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ヴォレアド武具店

~Tips~

獣人王国ユグニスガルドの首都エルドミトスは、王都"アヴァンプル"とダンジョン都市"ルテア"で構成されています。

ダンジョン都市"ルテア"の南通り、通称職人街にはいくつもの武具店が立ち並んでいる。

私たちはリオの案内で、その内のある店に来ていた。


店の扉を開けて中に入ると同時に、リオが店の奥に向かって叫ぶ。


「オヤジ、いるか!? 入るぞ?」


入った店の名前はヴォレアド武具店。

石造りの建物の中には、盾や鎧、短剣から弓、どう使うのか分からない物まで所狭しと並べられている。


〈マスター、これはどうやって使うのでしょうか?〉

「アイカ、触っちゃダメだからね!」

〈大丈夫です。見て観察するだけにしていますから〉

「それなら良いんだけど。

 それにしてもなんか変わったものがいっぱいあるよね。この短剣なんて細工がすっごく細かいよ」

〈マスター、これはマイクロメートル単位の模様です。人間業とは思えません!〉


私たちは念話で話しながら店内を物色していた。

しばらくしても店主から返事がないので、再度リオが叫ぶ。


「おいオヤジ! いないのか!?」


今度は返事が返ってくる。


「うるさいわい。何度も呼ばんでも聞こえとるわ!」


そう言ってぼやきながらサイ人族の大男が店の奥から出てきた。


「なんかサイっぽい人きた!」

「ああ、このオヤジがこの店の親方だ」


リオが紹介してくれる。


「なんだリオか。久々に来たな。

 俺はヴォレアドだ。この店の店主をしている」

「わ、私はハルと言います」

「ハルの嬢ちゃんな。まあ好きなだけ見ていってくれ」


私とアイカは店主のヴォレアドに促され、店内の物色を再開した。

そんな私を尻目に、ヴォレアドとリオの会話が続く。


「まさか、お前さんがあんなべっぴんさんを連れてくるとはな」

「べっ! べつにオヤジには関係ねえだろ!」

「べっぴんって所は否定しねえんだな。どわははは」

「そういう訳じゃ……ただ一回だけパーティー組んで首飾りの事を聞いたら……ゴニョゴニョ」

「ああ? 何言ってんだ?」

「何でもねえよ!」


そんな会話を聞き流し、ひたすらに店内を物色する私。ここまで来る途中でリオが首飾りをチラチラ見てきているのには気づいていたけど、やっぱり何か聞きたいことがあるらしい。

もしかしてコレ欲しいのかな? まあ、あとで聞くつもりならその時でいいや。

それにしても店内にはゲームでも見たことが無いような変わった品がたくさんあった。そんな中、ある見慣れた形状の剣が目に留まる。


「これってカタナ……?」


大好きな日本刀に瓜二つの剣を見つけて思わずつぶやく。返事を期待しての言葉ではなかったが、ヴォレアドが反応した。


「そうだカタナだ。よく知ってるな」

「えへへ、好きなので。ちなみに、大太刀とかもありますか?」

「店の奥に有るには有るが、嬢ちゃん随分と詳しいな?」


ギクッ!


私は慌ててごまかす。


「ほ、本で読んだんです!」


あっ!! 私のバカ! 思わず本って言っちゃった!!!

本なんてこの世界に来てから一度も見たことないのに!

シルフィーン魔道具店にだってなかったじゃん!


「ほう本ねえ。なあリオ、この嬢ちゃんどこの貴族だ? どわはは!」


ギクギクッ!


ヴォレアドは豪快に笑うが、私は内心で必死にごまかす方法を考えていた。


「さあな? 別になんだって良いだろ」


私が何か言う前にリオが「知らん」と言いたげな表情で短く答えた。


「どわははは! まあ田舎出身のリオならそんなのは気にしねえよな!

