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観光と地図作り

今回はボリューム多めの5千文字です!

楽しんで頂けたら幸いです!

 私は透明になったアイカを連れて街を見て回ることにした。

 宿を出る前に、カウンターの女性に夕飯の時間を聞いてみる。


「ちょっとこれから出かけたいんですが、夕飯の時間っていつですか?」

「食堂が開いている時に来てくれりゃー大丈夫だよ。

 ああ、食堂は夕の鐘がなってから開店だからね」


 曰く、食堂は夕の鐘の少し後から閉門の鐘の後まで営業しているようだが、それは大体の目安で分単位で細かく決まっているわけではないらしい。


(それなら2人でゆっくり観光できそう)


 宿を出ると、目の前の通りには、宿屋以外には飲食店や食材を売っているお店が軒を連ねており、肉や野菜それから見たこともないような不思議な食材の数々が並べられていた。それらの店の前には露天商もたくさんあった。


 アイカは今まで我慢していた分、道行く人や様々な物への好奇心に突き動かされ非常に活発に散策をしていた。


〈マスターこの人、尻尾が2本あります!〉


 道行く獣人の周りを飛び回ったり、


〈ヒャッホー! もっと飛ばしてください!〉


 猫の背にライドオンしたりと、透明になったアイカは大はしゃぎだった。


(大丈夫かなあ)


 私はアイカのはしゃぐ様子を微笑ましく思ってはいたが、その反面、ふとした拍子に透明化がバレたりしないか心配していた。


(まあ、はしゃぐ気持ちも分かるんだけどね)


 そうして様子を眺めていると、アイカはある露天商の前で止まり、じっと商人の顔を見ていた。その店では様々なモチーフをかたどったガラス細工のような品物が陳列されている。


 そして、アイカが見つめる先には虎獣人の大男がいる。

 薄手のシャツ一枚なので、ガッチリとした体格であることがひと目で分かった。顔には顎の辺りにやけどの跡があり、無表情で目つきも鋭い。はっきり言ってかなり怖い。


(格闘家かボディビルダーって感じで、ポーズとか決めてもらったら似合いそう。

 怖いから言わないけど)


〈この火傷はこの世界の魔法では治せないのでしょうか?〉


 私がそんな事を考えていると、急にアイカがその強面の店員の眼前に飛び出した。

 そして、鼻息がかかりそうなほど近くで彼の顔を観察している。


(やばっ! バレちゃう!)


 私は慌ててアイカを静止した。


「わっ! 待って!」


 思わず声に出してしまった。

 それに先に反応したのはアイカではなく、店員の方だった。


「あ!? 何だ?」


 ドスの利いた声。

 アイカはその声を聞いてから、口元に手を当ててゆっくりと後ずさり始めた。幸いアイカは気づかれていないようだが、その代わりに彼の鋭い目線は私に向けられていた。


(目つきがすごく怖いよ!)


 私は慌てふためく心を必死に落ち着かせ、高速で頭を回転させる。


「わわ、わー、まままってこれ、すっごく綺麗ですねー。ははは」


 咄嗟に、噛みながら棒読みのセリフを口にして、なんとかごまかそうと試みる。


「おう、そうか! 1つ買っていくか?」


 強面の店員はそう言って、にへらと笑った。

 笑う顔をみて恐怖がすーっと引いていく。


「ええっと、じゃあこれにします」


 私は蝶をモチーフにしたガラス細工を指差した。


「おう。嬢ちゃんも見る目あるじゃねえか! これは昨日作ったばかりの新作だ!」


 受け取ってから分かったのだが、ガラス細工ではなく飴細工だったようだ。顎のやけどももしかしたら、その作業中に出来たものなのかもしれない。


「ありがとうございました」

「また来いよ!」


(ふう。なんとかなった)


 顔は怖かったけど、悪い人ではなさそうで良かった。

 それはそうと……。


「アイカ、ちょっと来なさい」

〈わっ!〉


 私はアイカをサッと捕まえて人気のない路地裏に連れ込んだ。


「アイカ、本当に心臓に悪いからやめて。ね?」


 はしゃぐのは良いが相手との距離が近すぎて、見ているこっちがヒヤヒヤしてしまう事を伝え、もう少し自重してもらうようにお願いした。


〈大丈夫ですよ。ステルスモードなんですから〉

「そう言われても私には分からないんだよ。

 私の目には普段通りに見えてるからね」

〈あー! なるほど、それは盲点でした!

 では私の身体が半透明に見えるように設定しておきますね!〉


(本当はうかつに行動するのをやめて欲しかったんだけどなあ)


〈マスター、これで良いですよね!

 それよりさっきの飴細工、私も1つ欲しいです! ぐるぐる模様のが良いです!〉


 なんだかアイカの楽しそうな顔を見ていたらどうでも良くなってきちゃった。


(私も楽しもう!)


