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冒険者

7千文字!

評価のお礼も兼ねて、がんばりました!


今回は情報量も多いですが、大丈夫。テストには出ません!

(設定集にもまとめてもいます。詳しくはあとがきにて)

「おっきい城だね!」

<ですねマスター!>


 私たちはカフェを出た後、冒険者ギルドがあるという城の前まで来ていた。


 城の名前は、ヴィッケルダイン城。

 ドイツにありそうな荘厳な作りで、数百年の歴史を感じさせる貫禄があった。


 もともとは城壁と塔も建っていたみたいだけど、今では利便性を重視して撤去され綺麗な石畳になっている。その際に、噴水と庭園も撤去する予定だったようだが、当時の王妃の希望により残されることになったらしい。なんでも王と王妃の思い出の場所だったんだとか。

 そのおかげで城の前には、今では人々の集まる賑やかな噴水の広場が広がっている。この噴水広場と城がダンジョン都市の中心である。ここから東西南北に道が伸びているため、この都市で最も人の往来が多い。


<マスター、入ってみましょう!>

「うん」


 私たちは、城の扉の前まで来た。

 グリフォンが描かれ細かな装飾が施された大きな両開きの扉は開け放たれており、中の喧騒が聞こえてきた。


(ノック……はしなくて良いよね。ちょっと緊張するなあ)


 なんとなく黙って入るのは気が引けたので、小さな声で「たのもー」と呟きながら扉の中へと入る。


 中はゲームで見たような冒険者ギルドに近い作りで、たくさんの獣人がいた。

 一部、服で隠れて分からない物もいるが、マントの不自然な膨らみと帽子についた2つの突起からすると、その下には尻尾や耳があるんだと思う。街でも見かけたが防具を着込み武器を身に付けている者が大半だ。


(やっぱり街に居たのも冒険者だったみたい)


 人々の次に建物を観察する。

 正面にはカウンター、左右には掲示板がある。

 想像していたよりもかなり綺麗で、正面にはカウンターまで続く絨毯が敷いてあり、左右には豪華な装飾が施された階段、そして見上げると天井にはシャンデリアまであった。


「まるで宮殿の大広間をそのままギルドに改装したみたい」

<マスター、まるでも何も、元々は実際に国王が住んでいた城ですよ>


 アイカに冷静にツッコミを入れられた。


 広間には、カウンターや掲示板、それにテーブルと椅子が設置されているが、どれもかなり年季が入っている。しかし古い割には、細かい所まで手入れが行き届いているように見える。


<マスター、ここにもスライムが居ます。掃除をしているのでしょうか>

「そうかも。街中にも居たよね」


 私がそうしてギルド内をキョロキョロと見ていると、じっとこちらを観察する3人がいる事に気づいた。


「アイカ、何か見られているような気がするんだけど」


 私がそう言うとアイカは即座に視線を感じた3人の会話を分析し始めた。


<どうやらあの物たち者は、マスターが人間ではないかと疑っているようです。襲いかかってくる様子はありませんが、気をつけたほうが良いかも知れません>


 私がアイカとそんなやり取りをしていると、突然後から声がした。


「おめえ扉の前でなに突っ立てんだ? 邪魔だぞ」


 私は入ってきた大男に肩を押されて蹌踉めき、


「あっ」


 そしてそのまま尻もちを付いてしまった。


「んだよ、どんくせえな」


 見上げると虎の顔をした大男は不機嫌そうに私のことを見下ろしていた。


「ん? おまえ、まさか人間族か?」


 人間族。

 彼がそう言った瞬間、賑やかだったギルドに静寂の波紋が広がり、私に視線が集まる。

 大男は苦虫を噛み潰したような表情で舌打ちをした。


(え、何この空気!? 人間ってここに居たらまずいの!?)


 ややしてから、「いま人間族と言ったか?」「こんなところに居るはずが」などとヒソヒソ話す声が聞こえ始めた。


 そして、声をあげた虎獣人の男はゆっくりと私の元まで詰め寄ってくる。

 男が歩みを進める度に、背中に背負った分厚い両手剣が立てるガチャリ、ガチャリという音がやけに大きく聞こえる。


 周囲からの視線と大男からの圧力に身が縮むような思いで、頭をフル回転させる。


(え……ええ……!? どうしたら良いのこの状況!?

 確かに今の私は、種族がバレないように角を隠してるけど、それがダメだったの!? でも、村長からは隠せって言われたし……

 どうしよう角見せちゃった方が良いかな!?)


