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新たな仲間

『第四章 首都エルドミトス 迷宮編』始まりました!

「ん……」


 目が覚めるとそこは知らない場所だった。

 ここどこ?


 確か、試験受けてギルドの受付のお兄さんと戦って……。

 外で戦っていたはずだけど、今いるのは綺麗で清潔感のある部屋だった。


「起きたか」


 部屋の端に背中を預けて立っていた少年が、短くそう言ってこちらに近づいてくる。


 彼は狼獣人だった。

 やや幼さが残るものの凛々しく整った顔立ちで、目には金色こんじきに輝く瞳。左頬につけている傷あてと、スポーツ少年のような体つきからは活発な印象を受ける。服装もとても身軽で、動きやすそうであった。

 髪は少年らしい短さだが、編んで長く延した一房の後ろ髪は彼の大人びた一面を表しているようにも感じられる。少年が歩く度に左右に揺れるうしろ髪を留める組紐は、私の首から下げているお守りに使われているものによく似ている。もしかして、この辺りに流通している物なのかな。


「えっと、誰ですか?」

「俺は、シェリオだ……ポル……」


 口下手なのか、緊張しているのか少年は何かを言いかけて「……いや、今は……」などとブツブツ言いながら逡巡している様子。

 このシェリオという少年からは、どこかぶっきらぼうな印象を受ける。


「……お前と一回だけ組んでやる」


 最終的に少年はその一言だけを口にした。


 ………………ん???


 私がどういう事なのかと首を傾げて頭の上に疑問符を浮かべていると、聞き慣れたアイカの声で解説が入る。


〈マスター、お任せください! 私が説明します!〉


 アイカが言うには私は、受付のお兄さんと一対一で戦ってあっさりと負けちゃったらしい。それはちょっと悔しいけど、女神装備も無かったし仕方ないよね。それで私がとっても弱いことが分かって、誰も私とパーティーを組んでくれる人がいなかったところに、このシェリオという少年がきて一時的にでも組んでくれる流れになったみたい。

 期間限定とは言え、この世界に来て初めての仲間ができたのがとても嬉しかった。


「えーっと、つまり私が弱かったから手伝ってくれるってことだよね? 負けてラッキーだったかも!」

「そうだが、やけに察しが良いな?」


 しまった!

 今のはアイカに念話で言ったつもりだったのに、嬉しさのあまり思わず口に出して言っちゃった。


「あ!!!

 えー、もしかして当たっちゃった? あはは。びっくりー!」


 なんて適当に言ってごまかす私。

 シェリオはこちらをじっと見て訝しんでいる。


「やっぱりお前って変わってるな」


 シェリオの結論は私が変な人ということだった。

 私ってそんなに変わってる!? これでもごく普通のOLだったんだよ! 今じゃ異世界に来ちゃったからその点はちょっとだけ普通と違うかも知れないけど。

 私が脳内で自分の一般さについて考えていると少年が思い出したように口を開いた。


「ああ、そうだ。シューレル──お前を瞬殺したやつな、あいつから伝言だ」


「人聞きの悪いこと言わないでください! 僕は殺してませんよ!」なんてツッコミがどこからか聞こえた気がしたが気のせいだろう。


 伝言の内容は、武器と冒険者証は常に身につけておくこと。


「これ、お前の冒険者証な。あいつから預かっていたんだ」


 Eランク(ストーン級)であることを示す原石のはめられた金属のプレートを手渡される。


「おお……!」


 初めて学生証を貰ったときのような感動があった。まるで若返ったような気分である。

 冒険者証には2つの穴がありチェーンが通されていて、首から下げたり、ベルトに着けられるような仕様になっていたので、私は腰のベルトに取り付けた。

 失くさないようにあとでアイカに頼んでしっかり固定してもらおう。


「あと、武器だよね……」


 私はポーチ(アイテムボックス)に手を突っ込んで、大剣を取り出そうとする。


「ああ、それから、もう一つ。

 武器は自分にあったものを選べとも言っていたな」


 ギクッ!


 私はアイテムボックスの中で握っていた大剣を慌てて手放した。

 さっきの試合で大剣が使いこなせなかったばかりだし、これはやめておこう。

 考えるふりをして、アイカに念話で相談する。


「片手剣でちょうど良いのないかな? 目立たないのが良いよね」

〈レベル上げ用に大量に作った鈍ら剣であればありますが、マスターが身につけるのに相応しくは無いでしょう。うーん、焔竜剣エンリュウケンなら身に付けているだけなら地味ですが……。鞘から抜くと目立ちますので、やはり、この世界の一般的な武器を早めに購入したほうが良いかも知れません〉

「それじゃとりあえず武器は買う方向で、それまで焔竜剣エンリュウケンにしておこう」


 アイカとの相談を終え、私は腰のポーチ(アイテムボックス)からショートソード"焔竜剣エンリュウケン"をとり出した。この剣は70cmくらいの片手剣で、鞘から抜き放つと刀身は緋色に輝いており、切った対象に炎の追加ダメージを与える効果がある。と、アイカがこっそり検証していたらしい。

 シェリオが少し驚いて「お前なんで魔法袋なんて持ってるんだ」なんて言っていたので、実家から持ってきたと適当に言っておいた。剣よりポーチの方が驚くんだね。まあ、この剣は抜かないと見た目は地味だからなあ。


 私が焔竜剣エンリュウケンを腰のベルトにつけ、具合を確かめていると、アイカが〈やはり、こういうときは現地人を雇って案内してもらうのが定番でしょうか〉などとブツブツ言っている。シェリオに武器屋までの案内をお願いするのは賛成だけど、現地人を雇うって……。テレビ番組じゃないんだからと思ってくすりと笑った。


 腰の剣のチェックを終えた私は、シェリオに向き直って尋ねる。


「えーっとシェリオさん?」

「ん、俺相手に"さん"なんて着けないでいい」

「そっか、じゃあ──リオって呼ぶね」

「ああ、皆そう呼んでいる」


 シェリオは冒険者としてはリオで通っているらしい。

 リオって呼びやすいもんね。


「リオ、武器を買いに行きたいんだけど、良い店知らない?」

「それならヴォレアド武具店がいい」


 職人街にあるヴォレアド武具店という所がおすすめらしい。


「ありがと! それじゃ武器屋にレッツゴー!」

「お前、やけにテンションが高いな?」


 そう言ったリオの顔には面倒くさいと書いてあった。


「そんなのもちろん──

 ──新しい仲間ができたからに決まってるじゃん!」


 私はリオの手を引いて、ギルドの医務室を出る。


「おい! なんで俺も行くんだ!?」

「もちろん、仲間だからだよ!」

「いや、俺はお前と組むと言っただけだぞ……。それも一回だけだ」

「でも、それまでの間は仲間でしょ?」


 リオはため息を付いて、やれやれといった様子で観念した。


「仕方ない。ついて行ってやるよ。どうせ場所も分からないだろう?」

「あはは、バレた?」


 私はそう言っていたずらっぽく笑ってみせた。


 こうして新たな仲間(仮)と共に武器屋へと向かい、ダンジョン攻略に向けて準備を進める私たちであった。

次回、『ヴォレアド武具店』。


**************************


読んでくださってありがとうございます!


新章に入りました!

これまで応援してくださってありがとうございます!

これからも頑張って執筆していきますので、

ぜひ小説評価☆☆☆☆☆や感想、ブックマークで応援をよろしくお願いいたします!

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