「すいません」

「何だ嬢ちゃん、勘定あってなかったか?」

「いえ、やっぱり追加でこれが欲しくて」


 アイカご所望の渦巻き模様の飴を注文する。


「まさかこんな早くにまた買いに来てもらえるとは思わなかったな」

「あはは、これがすごく気になっちゃって」


 ちなみにこの後、ポーズを取ってもらえるか聞いてみたら、意外なことに快くやってくれた。

 見た目は怖かったが、すごく良い人だった。


 ◇


 今は串焼き屋の前で、アイカが美味しそうにお肉を頬張っている。


〈はうあーおいひいへうー!〉

「食べすぎると夕飯がはいらなくなるよ?」


 アイカがほっぺたをハムスターのように膨らませていてちょっとかわいい。


 私はアイカにせがまれるがままに食べ物を買い、腰のポーチ経由でアイテムボックスに放り込んでいた。そして、放り込まれたアイテムを今度はアイカが、アイテムボックスから取り出しつつ透明化の魔法を施して食べる。


 ちなみに宿に向かう途中に見かけた魔法袋専門店で、ポーチサイズの魔法袋も売っていたので、腰のポーチを魔法袋という設定にしたのである。背負い袋は歩くのにも買い物をするにもじゃまだし。


〈ほえふあいはぁへんへんはいひょうふへふ!〉

「うん。何言ってるか分からないから飲み込んでから話してね」


 私もアイカに渡したのと同じ串焼きを露天商の店員から受け取って、その場で口にする。


「はいよ! キングバッファローのとびきり旨いモモ肉だ!」

「熱っ!」


 直火でジューシーに焼き上げられた肉は、焼立ててあることを主張するように湯気が立ち上っている。

 噛み切ると、肉の旨味をたっぷりと含む熱々の肉汁がじゅわりと溢れてきて、思わず火傷しそうになった。

 塩と香辛料が効いていてしっかりとした味わいで、肉の臭みも殆ど感じられない。


「ハハッ! 熱いに決まってるさ! 焼きたてだからな! どうだ旨えだろ?」


 露天商のおじちゃんが快活に笑う。


「旅人さん! 良かったら、つめた~いパロンジュースはいかがですか? さっぱりしていて串焼きにも合いますよ!」


 串焼き屋の隣にはジュース屋があり、売り子さんがベストなタイミングで声をかけてきた。

 これは買うしか無いよね。


「それ2つください!」

「はいよ! パロンジュース2つね!」


 パロンジュース。

 グレープフルーツくらいの大きさの固くて緑色の果実にストローを突っ込んだ物だ。例えるならココナッツジュースのような飲み方である。店の奥で冷やされているものがちらっと見えたが全てにストローが2本ささっていた。そういうものなのだろう。


(アイカもこっちのストローから飲めるから、2つ買う必要はなかったかな)


 私はお金を渡して、パロンジュースを受け取った。

 うち1つを腰のポーチに突っ込む。入らないかと思って少々焦ったが、ポーチは脇のボタンを外すと口の部分が広がるように出来ていたので、ぐいっと入り口を広げてなんとかねじ込んだ。

 ちなみにストローは竹のような中空の植物で作られていて、綺麗に磨かれた表面には「よい旅を」「素敵な出会いを」などと書かれていた。


(店の人が書いたのかな? 芸が細かい……!)


 私は街を歩きながら素直に関心しつつも、透明化しているアイカと一緒にジュースを飲んでみる。


「ん! このジュース美味しい!」


 メロンソーダを少しさっぱりと仕上げたような味で、微炭酸も感じられた。


〈ほんとに美味しいですね! この自爆豆とも合います!〉


 アイカはそう言って、ジュースを飲みながら少し前に買ったポップコーンのような豆を食べている。肉はもう食べ終わったようだ。


 自爆豆。

 その見た目は弾けた後のポップコーンにそっくりだった。それ自体にはほとんど味がなく、塩や香辛料をまぶして食べるのが主流のようだ。

 売っていた露天商の店員に聞いてみると、魔力を通すと破裂する豆だから自爆豆なんていう物騒な名前がついたと言っていた。ちなみに一部の地方では、お祭りに使われたりもするんだとか。


(収穫しようとすると破裂する危ないトウモロコシを想像しちゃってたけど違ったみたい)


 ◇


 アイカと買い食いをしながら街を歩いていると、城の近くに来た辺りで夕の鐘がなった。


「そろそろ夕飯だね」

〈楽しみです!〉

「あれだけ食べたのにすごいね……」


 私はアイカの小さな身体のどこに入っているのか観察しながらそう呟いた。

 大食い選手権とかがあれば絶対優勝できると思う。


〈せっかくここまで着たので、街の地図を作っておきませんか?〉

「うん、そうだね。でも歩いてきたところは書けるけど、他のところはどうしよう」


 私は顎に手を当てて思案する。


(明日にすると、それはそれで面倒だしできれば今日中にざっと地図を書いてしまって、明日どこを回るか……じゃなかった。ダンジョンに向かう準備とか諸々に備えておきたいよね)


 思案を終えてアイカに提案する。


「アイカ、どうせ誰からも見られてないんだし、城の上空から街を見てこられない?」

〈もちろんできます! ちょっと運動しないとですし!〉


 ピョイーン!


