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シルフィーン魔道具店 再び

 翌朝。

 月夜のペガサス亭の二階。


「ん、いてて……」


 久々に感じる筋肉痛のような感覚に目を覚ます。

 筋肉痛なんて学生の時以来かも。


「アイカ、マッサージしてー」

〈了解です!〉


 アイカが一生懸命マッサージをしてくれる。

 気持ち良いというより、ちょっとくすぐったかった。


「この筋肉痛ってやっぱり、女神装備を使った反動なのかな?」

〈おそらく、身体が環境に合わせて変化しようとしているのではないかと〉

「なるほど」


 そんな会話をしながらマッサージを受けていると、同じ部屋で寝ていたリオが飛び起きる。


「な、何だこの部屋は!?」


 あー、やっぱり昨日のこと覚えてないんだね。


 昨日は、リオが酔っ払っちゃったから私の部屋まで運んで余っていたベッドに寝かせたのである。

 食事代のついでに、しれっと宿代もリオのお財布から払っちゃったんだけど覚えてないみたいで良かった。ラッキー。

 お母さんって言いながら抱きついてきたのは不問にしておいてあげるよ。

 言ってアイカがまた機嫌損ねちゃったら大変だし。


 なんて事を考えながら、部屋をキョロキョロ見回すリオを眺める。


「もしかして、お前貴族だったのか!?」

「あーいや、違うよ」


 この部屋の内装が豪華すぎたせいで、リオがそういう勘違いをしちゃったみたい。ミスリルの剣の魔法付与のときに、机を壊しちゃってごまかすためにこんなことになっちゃったんだけど、改めて考えてみるとやりすぎたかも。

 いや、絶対やりすぎだよね。


 うーん、なんて説明しようかな。


「えーっと、これはね……そう!

