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魔法

「壊しちゃった森を元に戻すよ!アイカ手伝って」


 私は、自分の試し斬りでめちゃくちゃにしてしまった森を見渡しながら、そう言った。


〈任せてくださいマスター! ちょっとだけ待ってください。今作りますからね〉

「へ? 何を?」


 効果改変、詠唱破棄、効果多重化、永続化、連鎖術式……

 アイカがそんなことを呟いたあと、私が森林破壊をしてしまった方向へと両手を向け、()()を放った。


 ──カスタムマジック──ワイドレンジ・キュア・フォレスト


 カスタムマジック。

 それはこの世界にも、そしてゲームにも存在しない──アイカが自ら()()した魔法である。

 アイカがその魔法を発動させた瞬間、巨大な魔法陣が空を覆った。


「え? 何この大きさ……」


 鮮緑に輝くその魔法陣から、雪のように癒やしの光が舞い落ちる。まるで神でも降臨したような神々しい光が降り注ぎ、森を癒やしていく。

 舞い落ちる光が切り株に触れると新たな芽が生え、倒木からも根が生え新芽が芽吹く。


「なに……」


 唖然。

 産まれて初めて見る()()に、私は言葉を失った。

 緑に染まる視界のなか、森が癒やされていく。


「ああ、綺麗……」


 絞り出すように小さくつぶやく私の声を聞いたアイカが、得意になって魔法に込める魔力を更に高めると、森の回復が加速される。

 切り株や倒木からは次々に新芽が生え、一気に大樹へと成長する。その魔法の恩恵は樹だけではなく森全体であることを示すように、草花から苔に至るまで共に成長し豊かな森が蘇っていく。

 しまいには、花まで咲き乱れる有様だった。


 こうして私が切り倒してしまった森が回復したのは喜ばしいことだが、アイカの魔法によってこの辺り一体だけ花が咲き誇るという、異常な光景となっていた。


「やりすぎぃいいいいいいいい!!!」


 辺り一帯全ての木々に影響を与える大魔法の規模に、私は思わず叫び声を上げてしまった。

 花が満開に咲き乱れる光景は確かに綺麗だったけど、突っ込まずにはいられなかった。


〈えへへ。張り切り過ぎちゃいました〉


 アイカはそう言って照れくさそうに、はにかんで笑った。


「本当はこの力を使いすぎちゃダメなんですが……」


 誰にも聞こえない小さな声でアイカはそう呟いた。


 ◇


「アイカ、あそこに何かいる」


 ある程度森が回復した所で、木々の隙間から白いモフモフした何かが見えた。


〈見たところモンスターのようですが、気絶しているようですね。どうしますか?〉

「うーん、どうしよ。怪我とかしてないかな?」


 私は、少しだけ警戒しながら、その白い生き物の元まで近づいた。


「大きいイタチ……オコジョ……くん、かな……?」


 遠くからは分かりにくかったが近づくと、人間の何倍もある体躯の白いイタチ科の生き物のようだった。思わず触りたくなるようなふさふさした綺麗な毛並みで、額には梵字のような朱色の模様がある。

 意識は無いようだが、怪我をしている様子でもなかった。見ると、仰向けのポーズでだらしない顔をして目を回しているようだった。たまにピクピクと左足が動いている。


 きっと、私が試し斬りした時に巻き込んじゃったんだろうな。

 そう考えると申し訳ない気持ちになってくる。

 ごめんね。悪気はなかったんだよ。

 私もさ……まさか一振りで森がめちゃくちゃになるなんて思いもしなかったし。


 心の中でそんな言い訳を添える。


「アイカ、お願い」

〈……気付けですね。やってみます〉


 一言だけで私の意図を察してくれたアイカが気付けの魔法を唱えた。


 ──カスタムマジック──スティミュラント


 アイカの魔法で、気絶していたオコジョくんが目を開ける。

 その瞬間、私と目があった。

 オコジョくんは仰向けの体勢で固まったまま、何度かまばたきをする。


 きっかり5秒後。


「キイーーーーーッ!」


 悲鳴にも似た声を上げたオコジョくんはひどく怯えた様子で、血相を変えて一目散に森の奥へと逃げていった。

 きっとすごく怖かったんだろうなぁ。かわいそうに。

 まあ、私のせいなんだけど……。


「逃げちゃったね。もふもふしたかったなあ」

〈ですね……〉


 アイカと私は二人で肩を落とすのであった。



 もふもふ大作戦失敗から、他にもオコジョくんみたいに可愛そうな事になってしまっている子が居ないか一通り周囲の森を散策した。だが、どうやら被害は先程の1匹だけだったようだ。奇跡的なことである。


 ちなみに散策ついでに私も魔法が使えないか試してみたが、からっきしだった。期待しなかった訳ではないけど、もともとネトゲでも剣士クラス中心にやってきたので、それほど残念でもなかった。


〈さあマスター、迷宮(ダンジョン)に向かいま……〉


 ぐうううぅ~!


 アイカのお腹の音が盛大に鳴った。

 私は、アイカの頭を優しく撫でる。


「とりあえず、ご飯にしよっか」

〈うう……はい……〉


 アイカは両手で顔を覆い、心底恥ずかしそうにそう言った。



 こうしてアイカの魔法を試し、こちらの世界での初めてのご飯を食べることにしたのであった。

 ちなみに、アイカが森を治した魔法の効果は永続、つまりはこの森の恵みをこの先ずっと増やし続けることになるのだが、私の知る所ではない。

次回、モフモフとモグモグ。


**************************

いつも拙作をお読み頂きありがとうございます!


ブクマ&評価ありがとうございます!!!

昨夜更新したばかりですが、たくさん応援して頂いたお礼に、頑張って続きを書いてみました!

皆様のおかげで、もう少しで90PTに届きそうな勢いです!

応援してくださっている方々、本当にありがとうございます!


もしまだの方で、評価つけてもいいよーって方がいらっしゃったら

ぜひ小説評価を☆☆☆☆☆で聞かせてください!

ブクマもコメントも大歓迎です! 執筆の励みになります!


これからも拙作をよろしくお願い申し上げます。

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