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第七層 その2 ~レベルアップ~

 ダンジョンの第七層の広く薄ぼんやりと光る大部屋の中、私たちは巨大亀型モンスターである階層主〝キングタートル〟と対峙していた。


 ……ちょっ! あれってやばいんじゃない!?


 私の目線の先では、階層主〝キングタートル〟が力を溜めていた。


 階層主の求めに応じるように、ダンジョンの壁面が薄ぼんやりと光り始める。その光は、無数の輝く粒子となって壁から解き放たれ、川の如く空宙を流れていく。向かう先は、階層主の背中の水晶だった。

 まるでダンジョンから供給されるエネルギーを溜め込むように、その水晶の輝きは徐々に強くなり、やがて脈動を始める。

 それと同時に私の中での危機感も強まっていく。早く止めないと強力な攻撃を仕掛けてくるに違いない。

 そう考えたのは私だけではなかった。


〈マスター、私がラッシュタートルを足止めしますので、階層主を止めてください! リオさんは敵の撹乱を!〉


 アイカが声を張り上げ私たちに指示を飛ばす。


「まかせて!」

「分かった!」


 私とリオは短く返事を返し、弾かれたように階層主へ向けて駆け出した。もちろん各種強化魔法と女神装備による強化は付与済みである。

 アイカは私たちに指示を出すと同時に、上へと向けていた手を正面へと振り下ろし、魔法を発動させる。


 ──カスタムマジック──ツイン・アイス・ウォール


 アイカ特製の魔法が発動した瞬間、周囲の気温が一気に下がったような気がした。空中には無数の氷の結晶が生じ、キラキラと宙に舞っている。その氷の結晶は私の眼前から始まり、階層主の足元までを道に見立てて、二つのカーテンを作っていた。無数の氷の結晶のうちの最初の一つが地面へと触れた瞬間──

 ──分厚い二枚の氷の壁が硬質な甲高い音を立てて出現した。


 アイカはこのプロセスを氷の大精霊も感心するほどの早さ──刹那の間に完了させたのである。


 そうしてできた二枚の壁による道は階層主の足元まで続いている。

 リオはその壁の外で敵を撹乱し、私は壁の間を階層主へと向けて走る。

 ラッシュタートルは私を行かせまいとして、壁へ向けて体当たりを叩き込むがこの堅牢さを打ち破れることもなく弾き返されている。そして、壁に阻まれて動きが鈍くなったところを狙って、リオが攻撃を加えるという作戦である。


 しかし、それでもラッシュタートルたちは、がむしゃらに突撃を続けた。

 私たちを止めなければ自分たちの主が攻撃を受けると本能的に理解しているのかもしれない。次から次へと壁に突進を続け、十体目のラッシュタートルが体当たりを終えた時──

 ──彼らの空気が変わる。


 ラッシュタートルは、一点に攻撃を集中させる作戦に出たのである。

 それはラッシュタートルの名にふさわしい動きで、その場にいたすべての個体が一斉に同じ箇所を狙い始めたのである。連続して続く衝突により、まるで掘削工事でも行っているような騒音がダンジョン内に響き渡る。

 それだけの攻撃を受ければ、分厚い氷にもヒビが入り始めるのは必然だろう。厄介なことに、敵が狙っているのは私が向かおうとしている先で、もし壁が破られたら行く手を塞がれてしまう。


