!〉

「この調子ならこの階層の攻略も行けそうだね」


 その後、私たちはダンジョンを進んでいき、宝箱などを回収しつつ遭遇したオークを片っ端から倒していく。




 そして5つ目の集団を倒したところで──

 ──世界の声が響く。


 《涼風遥香がレベルアップしました》


次回『第九層 その2 ~レベルアップ~』


**************************


読んでくださってありがとうございます!


おまたせしました!

レベルアップです!



ブックマークご新規様ありがとうございます!

ゆるり旅と言いつつしばらくダンジョンに篭っておりますが

お付き合い頂ければ幸いです!


そして、なんと──小説評価☆☆☆☆☆頂きました!!!

評価してくださった方ありがとうございます!

月之木ゆうって人が、お礼の意味を込めて頑張って更新したと言っています!

とーーーっても嬉しかったようで、秘蔵のお酒を飲もうとしています……!


さてさて、ご挨拶が長くなってしまいましたが

引き続き楽しんでいただけたら幸いです。

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