金色の獅子
第五章 首都エルドミトス 迷宮攻略編
目覚めると私のベッドの脇においたクッションで、手のひらサイズの妖精──アイカが寝息を立てていた。
私はアイカを起こさないようにそっとベッドを抜け出し、アイテムボックスから取り出した魔法の水差しから冷水をコップに注ぐ。
程よく冷えた水を飲みながら、昨夜のことを思い返す。
「昨日のたこ焼きパーティー楽しかったなあ」
昨夜、遥香たちは日頃お世話になっている人を集めてヴォレアド武具店の裏庭を借りてたこ焼きパーティーを行ったのだった。最後にアイカの魔法で花火を見せていたが、その時のリオとローラが良い雰囲気だったのが印象的だった。
そのリオはというと、なんと月夜のペガサス亭の一室を借りている。リオの能力〝悪意感知〟については、アイカが結界を張ることで問題をクリアしている。本人曰く「こんなに良く眠れたのは村にいた頃依頼だ。妖精様のおかげだ」とアイカの評価を今まで以上に高めていた。
「さて、暇だし、朝ごはんでも買いに行こうかな」
私はアイカの脇に「サンドイッチを買いに行くね」とメモ書きをおいて、宿を出た。
ダンジョン都市ルテアの北通りを歩くと、朝の爽やかな風が私の頬を優しく撫でる。まだ開門の鐘も鳴っていないので、昼間と比べると人通りは疎らである。
確か、この先の路地を入った所にスーニアおすすめのパン屋さんがあったはずだ。
私が路地を曲がったところで、不意に後ろから声をかけられる。
「おい、お前が最近活躍している新人冒険者だな?」
私は、後ろを振り向き、そして思わず周りを見た。
私以外には誰もいない。
ひょっとしてこの人、私に声をかけたのかな?
そう私が思っていると、
「お前だ」
「え、私ですか?」
声をかけてきた獅子人族と思われる青年は、その整った顔を苛立たしげにしかめる。
「僕たちのパーティー〝金色の獅子〟に入れ」
私はそう言ってきた青年を観察する。
頭部の耳としっぽから判断すると、種族は獅子人族。格好はいかにも高価そうな銀の全身鎧。背中には豪華な装飾の両手剣を背負っている。
こんな時間にこんなキンキラキンの人が話しかけてくるなんて、しかも路地裏で。
──見るからに怪しい。
だいたい、こんな人あったことも無いのに、なんで私のこと知ってるの? 怪しすぎる。
私が無言で訝しむように青年を観察していると、
「なあ、賄賂渡したそうじゃないかあ?」
「何のことですか?」
「しらばっくれても無駄だ。その腰の剣も業物なのだろう?」
青年は私の腰に下げられたアイカが魔法付与した剣に目をやる。
「それは──」
背後からそんな声が聞こえ振り返ると、路地の奥から細身の男が歩いてくる。冒険者風の格好で腰には2本の短剣を携えており、チーターのような尻尾と耳がついている。豹人族の男である。
両側から男に挟まれた形となっていた。
「──ミスリル製っすかね。あー、大丈夫っす。おれあ女に手荒な真似はしない主義なんで」
「ふん。聖剣を手放してもまだそんな剣を持っているとはな」
私は再び獅子人族の青年の方へと向き直る。
この時、遥香の背後では豹人族の男が懐から一本のスクロールを取り出し、空中にホオリ投げた。そのスクロールは瞬時に青い炎に包まれ、役目を果たして焼失する。
「あー魔法付与効果も有るみたいっすね」
「ほう。それで僕たちをサポートしろ。報酬も期待しておけ」
私は「いやあ、この付与魔法ってアイカが魔力を充填しないと使えないんですが……」と言いたいところだったが、アイカのことがこいつらにバレるのだけは避けたいと考えて口を噤む。
私はどうしようかと思案する。
この人たちはきっとギルドで何度が噂を耳にした攻略パーティーだ。たしか、貴族が後ろ盾になってるとかで金とか権力で仲間を集めて、攻略を進めていたはず。
うーん、この人たちは強引だし、下手に断ってトラブルになるのは避けたい。それに、宿まで着いてこられて起きたアイカと鉢合わせるのもまずいし……。
──よし! 私が役立たずなところを見せて諦めてもらおう!
魔王種の身体は頑丈なはずだし、きっと大丈夫。
いざとなったら女神装備もあるし、アイテムボックスの中にはエリクサーや魔剣もある。うん、行けそう。
「そこまで言うなら……」
私が最後まで口にする前に、青年がかぶせ気味に言う。
「ならば着いて来い。僕はアルベル、こいつはノットだ。
早速ダンジョン攻略に向かうぞ」
青年と豹人族の男が並んで歩くのに私はついていく。
──いざって時の備えはあるけど、アイカと離れるのはやっぱりちょっと不安だなあ。
次回『ダンジョンの秘宝』
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いつも応援してくださり、本当にありがとうございます!
新章始まりました!
ここからは意識的にテンポを上げて書き進めたいと思います!
今後も評価や感想などいただければ幸いです。
ラストまで頑張って書き切りますので、
今後も応援よろしくお願いいたします!!!