 私がそう思ってどうしたら良いか分からなくなっていると、いつの間にか大男は手が届くくらいの距離に居た。彼はしゃがんで私と目線の高さを合わせる。そのまま、へたり込む私にググッと顔を近づけてくる。大男の威圧感たっぷりの顔が目の前にある。


 そして、じっと私の目を見つめてくる。

 瞬きしたら切られるんじゃないかと思うほどの威圧感だ。


 ゴクリと生唾を飲み込む。


「その眼は、違うな」


 彼はそう言うと、立ち上がるのを促すように手を差し出してきた。立派な毛並みの上からも、筋肉が隆起しているのが分かる逞しい腕だった。


「立てるか?」

「え?」


 私がもたもたしていると、業を煮やした大男は私の脇の下を持って子供のように持ち上げた。


「ほらよ。ちゃんと自分の足で立て」


 身体は言われるがままに動いたが、脳内の処理は追いついておらず、口はポカンと空いたままだ。


「どこも痛む所はねえか?」


(あれ、もしかして意外と良い人?)


 彼の言葉でようやく思考が追いついてきた。


「あ、はい」


 私が返事をすると彼は小さくうなずいて、大きく息を吸った。


「ああ、すまねえ。人間族じゃなかったみてえだなあ

 あまりにどんくせえから人間族かと思っちまったぜ」


 男は周囲に聞こえるように大声でそう言った。


(この人、わざと大声で……)


 彼の発言により、周囲の緊張した空気は一気に弛緩する。最初に私を疑った3人も含め全員が警戒をとき、賑やかな空気が戻ってきた。「ったく人騒がせなやつだぜ」「そりゃ人間族なんているわけねえよな。ははっ!」などと笑い声も聞こえる。


 どうやら私は、この大男に助けられたらしい。

 顔は怖かったが、じつは良い人だったみたい。


 そして、男は周囲を気にしながら私の耳元に口を近づけ小声でこういった。


「なあ、お前も混血ラクスなんだろ?」

「え?」


 私の表情を見て男は確信したようだった。


「ああ、分かってる。言わなくて良い。

 さっきは人間族なんて疑ってすまなかったな。

 俺もほら、同類なんだよ」


 そう言って男は自分の腰の辺りを指差す。

 そこには尻尾は見当たらなかった。


「なるほど……」

「お前の猫の瞳と、人間族の耳。それを見てすぐに分かったぜ。お前も苦労したんだろ」


 彼と話していると、と言うより、彼が一方的に話していると、ギルドの扉から入ってきた狐獣人の男が私たちの元へと駆け寄ってきた。


「お! グオンさん、ナンパっすか?」

「バ、バカ! ちげえよ! 大体俺が所帯持ちだっておめえも知ってんだろ!」


 大男の名はグオンと言うらしく、仲間の狐獣人に肘で突かれている。グオンはしつこくいじってくる仲間の頭をポカリと叩いて、先に行くように伝えてから再び私の方に向き直った。


「で、おめえ何しに来たんだ?」


 大男の不意の質問に、しどろもどろになりつつも私は正直に答えた。


「あ、私、ダンジョンに入るにはここで冒険者登録が必要って聞いて……」

「やっぱ新入りか。

 そんなら、正面のカウンターだ。腕っぷしは弱そうだが、せいぜいがんばれよ!」


 そう言って背中をポンと叩かれた。


 ◇


 私は虎獣人に言われた通り、正面のカウンターに向かった。

 カウンターには計6人の受付スタッフが並んでいる。左側に男性、右側に女性スタッフがいるが総じて皆見た目のスペックが高い。


(うわー! イケメン! 美人! かわいい!)


 この世界に来てから獣要素はあるものの美男美女ばかり目にしてきたと思うが、その中でも彼らは抜きん出ていた。


 男性スタッフは3人。左から順に、鎖骨と腕の筋肉が印象的なイケメン 、守ってあげたくなる年下系美男子、どこかの風早くんに耳と尻尾を着けたような爽やか系だ。

 一方女性スタッフも3人いる。社長の秘書でも努めていそうなメガネ美人、こちらも守ってあげたくなる背の低い美少女、最後に一番右がおっとり癒やし系美人だ。


 よく見ると、右の女性スタッフの前には男性冒険者が、左の男性スタッフの前には女性冒険者が並んでいた。


(たまたまかも知れないけど、もしかして異性のカウンターに並ぶのがローカルルールなのかな?)


 私は一通り人の動きを観察してから、爽やかイケメンくんの前に並んだ。

 好みのタイプだからではない。決して、少女漫画に出てくるような男子に憧れているからではない。


(ここに並んだのは空いていたからです)


 誰にするでもない言い訳を脳内で呟く。


 それなのにおかしい。

 空いていた所に並んだだけなのに、なぜか胸がドキドキしちゃう。

 これは、きっと入り口で色々あったから。

 それかここ最近ずっと仕事ばかりで、恋愛している余裕なんて無かったから、心がちょっとびっくりしてるだけ!


