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第八層 その1 ~攻略~

「レベルアップもしたし、リオの新武器も試すよ!」


 ということで私たちは第八層へ向かっていた。

 もちろん、いつものキャベツ納品依頼もちゃんと受けてあるので、サクッとキャベツを討伐して第七層の最奥の階段へ。


〈この先が第八層ですね〉

「ああ」


 階段を降りて第八層へと向かう。

 その先はこれまでの階層とは随分と雰囲気が違った。

 まるでここは──


「海の中みたい……!」


 階段を降りた先はまるで海の中のようなアクアブルーの世界だった。

 波打つ水面のような天井からは青い光が差し込み、ダンジョン内にあるサンゴやイソギンチャクを照らしている。空中には、アイカの手のひらサイズのクリオネのような生き物がゆらゆらと揺れている。

 それなのに、息は全然苦しくないし水の抵抗も感じない。


「見た目は海の中だけど、ここってダンジョンの中なんだよね?」

〈はい。それは間違いありませんが、不思議な階層ですね〉


 アイカが自分より小さなクリオネに近づいて観察するが逃げる様子はない。むしろアイカに興味を示すように集まってくる。

 リオがイソギンチャクに棒でそーっと触れると、シュッと目にも留まらない早さで引っ込んでしまう。


「変わった所だな」

「うん」


 私もサンゴやワカメのような海藻をツンツンしながら答える。質感は完全に知っているそれだった。

 私たちはそうして、一風変わった第八層の特殊な環境を観察しながらダンジョン内を歩いていく。




 少し進んだあたりで、キラキラと輝く真っ赤な色のサンゴを見つけた。


「これってもしかして高く売れるやつじゃない?」


 テレビでやっていた宝石珊瑚の特集番組を思い出す。たしか、密漁されるほど高値で売れるとかなんとか言っていたような気がする。

 もちろん異世界での宝石事情なんて知らないけど、もしかしたらこの世界でも高く売れるかもしれない。


〈どうでしょう。ドロップアイテムでは無いですから、持ち帰ろうとしても階層をまたぐと消えてしまう可能性が高いのですが……〉


 アイカが行った実験で、宝箱やドロップアイテム以外の物──つまりはダンジョンで拾った物は階層間を行き来する階段を登ると赤い光となって消えてしまうことが分かっている。それは瓶に入れていても、アイテムボックスにしまっていても例外ではなかった。

 要するにダンジョンからアイテムを持ち帰るにはモンスタードロップを狙うか宝箱を見つけるしか無いということである。

 目の前にあるサンゴもその例外ではない可能性が高い。が、


〈あくまでも検証段階ですから、試しに持ち帰ってみましょう!〉


 好奇心旺盛なアイカはダメ元でも持ち帰る気でいるようで、アイテムボックスに収納しようと真っ赤なサンゴに近づく。

 そして──


「罠だ!」

〈キャッ!〉


『悪意感知』によりいち早く異常に気づいたリオが叫ぶと同時に、サッとアイカの身体を引っ張る。突然後ろから引っ張られたアイカは短く悲鳴をもらす。

 私が「どうしたの?」と尋ねるよりも早く、〝それ〟はアイカが居た場所を空間ごと飲み込んだ。


「ミ、ミミック!?」

「ああ。危ないところだった。まさかこんな形のやつもいるとは」

〈し、心臓が止まるかと思いました……!〉


 驚いて目を見開く私に、額の汗を拭うリオ。そして腕を抱いて怯えた表情でプルプル震えるアイカの目線の先で、ミミックは飲み込んだサンゴをペッと吐き出す。

 周囲を見ると、空中をふわふわと漂うクリオネも、ミミックが飲み込んだ空間の周辺には近づいてはいなかった。ある程度は、それで見分けることもできるだろう。


「この階層は、慎重に進んだほうが良さそうだね」

〈はい……〉


 私たちは気を引き締め直し、ダンジョン攻略を再開した。


 ◇


 道端にあるサンゴや真珠貝を餌にしたミミックに気をつけながら進んでいくと、ようやく普通の敵と遭遇する。

 普通と言って良いのかちょっと疑問だけど。


 私たちに向かって一直線に空中を泳いでくるのは、魚型のモンスターだった。


「アレって、第四層にいたトツゲキアジ?」

「いや、それよりずっと大きいぞ」

〈トツゲキマグロですね〉


 例によってアイカが命名したトツゲキマグロ。

 名前の通り、ただまっすぐに突っ込んで体当たりを仕掛けてくるマグロだった。第四層にもスーパーに売っているくらいのサイズのアジっぽいモンスターが一直線に突っ込んで来たのを思い出す。あれはひたすら突っ込んでくるだけだったし、早さも威力も大したことは無く、女神装備の効果を発動させるまでもなく見切れる程だった。