 アイカはそんな音が聞こえてきそうな勢いで、素早く上空へとのぼって行った。


「もう見えなくなっちゃった」


 私は残りのお金を数えて待つことにする。

 腰のポーチに入っているお金は残り1372ベル。

 銀貨13枚と大銅貨7枚それと小銅貨2枚だ。


(めっちゃ使っちゃったなあ)


 アイカが食べた食材の数々を思い出す。肉、野菜、果物と色んなものを食べていた。


(この調子で使っていたら明後日には無くなっちゃう! お金を稼がなきゃ!

 またアイテムを売ろうかな。いやダメだ、いつまでもは続かない。働かないとっ!)


 私がそうして金の亡者になりそうになっていると、アイカがゆっくりと降りてきた。


〈マスター、書くものはありますか?〉


 私はアイカにそう言われて、先ほど宿屋で書くのを放棄したスクロール用の羊皮紙を取り出した。


〈ちょっと借りますね〉

「うん」


 私はアイカにペンとインクも渡す。

 もちろん羊皮紙もペンもアイカの魔法により他人には見えない。

 アイカは私から受け取った羊皮紙を空中に浮かべ、ものすごい速さでペンを動かし始めた。


「はやっ!」


 広げた羊皮紙の上をアイカが念動で操るペンが行き来する。

 その動きは描くというよりも、インクジェットプリンターの印刷に近かった。紙を塗りつぶすようにペンが高速で左右に動き、その位置が徐々に下へとずれていく。

 塗りつぶされた部分には濃淡があり、まるで写真に取ったように鮮明にこの街の様子が描かれていた。


〈出来ました!〉


 アイカはそう言うと、完成した地図を見せてくれた。

 地図にはこの城を中心としたダンジョン都市が描かれている。


〈簡単に説明をしますね〉


 アイカはそう言うと、城から放射状に伸びる太い道を指しながら説明を始めた。

 ダンジョン都市の中央の城を中心に東西南北に伸びる4本の道は、都市の内側の城壁を抜け更にその外まで伸びている。この道に沿って様々な店が軒を連ねているようだ。

 城から北が食材と宿屋や酒場、東がシルフィーン魔道具店など魔道具や魔石などの消耗品を扱っているお店、南が武具や服などの職人街、西が貴族や大商人向けの高級店と、それぞれのエリアごとに特色が異なるらしい。


〈方角的には、さっき歩いてきた道が北ですね〉


 アイカが食べ歩きをしながら、周囲の人の会話を分析して得た情報によると、この内側の城壁はゲンヴォール城壁、私たちが昼前に審問を受けた外側の城壁はヴォレンティウス城壁と呼ぶらしい。

 この内側の城壁までは比較的古くからある老舗が立ち並び、その外側は新しい店が多いようだ。


(古いほうの壁が内側のゲンヴォール。壁っぽい名前だね。

 タダで作ってあげたっぽいのが外側のヴォレンティウスかあ)


 すぐに忘れてしまいそうだから、関連付けで覚えておく。


 私たちはアイカの説明を聞きながら、今夜の宿へ向けて歩みを進めていた。


 その途中で良い雰囲気のカフェを見つける。


「あそこ行ってみたい!」

〈マスター、そろそろ夕食ですし、明日にしてはいかがでしょう?〉


 先程まで散々食べていたアイカに、今度は私が窘められた。

 確かにこれからカフェにも寄ったら、宿に戻るのが遅くなっちゃいそうだし、今日のところは止めておく。


「でも、モーニングとか良いかも!」

〈モーニング! 朝ごはんですね!」


 夕飯を食べる前から翌日の朝食の事を考える私たちであった。


 そんなこんなで月夜のペガサス亭に到着。

 店内からは昼間の様子が嘘のように賑やかな声が聞こえてきた。


「夕飯、美味しいらしいから楽しみだね!」

〈はい! とってもいい匂いがします! 早く行きましょう!〉

次回、『夕食』。


**************************


読んでくださってありがとうございます!

そして、いつも応援ありがとうございます!!!

今回は、ブクマ&評価PTのお礼も兼ねてボリューム多めの5千文字でお届けしました!


遥香たちは観光をメインで楽しみながら街を見て回り、ササッと地図を作りました!

楽しみつつも、忘れずに地図を作って偉い!


もし、『次回はどんな料理が出てくるんだろう』『アイカのお腹は四次元なのかな』と

思っていただけていたら、ぜひ小説評価☆☆☆☆☆や感想で聞かせてください!

もちろんこれからもブクマ大歓迎です! 執筆の励みになります!

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