「ピキピキいってるけど、アイカ大丈夫?」


 心配になって尋ねる私に対して、アイカはフフフとしたり顔を浮かべる。


〈敵もやりますね。でも想定内です〉


 アイカは、正面へと手をかざし次の魔法を発動させる。


 ──カスタムマジック──シャープエッジ・アイシクル・ピアー


 直後、壁面から鋭く研ぎ澄まされた氷の柱が突き出す。

 その位置は、ちょうどラッシュタートルの突進の軌道上である。それが意味するところは、氷の壁は彼らにとっての凶器へと変わったということだった。

 本来脆いはずの氷だが、アイカの魔法により限界まで強度を高められ、ラッシュタートルの硬い甲羅さえあっさりと貫通するほどに、研ぎ澄まされていた。

 次から次へと突っ込んできたラッシュタートルをその鋭い氷の刃が貫いていく。正確に言うと、敵が自ら貫かれにきているのだが、言わぬが花だろう。


 胴体を貫かれたラッシュタートルは、あっけないほど簡単に赤い光となって霧散するように消えていく。


「よし! これなら行けそう!」


 私は、アイカの魔法によるカウンターが成功したのを横目で見つつ、階層主〝キングタートル〟へと迫る。そして私が階層主の足元へとたどり着くその瞬間、階層主が圧縮していたエネルギーを放とうと、口を大きく開ける。

 初めて相対する敵だが、明らかに口からビームを放ちそうな予備動作だった。


「やばっ!」


 私はとっさにダッと地面を蹴り階層主の頭上へと飛ぶ。アイカとリオを射線上から外すためである。私の意図した通りに階層主は重い首を上へと向けた。

 しかしながら、それは被害を私一人に絞っただけであり、攻撃そのものが止まった訳ではない。階層主の口からはエネルギーが光となって漏れ始めており、いつビームが放たれてもおかしくないことを示していた。

 流石にあれをもろにくらったら女神装備があったとしてもタダでは済まなそうだ。


「っく! 間に合って!」


 私が狙うは階層主の頭。


 私は焦る気持ちを押し殺しつつ、腰に下げたミスリルソードを抜き放つ。そして落下の勢いをそのまま剣に乗せ、階層主の脳天めがけて突き立てる。その刺突は階層主の頭部の角をいともたやすく砕き、致命傷を与えた。

 頭に即死級のダメージを受けた階層主からは力が失われ、支えを失った巨体が轟音を響かせながら地面へと横たえられる。それと同時に、主を失った階層主の配下(ソルジャー)が、一斉に赤い光となって霧散する。


「ふう、ギリギリだった」


 そう言いながら額の汗を拭う遥香だが、階層主〝キングタートル〟からしたら、たったの一撃でやられることは想定外だった。


 本来なら分厚い甲羅と超硬度の角による圧倒的な防御力と、どんな守りも打ち砕く必殺のビームで冒険者を蹂躙するはずだった事は彼の名誉のために明記しておこう。実際には、蹂躙どころか誰一人傷つけること無く、最初に遭遇したパーティー〝妖精の剣〟によって討伐されてしまったのであるが。それもこれもアイカが魔法を付与した異常なほどよく切れるミスリルソードのせい──いや、おかげである。


 階層主を見ると背中の結晶から、溜めていたエネルギーと思われる光が空気へと溶けるように立ち上り、暗いはずのダンジョンを明るく照らしていた。

 ややしてから階層主自身の身体も血光と言う名の赤い光となって消えていく。


 光が舞う中、残ったのは大量のドロップアイテムだった。


〈ふっふっふー! お宝ですー!〉

「今回のドロップは防具や盾が多いな。あとこの石はなんだ?」

「なんかめっちゃ硬そうだね」

〈亀型モンスターからの鉱石ドロップ……もしかして、アダマンタイトでしょうか?〉

「まあ、いずれにしてもヴォレアドのおっちゃん行きだな」


 第七層の階層主〝キングタートル〟を倒した私たちがのんきに会話をしていると、唐突に──

 ──世界の声が響く。


《涼風遥香がレベルアップしました》


 ……え!? レベルアップ!?

次回『第七層 その3 ~新たな力~』


**************************


読んでくださってありがとうございます!


第七層の攻略完了!

ってところでレベルアップしました!!!

どんな能力を手に入れるかは次回のお楽しみ!


いつも応援して頂きありがとうございます!

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『次が楽しみ!』『ワクワクする!』と思って頂けた方は、ぜひ小説評価☆☆☆☆☆や感想をお願いします!

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