 アイカの趣味だよ!」

〈え? マスター?〉

「なるほど! 妖精様の趣味か! それは素晴らしい!」


 ちょろい。

 ちょろすぎるよ。

 ポルクス村の人といいリオといい、”妖精様”でなんでも納得しすぎだよ。



 このあと、出かけるために着替えたんだけど、アイカがカーテンを設置したりしてまた一段と部屋が豪華になりました。


「さて、リオも体痛いみたいだし、今日はのんびり休息も兼ねて街で過ごすよ!」

「ああ、俺はギルドに寄ってからヴォレアドのおっちゃんの所に行く。昼の鐘の頃に噴水広場に集合でいいか?」


 リオは、昨日の素材の買取金額を確かめに寄ってから、ヴォレアド武具店へと行くらしい。


「うん、私はアイカとスーニアちゃんの所に行くよ」

〈私もマスターについていきます! 猫ちゃんをモフモフするのです!〉

「スーニア? 誰だ?」

「シルフィーン魔道具店の店員さんだよ」

「ああ、魔道具店に行くのか。分かった」


 私たちは宿を出てシルフィーン魔道具店へと向かった。

 別れ際にアイカがリオに何か設計図のようなものが書かれた羊皮紙を渡してたけど何だったんだろう。



 ◇


 シルフィーン魔道具店へと到着。

 ドアを開けると、来客を知らせるベルがカラランと小気味良い音を奏でる。


「こんにちは」


 私が店番をしていたスーニアに挨拶をすると、スーニアもペコリと頭を下げる。


「いらっしゃいま────」


 しかし、挨拶の途中で私を凝視したまま固まるスーニア。


 きっかり3秒後。

 再起動して店の奥へとすごい勢いで走っていく。


「────おばあちゃーん! あの人が来たよー!!!」


 少しすると、物腰の柔らかい老婦人──スーニアの祖母でニリーナというらしい──が出てきてめちゃくちゃ感謝される。


「これはこれは、孫にこんな高価なマジックアイテムをくださってありがとうねえ」


 どうやらスーニアに何気なくあげたリボンがすごく高価なものだったみたい。


「これはお礼だよ」

「いえいえ、そんな受け取れませんよ!」

「そう遠慮ならさずとも……」


 結局、何も返さないのは名折れだとかで、お礼にと魔法の便箋を押し付けられてしまった。なんでも、遠く離れた故郷に送ることができる魔法がかけられているんだとか。

 まあ、後でリオにでもあげよう。流石に異世界までは届かないだろうから私が持っていても宝の持ち腐れだし。


 ◇


 スーニアのおばあちゃんは、私がお礼の品を受け取ると満足して店の奥へと引っ込んでいった。

 ちなみに、アイカは店に入るなりすぐに窓辺でうたた寝をしていた猫の方へと行ってしまった。前は撫でるの我慢してたもんね。


 私はスーニアの耳に着けられたリボンを見つめる。

 ひょこひょこと動く真っ白い毛並みの耳に、薄桃色のリボンが着けられている。

 うんうん。私の見立て通りよく似合っていてかわいいね。でもまさかあれが金貨3枚分もするなんて。


 私が思案していると、見つめられていたスーニアが恥ずかしそうに顔を赤くして要件を尋ねてくる。


「それで今日は……?」

「ああ、今日はこれを売りに来たんだ」


 私はそう言いつつカウンターにダンジョンで手に入れた魔法系のドロップアイテムを並べていく。


 魔法袋ということにしている腰のポーチ(アイテムボックス)から、魔道具やスクロール、ポーション類を取り出しては並べていく。

 最初は期待でワクワク嬉しそうにしていたスーニアの顔が、ある程度の量を超えた辺りで困惑へと変わっていた。


 気づくとカウンターの上がいっぱいになってしまっていたので、これくらいでいいかと手を止める。


「こ、これ全部ですか!?」

「うん、ダメかな?」

「いえ、ダメじゃないですが私一人では……それにお金も足りるか……

 ちょっと待っていてくださいね!」


 再び店の奥へと駆けていくスーニア。

 そして──


「おばあちゃーーーーん!」


 もはやお馴染みになりつつある声が店の奥へと響いた。


 私が「おばあちゃん忙しいね」と思っていると、すぐにニリーナが出てきた。


「これは……!

 スーニア、ギルドまで行って預けているお金をおろしてきてくれるかい?」

「うん!」


 スーニアは元気よくそう答えると、肩掛けのかばんを下げて勢いよく店を飛び出した。その後ろ姿を見たときにふわふわでもふもふの兎尻尾がちらりと目に入った。触ってみたいなあ。


 スーニアの後ろ姿を眺めていると、ニリーナが窓辺の日当たりが良いテーブルへと案内してくれる。


「ささ、こちらへ」


 窓から差し込むポカポカした陽の光が気持ちいい。

 ニリーナがお茶を出してくれたので、飲んでみるとスーニアが入れてくれたお茶とは違って、落ち着く香りでまったりとしたコクのある味だった。なんでも、疲労回復効果があるらしい。

 昨日、ダンジョンに行って疲れている私にはピッタリのお茶である。


 私がほっと一息ついている間に、ニリーナは虫眼鏡を片手に手際よくアイテムを鑑定していた。

 ちらりとアイカの方を見ると、猫と一緒にうたた寝をしている。

 気持ちよさそうな寝顔。昨日は夜遅くまで何かやっていたみたいだし寝不足なのかな?


 そんな事を考えつつ、のんびりお茶を飲んでいると店の奥の方から、扉が開く音と「ただいま」という声が聞こえてくる。

 スーニアちゃんが帰ってきたみたい。


「おや、ちょうど良かったねえ。こっちの鑑定もこれで最後だよ」


 カウンターでスーニアとニリーナが「いくらだったの?」「なんとか足りそうで良かったわあ」などとやり取りしている声に聞き耳を立てつつ、ゆっくりとお茶を飲んで集計作業が完了するのをまった。


 ◇


 結局、ダンジョンから持ち帰ったアイテムは全部で金貨15枚分にもなった。このうち10枚をリオに返したとしても金貨5枚分は手元に残るし、ギルドでの買取もある。

 あまりの金額にスーニアが目を回しそうになっていたけど、さすがのニリーナは平然とした様子だった。でも、嬉しそうに頭部の兎耳をひょこひょこさせていたのは見逃さなかったよ。


〈マスター! これでお肉食べ放題ですね!〉

「うん! 虹雲パフェもね!

 リオからの借金も返せそうで良かったよ!」


 こうして私とアイカは、ホクホク顔で店を後にするのであった。


「次の階層主も倒したらいっぱいお宝出るかな!」

〈きっと今回よりすっごいお宝が出ますよ!〉

次回『幕間 シェリオ専用武器の作成依頼』


**************************


読んでくださってありがとうございます!


次回は幕間です! アイカが考えていた武器です!

ちょっとだけのんびりした後、またダンジョン攻略へと向かいます!


じつは、小説を書き始めてから今月で1年半になります!

まだまだ若輩ですが、今後も応援して頂けたら幸いです!

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