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過去とこれから

 私たちはギルドを出た後、月夜のペガサス亭で夕食を食べていた。


「この肉、めちゃくちゃ美味いぞっ!!!」


 感激するリオ。


「ふふふ、美味しいでしょ?」


 得意になる私。


〈んぁ……

 まふあ~、このおひゃけもおいひいれひゅよぉ~〉


 蜂蜜酒を飲んで眠そうにしているアイカ。



 私はうたた寝を始めたアイカの方を眺める。

 今日は頑張ったし眠くなっちゃうよね。私も久々に身体動かしたなーって感じがするよ。


 そんな事を考えながら、私もシチューに手を伸ばす。


「美味しい!」


 昼間倒したキングバッファローのお肉を宿屋に提供したらステーキとシチューを作ってくれたのである。ステーキはダンジョン産の香辛料を使ったスパイシーな直火焼きで、シチューは野菜の旨味がたっぷり入った濃厚クリーム仕立て。


 ステーキを食べている時に、なぜか動物園で羊を見たあとに食べたジンギスカンの味を思い出したんだけど、なんでだろう。


 ◇


 満腹になったリオが一度手を止めて、真面目な顔になる。

 お酒を飲んでいるからか、頬が少しだけ赤い。

 こうしてみるとリオもなかなかイケメンなんだよね。ちょっと若すぎるけど、なかなか凛々しくて美形だし、大人になったらは良い男になるんだろうなぁ。


 私がそんな事を考えているとリオがゆっくりと口を開く。


「……なあ、故郷の……ポルクス村のことを教えてくれないか?」


 私はポルクス村の話をする。

 リオが目を瞑って故郷を懐かしみながら話を聞いている。


「それでね、この首飾りを作るために森に入って迷子になっちゃったんだよ」


 アーシェの話の後、家族の話もする。


「あとね、シェリーナさんの夕食もすっごく美味しかったよ!

 それで村を出るときに、アーシェちゃんがこれをくれたんだ」

「……そうか。アーシェはそういう事もできるようになったのか」


 感慨深げな息を吐くようにそう言ったリオに、私は尋ねる。


「帰らないの?」

「どんな顔して帰れば良いか……」


 リオが言うには、黙って家を飛び出しちゃったから合わせる顔がなくて帰りづらいんだって。


「そっか……」


 私の経験からすると、そんなの気にしないで良いと思うんだけど、本人にとっては難しい問題なんだよね。


「なんで村を出ちゃったの?」


 ちょっと苦い顔になるリオ。

 もしかして地雷ふんじゃったかな……?

 そう思っていると、リオは「お前なら教えても良いか」と小さくつぶやいてから話し始める。


「じつは……俺の能力は……」


 リオはそこで言葉を切ってちらりと周囲を見回す。

 そして声を潜める様に言う。


「”悪意感知”なんだ」

「え? あくい──んんっ!」


 私が喋ろうとした瞬間にリオが慌てて私の口を塞ぐ。


「しっ! 声がでかい!」

「ごめん……」


 リオが小声で言うには、”悪意感知”は自分へ向けられる悪意を感じ取ることができるんだって。その能力ギフトは対人だけではなくて、モンスターの攻撃の気配やダンジョンでの罠なんかも感じ取れるんだとか。


 私は「それってめっちゃ便利じゃない!?」と一瞬思ったけど口には出さないでおく。だってそのせいで村を飛び出すほど辛い思いをしたんだし。考えてみれば、他人の悪意”だけ”が分かるってかなりきついかも。


 この話の中でリオがその能力を一度も”ギフト”と呼ばなかったことも、それを裏付けるものだった。


 私も、働いていたときは先輩からの”そういうの”が辛かったっけ。


「──だから、俺は村を出たんだ」


 村を出た後は、行商人や旅人の助けを借りつつ、いくつかの街を経由して首都エルドミトスにたどり着いたという。その後、冒険者として働き始め何人もの冒険者と組んだけど結局うまくいかなかったという話をしてくれた。

 その話を聞いて、私の脳裏に一つの疑問が浮かぶ。


「えーっと、私たちは? その……平気なの?」


 そう聞きつつアイカの方もちらっと見る。


「ああ。なんでかは分からないが、お前たちからは全然そういうものを感じないんだ。こんなのは家族以外では初めてだ」


 もしかして女神様の何かのせいかな?

 それとも私が他の世界から来たから?

 いくつか可能性は思いつくけど、どれもややこしい話だし、まだ黙っていよう。


「ふーん。不思議だね」


 結局、不思議の一言で片付けることにした。

 不思議って便利な言葉だよね。


「反応薄いな。

 ローラなんて、次の日から態度が変わったぞ」

「いやあ、まあ異世界ならそのくらい居るかなって」

「ん? いせかい?」

「あー、えっと。私の故郷の言葉で、遠く離れた所って意味だから気にしないで」

「そうか。お前の故郷ってどんなところなんだ?」

「いい所だよ。便利だし食べ物も美味しいし。

 まあでも、こっちも人間関係は複雑なんだけどね……」


 当たり障りのない程度に、東の島国(日本)の話をする。


「まあそれで色々あってアイカと旅をしてるんだ……。

 でもやっぱり帰れる家があるのっていいね。私も帰ろうか、帰らないか、結構悩んでるんだ。だから旅をしながら考えることにしてる。

 すぐさま問題を解決しようとすると大体、大失敗するんだから」

「金言だな」


 この時、目を覚ましていたアイカは寝たフリをしながら私たちの会話を聞いて、異世界転生をさせてしまった事にちょっぴり罪悪感を感じていた。

 そして、帰る方法を〈一応……〉と脳内で調べ始めるのだった。


 ◇


 私とリオは、色々な話をした。

 故郷のこと、この街のこと、食べ物のこと、それから攻略のこと(こっちは主にお説教だったけど)とか、話題はたくさんあった。リオも酔っている事もあって普段より饒舌だった。

 アイカも途中から起きたみたいで話に入ってきていた。



 話題の切れ目に、リオが真面目な顔になって「よし」と小さく頷いてから、酒をぐいっと煽る。そして、本当はとっくに決めていた決意を酒の力を借りて改めて口にする。


「なあ、俺とパーティーを組まないか?」


 え?


 私とアイカは顔を見合わせる。

 てっきりもうパーティーを組んだつもりだったんだけど、正式に登録ってことかな?

 そんな事を考えているとリオが言葉を続ける。


「お前たちは家族だ。

 ……その首飾りは家族に送られるものだし」


 え!?

 いきなり家族宣言!?


 再び顔を見合わせる私とアイカ。

 二人ともびっくりした顔になる。


「ダメか……?」


 そう言ったリオの顔には薄っすらと影が落ちている。

 それを見た私たちは慌てて手をふる。


「いや! 全然ダメじゃないよ!」

〈そうです! むしろ今更って感じです!〉

「うん! リオ、これからよろしくね!」

「ああ! こちらこそよろしく頼む!」


 こうして私たちは正式にパーティーを組むことになったのである。



 妖精家族? フェアリーファミリー?

 パーティー名はどうしようかな!

次回『シルフィーン魔道具店 再び』


**************************


読んでくださってありがとうございます!


更新が遅くなり申し訳ありません。

本業が忙しく、物理的に時間が足りませんでした。。。


さてさて、今月末締め切りのコンテスト応募へ向けて一週間を切ったので

そっちも気合い入れて書いていこうと思います!

コミカライズ狙ってがんばります!!!


今後とも、応援よろしくお願い申し上げます!!!

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