 んで、何を買いに来たんだ?」


私は身構えていたが、案外あっさりと追求は終わった。

話題が変わろうとしているところに乗っかりすかさず答える。


「剣が欲しいんです!」

「ほう。どんなのがいいんだ?」

「えーっと、おすすめってありますか?」

「あ!? んなもんこの店にあるモン全部に決まってんだろ。俺は人に勧められねえモンなんて作らねえ。嬢ちゃん面白えこと言うな」


面白いとは言っているが、店主のヴォレアドの目は笑っていなかった。

私があちゃーと思っておどおどしていると、ヴォレアドの背後から甲高い声がした。


「心配で見に来てよかったっチュ!」


チュ?

声がしたほうを見るが、ヴォレアドの背後には誰も居ない。あれ? こっちから声が聞こえた気がしたんだけど。

不思議に思っている私を尻目に、その声は続く。


「親方! ちゃんと接客しないとダメじゃないっチュか!」


その声はヴォレアドの足元から上の方へと移動しているような気がした。


〈マスター、肩の上です〉


アイカに念話で言われてヴォレアドの肩を見てみると、手のひらサイズのハムスターがヴォレアドの厳つい肩を「よいしょよいしょ」とよじ登っているところだった。


「え、ハムスター!? かわいい……!」

「む、オイラはハムスターじゃないっチュ! 獣人っチュ。鼠人族っチュ! 動物扱いはやめるっチュよ。ここで仕上げの仕事をしてるチュメールっチュ!」

「あ、ごめんなさい」


チューチュー言う鼠に思わず謝る私。

でも見た目はジャンガリアンハムスターが服を着て二足歩行しているだけにしか見えないんだから許して欲しい。

そんなチュメールと名乗る鼠人族は、二十四代に渡って家族でこの店で働いているらしい。店の奥では今でも何匹、もとい何人もの家族が作業しているんだとか。ちっちゃなハムスターちゃんたちが、協力して短剣を運んでいる姿を想像する私。うん、とってもかわいいね! 後で見せてもらいたいかも!

力はないが手先が器用なので、細かな仕上げ作業を担当しているらしい。どうりでこんなに細かい細工もできる訳だね。


「分かれば良いんでチュ。

 それで、お客さん、どんな物をお探しで? 短剣、弓、仕込み武器もあるっチュよ!」


チュメールはヴォレアドの肩の上で胸を張っている。


「えっと、これと同じくらいの長さの剣を探してるんだけど」


私は腰にさげている焔竜剣エンリュウケンを指してそう言った。


「ふむふむ、ショートソードっチュね。ちょっと手を出してもらって良いっチュか?」

「えーっと、こう?」


私は右手の手のひらを上に向けて胸の前に差し出した。


「そのままにしててくださいっチュ」


ピョンッ!


チュメールがヴォレアドの肩から私の手のひらに向かってジャンプした。


「わっ! いきなり何するの!」


びっくりした。すごい跳躍力。


「ああ、すまないっチュ。リオの兄貴のときはいつもこうするもんで」


そう言いながら、チュメールは私の指を一本一本触っている。

鼠人族の柔らかい毛が手のひらにこすれる。


やばい……モフりたい……。

と思ったときには既に手は動いていた。


ちょっとだけなら良いよね。


モフモフモフ。


「わっ! 何するっチュか! やめるっチュよ! あ、でもそこ…ああ、そこ! そこ良いっチュ……!」


サワサワサワサワ。


時間にして10分間。


途中からアイカも参戦して、たっぷりと堪能させてもらった。

次回、『新たな武器』。


**************************


読んでくださってありがとうございます!


武器屋にきました!

職人気質なヴォレアドと、可愛くて接客上手なチュメールのコンビ!

良いですよね! 気に入ってもらえたなら幸いです!

ヴォレアドが若い頃の物語もあるんですが、それはまた別のお話!


見てみたい!

そんな方はぜひぜひ小説評価☆☆☆☆☆や感想で聞かせてください!

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