表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/72

月夜のペガサス亭

「さて、どこから見て回ろっか?」


 私は耳飾りに手を添えてアイカと思念通話をする。


〈マスターできれば早めにこの形態以外のカモフラージュ方法を検討したいのですが……〉


 アイカがやや遠慮がちにそう言ってきた。


(あー。要するに触りたいし食べたいってことね)


 先程のシルフィーン魔道具店で、アイカが猫に触れたそうにしていたのを思い出す。


「オッケー! それじゃ先に宿に行って考えよう」

〈ハイです!〉


 アイカは嬉しそうに返事をした後、「やっぱりマスターは優しいです」と小声でつぶやいた。


「ん? 何か言った?」

〈わわわっ! なんでも無いです!〉


 ◇


 月夜のペガサス亭。

 シルフィーン魔道具店のスーニアから教わった宿である。

 石造りの建物に、月とペガサスをモチーフにした袖看板が設置されている。

 一通り外観を堪能してから中に入る。


 中世ヨーロッパ風の大衆食堂。

 そう表現するのが一番しっくりくる。

 クラシカルな雰囲気で、調度品は落ち着いた風合いの物が多い。


(お洒落!)


 シックなデザインの革張りの椅子とよく磨かれた木のテーブルが並んでいるが、座っている客が見当たらない。


(食事を出していない時間帯なのかも)


 正面はカウンターとお酒が並べられており、その奥には厨房が見える。右手には2階へ上がる階段と、地下へ降りる階段がある。地下は食料庫だろうか。

 左手には一際目を引く、月とペガサスが描かれた絵が飾られていた。


(お店の名前と同じだ)


 月と星々の光に照らされ優雅に羽ばたくペガサスと、それらを鏡のように写す透き通った湖が幻想的に描かれている。

 引き込まれそうになるような魅力を感じる絵だった。


「素敵……」


 私はすっかり絵に見惚れてしまっていた。


「おや、いらっしゃい!」


 急に声をかけられたので少し驚いた。

 声がしたカウンターの方を振り向くと、厨房で仕込みをしていた女性がカウンターへと出て来る所だった。

 その女性は恰幅がよく、牛のような角と耳を持っている。ゆとりのある服を着ているが、胸部の膨らみがとても大きい事が見て取れた。


(私以外で角が生えている人を見たの初めてかも。っていうか流石に大きい)


 頭部の角のことで自分をごまかそうとしたが、やはり胸元に目が行く。そんな立派なのと比べたら確かに私なんて、まな板みたいなもんだろう。ポルクス村の人の言うことにも納得だ。


「泊まりかい?」

「あ、はい」

「泊まりだけなら銀貨1枚で、プラス大銅貨5枚で夕食と朝食が付くけど、何泊するんだい?」


 口調は丁寧では無いが、威圧感などは全くない。

 むしろ、老舗の飲食店に居るおばちゃんのような雰囲気の女性だった。


「えーっと、3泊で食事は今日の分だけで」


 先程アイテムを売ったおかげでお金が無い訳では無いけど、この先どれくらい掛かるかも分からないので、やや控えめに3泊と伝えた。


「おや、短いねえ」


 女性は残念そうにそう呟く。

 彼女が言うには、この宿に泊まる客はもっと長く止まることが多いらしい。


「それじゃあ、泊まってもし居心地が良かったら延長しておくれよ」


 彼女はそう言いながら宿帳をパラパラとめくり始めた。


「おや、ちょうど最後の一部屋だったんだね!」


(先に宿に来ることにしておいてよかった!)


 意外とギリギリだったことにヒヤッとしつつも、1部屋だけ残っていた事に安堵する。


(やっぱり、この宿って人気なんだ!)


 そう思うと、今夜の食事もこれから案内されるであろう部屋にも期待が募る。


 ◇


 私は2階の部屋へと案内された。

 特別に広い部屋という訳ではないが、スーニアの言っていた通り部屋はとても綺麗に掃除されていた。


 ベッドが2つあり、その間には引き出し付きの小さなテーブルがある。その上の壁には魔法のランタンが付けられていた。

 ベッドの向かい側には年季の入った木製の長机と椅子、鏡が設置されている。そして、窓辺には1輪の花がいけられていた。


(これでスクロール一本分か)


 私は、手持ちのスクロールの本数を思い出しながら、椅子に荷物を置きベッドに腰掛ける。

 ベッドに使用されているマットレスはやはりふかふかだった。

 私は、ポルクス村で聞いた話を思い返す。


(このベッドもウールウッドからできているのかな?)


 見たことは無いがもこもこの綿飴のような木を想像する。


 最後に入り口の扉を開けて外に誰もいないことを確認してから、扉の内側から鍵を締めた。

 念の為、窓の外にも誰もいないことも確認しておく。


(よし、誰にも見られてなさそう)


 私は耳飾りに手を添えて一言。


「アイカ、戻って大丈夫だよ!」


 私の言葉で、アイカが耳飾りから元の妖精の姿へと変身する。


<ふー! 疲れましたー!〉


 アイカはそう言いながら、伸びをしたり肩をぐるぐる回したりしている。


(なんか大人の真似をしている子供みたいで、ちょっとかわいい)


 その微笑ましい姿に思わず笑みが溢れる。

 私は少しの間アイカの事を待ってから声をかけた。


「アイカ、そろそろ話し合いを始めるよ」

〈了解です!〉


 こうして一旦宿屋にチェックインしてから、アイカの隠れ方についての話し合いを始めるのであった。

次回、『ステルスモード』。


**************************


読んでくださってありがとうございます!


月夜のペガサス亭!

ここでの夕食は3話ほど後になると思います! もう少しだけお待ち下さい!


もし、『素敵なお店!』『アイカはどうやって隠れるんだろう』と

思っていただけていたら、ぜひ小説評価☆☆☆☆☆や感想で聞かせてください!

もちろんブクマも大歓迎です! 更新を待ってくださっている方が居ると思えて、執筆の励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