 私は深呼吸をしてからカウンターの前へと立つ。


「先程、入り口で何かあったようですがお怪我は有りませんか?」

「え?」

「ああ、すみません。たまたま目に入ったもので」


(私のこと心配してくれたんだ! 優しい!

 でもカウンターから入り口まで結構離れていたのに見えたのかな?)


 私の疑問が顔に出ていたのか彼が言葉を続けた。


「昔、弓を扱っていたので目は良いんです。すみません。心配いらなかったようですね。

 さて……。初めてのご利用ですね。冒険者登録がご希望でしょうか?」

「はい」

「それでは登録手続きを始めますね。お名前を伺ってもよろしいですか?」

「は、はい……!」

「あの、お名前を……」

「あ、ごめんなさい。ハ、ハルと言います!」


(落ち着け私! 緊張しすぎて声が裏返っちゃったよ!)


「ハルさんですね。ありがとうございます。それでは登録証をお作りしますのでいくつか質問させてください」


 その後、出身地やどこかのギルドに入っていないか、犯罪歴などは無いかなどいくつか質問を受けた。とりあえず門を通過する時に言ったのと同じような事を言っておいたが、先ほどとは別の意味でもドキドキした。


「質問は以上です。続いて冒険者ギルドにおける規則についての説明に移りますね。

 冒険者とは基本的には冒険者ギルドからの依頼を受ける者全般を指します」


 中でも、特にダンジョンで上層を周回し定期的に収入を得ている者のことを探索者と呼ぶらしい。一方で、未踏破の最下層を目指す者を攻略者と呼ぶが、後者については基本的に居ないらしい。なんでも、ダンジョンは下層に行くにつれて敵が強くなるらしく、攻略と意気込んで向かった者の大半が帰ってこず、今では下層に挑む者は居ないんだとか。


「あ! そういえば、最近になってまた攻略を目指すパーティーが出てきたんでした。失礼しました。つい長年の癖で……」


 彼はそう言って前言を撤回した。

 謝りつつも、すこし照れた様子ではにかんで笑った。

 その仕草に思わずクラっときてしまったが、平静を装う。


(深呼吸……これは仕事……)


 彼はコホンと1つ咳払いをしてから、一枚の金属製のプレートを取り出してカウンターの上に置いた。プレートの上部には透明な宝石がはめられており、中央にはルテア・アド・シューレルと書かれている。誰の名前だろう。

 彼はそのプレートを指しながら、冒険者について説明を始めた。


「こちらが冒険者証の見本です」


 彼の説明によるとプレートは一種の魔道具で、冒険者の所属と能力を示す認識証の役割があるようだ。

 正式には冒険者証だが、広義では各ギルドに所属していることを示す物でもあるため、ギルド証やギルドカード、冒険者カードと呼ばれることもあるらしい。


「冒険者にはEランク(ストーン級)からSSランク(ドラゴナイト級)までがありますが、この宝石の種類がそのランクによって異なります」


 冒険者証の宝石とランクの関係は

 SSランク(超級)『ドラゴナイト』

 Sランク『カーバンクル』

 Aランク『ダイヤ』

 Bランク『サファイア』

 Cランク『エメラルド』

 Dランク『ラピスラズリ』

 Eランク『原石ストーン

 ランク外『石なし(ロスト)

であり、超級からランク外まで合わせて8階級あるらしい。

 受けられる依頼の難易度も報酬も高ランクの者のほうが増加する。基本的に能力に合った難易度の依頼しか受けられない仕組みのようだ。これは、ギルドとしての依頼の達成率の確保と冒険者の生命の保護の2つの目的があるらしい。


「ランクは個人とパーティーそれぞれに付与されます。

 強さや功績に応じて、そのランクが上がっていきますが、規則を破ったり依頼の失敗が続くと降格となる場合があります。降格の結果によっては、宝石が剥奪されることもありますのでご注意ください」


 宝石が取られた状態をロスト、ランク外と呼ぶらしく、その状態では依頼を受けたくても拒否されることも多々あり、大抵はそのまま冒険者をやめることになるようだ。


 逆にSランク(カーバンクル級)にもなると英雄と呼ばれて、国の後ろ盾も得られたりするのだとか。ちなみに、英雄の中の英雄、SSランク(ドラゴナイト級)は余程の事がない限りなれず、世界でも数人しか居ないらしい。

