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最強装備の最弱魔王

「仕方ないよね…… 

 ……女神様、お借りしますっ!」


 私は小声でそう呟いて、女神様からアイカがぶんどってしまった装備を使わせてもらうことにした。


 でも、女神様の装備と言っても一体どんなのだろう?

 やっぱり光ってる剣とか盾かなぁ。

 ドラゴンズリングでも、派手なエフェクトの伝説武器があったのを思い出し、刀剣好きとしては少しだけ期待してしまう。

 まぁ、見てみれば分かるよね。


「アイカ、女神様から()()()している装備を出して。使ってみる」

〈了解しました!〉


 アイカはそう言って、まるで自分の作ったアイテムであるかのような自慢気な表情で女神様からぶんどってしまった装備を取り出した。

 アイテムボックスからアイカが出したのは、小さな宝石箱だ。


〈これです!〉


 アイカがそう言って蓋を開けるが、箱の中に入っていたのはイヤリング、アンクレットとブレスレットが2つずつで計6個だけだった。


「え? これだけ?」


 女神様からぶんどったのが少なくてホッとしたような、拍子抜けしたような私のセリフに、アイカがガーン!という音が聞こえてきそうな勢いで落ち込む。


〈これでも良いものを選んだんですよ……!〉


 ウルウルとした瞳でそう主張するアイカ。

 今にも泣き出しそうなアイカを見て、私は慌てた。


 まずい。

 アイカが頑張って女神様から手に入れてくれたのに、今のは失言だった。


「ごめん!そういう意味じゃなくて、もっと大きいのを想像してたの!剣とか盾とか。とりあえず使ってみるね!」


 私は急いでアイカが出してくれた装備を全て装着する。

 イヤリングだけはつけるのに少し苦労したが、その他は簡単に装備できた。サイズも不思議とピッタリである。


「うわ! 身体がかるいっ!!!」


 私はそう言ってはしゃぎながらぴょんぴょん飛び跳ねた。

 まるでトランポリンでも使っているような高さを、道具無しでジャンプできる。

 身につけたアクセサリーの効果か、身体が嘘のように軽かった。


 そんな私の反応をみたアイカは、あっさりと機嫌を直し装備の説明をはじめた。


〈まず、アンクレットは脚力と俊敏さが上がります。ブレスレットは2つとも腕力の向上で、イヤリングは戦闘時の知覚強化と思考加速です! セット効果として耐久力、魔力……〉


 その後もアイカは永遠とこれらのアクセサリーの詳細な効果について説明してくれる。しかし、飛び跳ねながら聞いているせいもあって、全然頭に入ってこなかった。


 脚力向上の効果か、身体が信じられないほど軽く感じる。

 木から木へ飛び移ることも簡単にできそうだった。

 身につけるだけで、こんな超人的な肉体能力を得られるなんて、やっぱり女神様の装備って強い。


「アイカ!これすごいよ!」

〈えへへ。照れちゃいます〉


 アイカは頬を朱に染め心底うれしそうな満面の笑みを浮かべた。


「アイカ、適当に武器出して」

〈これで試してみましょう!〉


 魔剣シルフェリオン。

 翡翠色の大太刀で、追加効果は、切った対象への風属性追加ダメージである。

 その美しい刀身の波紋に思わず見惚れそうになってしまうが、私は頭を振って切り替えてから、剣を腰だめに構え大木を正面に捉えた。

 そして大きく深呼吸してから、その大木を両断すべく思い切り横薙ぎに振り抜く。


 ズッッッバァァアアアアン!!!


 私が剣を振り抜くと、辺り一帯の木が両断され切り株だらけになった。

 そう。目の前の一本だけを切るつもりが辺り一帯を切り飛ばしてしまったのだ。


「なんじゃこりゃぁああああああああ!」

〈流石ですマスター!〉


 いや、これまずいでしょ……。シルフェリオンにこんな効果なかったよね!?

 思い切り森林破壊だよ!!!

 まるで局所的に竜巻でも発生したようなひどい有様だった。

 おそらく強いであろう大型の魔獣もびっくりしてひっくり返り、泡を吹いている。


〈これでもうマスターは雑魚じゃないですね!〉

「あ、いやそうだけど。それを証明したくてこんな大規模伐採をした訳じゃないからね!?」


 私は誰にする訳でもない言い訳を呟いてから思案する。

 これって、シルフェリオンの効果っていうより女神装備の効果なんじゃないかな? 


 私は一度剣を地面に置き、女神装備であるアクセサリーを全て外す。女神装備がない状態でもう一度、剣を振り抜いてみようと思う。

 私は、地面に置いた魔剣シルフェリオンの柄に手をかける。


「あれ? 持ち上がらない……」


 置いた剣が持ち上がらなくなっちゃった。

 なんかめちゃくちゃ重いんだけど、シルフェリオンってこんなに重かったっけ。


「ふん!!! ぐぬぬ!! こんにゃろーーーっ!!」



 きっかり10分後。


「ぜえぜえぜえ……」

〈マスター、無理ですよ。もうやめましょう! 腰を痛めてしまいます!〉

「アラサーOLなめんなぁ! あがれぇえええええ!!!」


 フワッ


 剣が持ち上がった。

 もっとも柄側が膝くらいまでの高さまで上がっただけだが。


〈さすがです! マスター!〉

「やったぁーーーーーっ!!!」


 私は思わず両手でガッツポーズをしてしまった。


 そう私は──

 ──剣から手を離してしまったのだ。


〈あっ! マスター! いま手を離しては!〉

「へ?」


 ブーツを履いた私の足に、剣の柄が直撃する。


「いったぁあああああい!!!」


 激痛。

 足が潰れたかと思った。

 大袈裟かもしれないけど、死ぬほど痛かった。

 (注:足の小指をぶつけた程度の痛さです)


 剣を振るどころか持つことすら出来ないなんて……。


「剣持てないし、つま先も痛いしもうヤダ!」


 涙目の私。


 わかったよ。認めるよ。

 最後まで認めるつもりはなかったけど、背に腹は変えられない。


 ──私は雑魚でした。


 雑魚でもいいから女神様、装備を借りさせてください!

 もう絶対外しません!


「死んでも外しませんからぁーーーっ!!!」


 大声で宣言する私。

 「いや、ちゃんと返してよね?」という女神様の呟きが聞こえたような気がしたが気のせいだろう。


 こうして、雑魚であることを認めた私はチート装備を使って、この世界を生き抜くことに決めたのであった。

次回、魔法。


**************************

読んで頂きありがとうございました。

ブクマ&評価ありがとうございます!!!


本作の滑り出しから、たった3話でここまで皆様に評価いただけるとは思いませんでした。

すごく、すごく嬉しかったです!(遥香じゃないけど本当に小躍りしそうなくらい嬉しかったです笑)

この更新がお礼になっていれば幸いです!!


もしまだの方で、評価つけてもいいよーって方がいらっしゃったら

ぜひ小説評価を☆☆☆☆☆で聞かせてください!

ブクマもコメントも大歓迎です! 執筆の励みになります!

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