 私はそんな事を考えながらも、突っ込んできたマグロを余裕をもって躱す。


 直線的なので避ける事自体は難しく無かったけど、今のは時速100kmは出ていたんじゃない? めっちゃ早かったよ。

 すれ違ったマグロの行く先に目をやると、ダンジョンの壁に深々と頭から突き刺ささっていた。


 ……あれは直撃したらやばいかも。


 まあ、当たらないようにするけどさ。

 なんかダンジョンって、自爆豆とかラッシュタートルとか、自滅覚悟のモンスターが多い気がする。


〈マスター、次きます〉

「げっ」


 アイカが示す方を見ると、何匹ものマグロの群れがこちらへ向かって空中を泳いでいた。

 漁師さんだったら雄叫びを上げて喜びそうなマグロの大群が押し寄せる。


「眼が怖いよ」


 瞬きをすることのない数え切れない魚の眼が、じっとこちらを向いて近づいてくる姿は単純に気持ち悪い。

 そんな嫌悪を抱く私の脇を抜けてリオが前に出る。


「丁度いい」


 そう言ったリオが、新武器の試し切りとばかりにミスリル製の戦爪を構える。そして、篭手にある金具を引くとチャキーン!と金属音を立てて収納されていた爪が飛び出す。

 武器を構えたことでトツゲキマグロたちの意識がリオへと集中し、一斉に殺到する。


 しかし、リオがひらりと身を翻して、最初の一匹の突撃コースから外れる。そして彼らの速度を利用して爪によるカウンターを繰り出す。

 その斬撃によりあっという間にマグロの三枚下ろしが完成。違った、戦爪の刃は三本あるので四枚下ろしだった。


 躱す、捌く、躱す、捌く、躱す、捌く。

 作業のようにひたすら繰り返すリオ。


 次々に完成するマグロの四枚下ろしは、完成したはしから赤い光となって霧散してる。

 

「なんか、良い感じにマグロが四枚下ろしになっていくね」

〈はい。でもすぐに消えてしまって残念です。食べられそうにありませんね〉


 アイカはそんな事を言いながら、いつの間にか用意していた醤油とわさびチューブをアイテムボックスに収納している。


 ……そのまま食べる気だったの!?


〈やはり、ドロップを待ちましょうマスター〉

「いや、私は別に食べないから……ッ!」


 私たちがそんなやり取りをしている最中も、普段より楽しそうに最前線で戦うリオはアイカ先生が設計した新武器を思う存分に振るっている様子。


 きっかり10分後。

 リオの試し切りが完了する。


〈リオさん、武器の使い勝手はどうですか?〉

「妖精様、俺にピッタリです。ありがとうございます。腕全体で支えられるので刃が三本になっても力が入りますし、扱いやすいです」


 その後もアイカとリオが「次はあの隠し能力も試してみて良いですか?」〈いえ、アレはいざという時に……〉なんてコソコソやっているのを横目で見つつ、私はドロップアイテムを拾い集める。

 マグロの群れはリオが皆まとめて四枚下ろしにしてしまったので、ドロップアイテムへと変わっている。少量のくず魔石とマグロの(さく)が今回の戦利品である。

 数は少ないので私一人でさっさと集まってしまいドロップ回収は終了。


 リオとのやり取りを終えたアイカが、一目散に飛んできて冊を切り分ける。そして再び取り出した醤油とワサビをつけて試食。


〈んー! おいひいれひゅまふあー!〉

「俺はこのワサビってやつは苦手だ。鼻が痛い」


 リオの獣人嗅覚にワサビはきつかったらしく、鼻を押さえて悶ている。


「えー美味しいのに」


 先程はいらないと言っていたが、いざ目の前に出されるとついつい食べてしまう遥香であった。




 マグロのお刺身の試食会を行った後、お宝を求めて再び歩き始める。


「やっぱりお魚系のドロップは少なかったね」

〈はい、もう少し食べたかったです〉

「第四層のときも、ほとんどドロップが無かったな」

「アイカ、なんでだか分かる?」

〈予想の一つとしては……概ね強さに比例して一匹あたりのドロップの量と質が良くなると考えられます。その点、今回のトツゲキマグロは弱かったですからドロップが少ないのも説明がつきます。しかし、これはまだ仮説ですので今後も調査を継続する必要がありそうですね〉

「お願いね」

〈お任せください! マスターの頼みなら何だって調べちゃいますから!〉

「ありがと」


 私たちは、そんなやり取りをしながらダンジョンの奥へと進んでいく。

 その後何度か敵と遭遇したが、すべてリオの試し切りの標的となったのだった。敵からしたら災難ではあるが、よっぽど戦爪が気に入ったのかリオは普段より随分と楽しそうだった。


 ……調子に乗って足元をすくわれないと良いんだけど。

次回『第八層 その2 ~魔王種の能力~』


**************************


読んでくださってありがとうございます!


シェリオ君は新武器〝戦爪〟がとっても気に入ったようで調子に乗ってしまっています。

ちょっと心配ですね……!


続きが気になると思って頂けたら嬉しいです!

そんな方は是非小説評価☆☆☆☆☆や感想をお願いします!

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