 なんでも昔いたSSランク(ドラゴナイト級)冒険者は、たった1体でも街1つを壊滅させられる闇竜ダーク・ドラゴン33体の群れと、その頭目である闇竜将ダーク・ドラゴン・ロードをたった一人で倒したんだとか。あとは山を切って火山を止めたとか、海を割って津波を押し返したとか、人間ができる事とは思えないような話だった。


「次に依頼についてですが、あちらのボードからご自分のランクに合った依頼を受けることが出来ます」


 指された方を見ると、ちょうど二階に上がる階段の下にボードが設置されていた。ギルドのカウンターに向かって右手側がダンジョン関係の依頼、左手側がそれ以外の依頼らしい。ダンジョン都市なだけあって、右手側のダンジョン関係の依頼のほうが圧倒的に多く、古い掲示板の横に後から増設されたであろう掲示板が立っていた。


「あちらから剥がした依頼書をこちらのカウンターに持ってきていただければ依頼の受付が出来ます。受付時に依頼者や詳細条件などを説明することになっている」


 その後も彼の説明は続いた。

 正直長かったが、全く苦ではなかった。

 話しているのが爽やか風早くんだからである。


 説明内容は、ギルドの入り口近くにはギルド規則などが載せられたお知らせボードとパーティー募集掲示板があること。特に駆け出しの頃は、単独での探索は危険なので掲示板を見てパーティーを組むのをギルドとして推奨すること。

 カウンターの横、向かって右手側にはギルド直営の買取カウンターと素材置場があること。そこでは、職人ギルドに売るよりは安くなってしまうが、手っ取り早く素材をお金に変えることができて、その際にギルドへの貢献ポイントが加算されランクアップに役立つこと。

 ギルド内での飲食は可能だが、酔って暴れたりしたら場合によっては降格処分になるので注意すること。

 等々、長々と説明を受けた。


 私はその説明の間中ずっと彼の美顔を見つめていた。

 ぶっちゃけ説明内容はあまり頭に入ってこなかったけど、アイカが丸暗記してくれているはずなので、大丈夫。


 適当に相槌を打ちながら彼の顔を見つめる。


(はあ。やっぱりイケメンだわ。街を歩いたら絶対モデルとかにスカウトされると思う)


 見つめていると、自然と鼓動が早まるのを感じる。


 私は元の世界ではアイドルには全く興味がないタイプの人間だった。でもテレビの中のイケメンとは違って今は目の前にいる。

 そう思うとやっぱり良いものだと思う。


 私が胸が高鳴るのを抑えながら、どこか夢心地な気分でいると、彼の顔がキラキラと輝き始めたような気がしてきた。


(あれ、光ってる!?)


 ちょっと私やばいかも。幻覚まで見え始めてきちゃったよ。


 あれ、でも彼の美形の顔が困り顔になってきた気もする。

 ああ……この表情も良いかも……。


<マスター! 呼ばれていますよ!>


 アイカの声でハッと我に返る。

 気づいたらアイカが目の前に居たのである。


 という事は、さっきのキラキラはアイカの羽の鱗粉だったらしい。もちろん透明化しているので、受付のお兄さんには見えないはずだが。


「ハルさん! 聞こえていますか?」

「あ! はい!」

「コホン。それでは先程言った通り、これから試験を始めます」

「え!?」


 いつの間にか随分と話が進んでしまっていたらしい。


(っていうか、試験ってなに!?

 しかも今から!?)


「ごめんなさい、ちょっとぼーっとしちゃってて、試験って何をするんですか?」


 試験の内容を想像する。

 小中高から大学に行ってまでずっと苦しめられてきた学力試験。就活の時にやったSPI試験。上司からの命令で何故か勉強させられたビジネス英語の試験。

 思いつく試験はいくつもあった。


 しかし、ここは異世界。もちろん、そのどれでもない。


 ──彼が爽やかな笑顔で試験の内容を告げる。


「僕と本気で戦ってもらいます」

「ほへ?」

次回、『試験』。


**************************


読んでくださってありがとうございます!


頑張った……! かなり気合を入れて設定を考えました!

下記URLの短編・設定集の方に、冒険者について、冒険者証、ランクと宝石の事をまとめていますので、よろしければご覧ください。

https://ncode.syosetu.com/n9525gr/6/

※本編では語っていない裏設定もちょこっとだけ載せています。


分かりやすさと新鮮さのバランスでめちゃくちゃ悩みました(笑)



もし気に入って頂けたら、ぜひ小説評価☆☆☆☆☆や感想をお聞かせください!

ブクマもお待ちしております!!!

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