首都エルドミトス
新章突入です!
翌朝、私たちは丘の上から首都を一望していた。
〈うわーーーっ! 大きい街ですねマスター!〉
「夜に見たときより大きく見えるね」
「あれが獣人王国ユグニスガルドの首都エルドミトスだ」
獣人王国ユグニスガルド。その中央に位置する首都エルドミトス。
それは巨大な城塞都市だった。
〈夜も思いましたが、やはり城が2つあるのですね〉
都市にはモレスの丘から見て手前と奥に2つの城があった。
「なんか、城壁が不思議な形だね。両方の城が囲まれてるのに、その外側にもあって2重になってる」
2つの城を中央に据えて、それぞれが独立した都市であるかのように城壁で囲まれているが、更にその外側にはもう1つの城壁があった。
首都は、王都アヴァンプルとダンジョン都市ルテアという2つの城塞都市、そして、その周りに住む人々によって構成されている。外側の城壁は、それら全てを大きく囲むように建造されており、中世の城塞都市を2つならべて、それを大きく囲んだような構造だった。
それら全体を首都と呼ぶらしい。
例えるなら目玉焼きを2つ並べたような形で、黄身部分がそれぞれ王都とダンジョン都市、目玉焼き全体が首都にあたる。
〈なぜ、このような構造になったんでしょう?〉
「昔は手前に見える旧城だけだったらしいぞ」
ポルック曰く、その昔、この都市にある迷宮という資源を守るように旧王城が建てられ、城壁が築かれたらしい。しかし、都市の発展と人口増加に伴い、王族と貴族は少し離れたところに新しくより豪壮な王城と城壁を建設し、そこに住むようになったようだ。
新しくできた城の周りを王都と呼び、旧王城を中心とした都市はダンジョン都市と呼ばれるようになった。
やがて、2つの城塞都市の周りに人々が集まり住み着いていき、数百年前にある大魔道士によって一番外側の城壁が築かれたのだと言う。
「城壁って、何を警戒しているんだろう?」
「ああ、昔は他国からの攻撃を防ぐためだったようだが、今じゃもっぱら魔物を防ぐためだな。ここいら辺にはポルクス村みてえに聖獣様はいねえからよ。聖獣様さえいればこんな城壁なんか作らなかっただろうな」
「へえー」
気の抜けた返事で平静を装うが、私の頭の中は大混乱であった。
(え……!? 聖獣様が居るだけで魔物除けになる? っていうかこれだけの規模の都市も守れるってこと!?)
考えを整理したくて、こっそりアイカに小声で相談する。
「ねえアイカやばいよ! 聖獣様ってそんなにすごかったの!? あの巨大な城壁がなくて済むなんて……!!」
ましゅ丸が聖獣と聞いただけで驚きだったのに、聖獣が非常に重要な役割を果たしていた事を知って驚愕する。
「どうしよう勝手に名前とかつけちゃったよ! 大丈夫かなアイカ!?」
私の脳内はてんやわんやの大騒ぎであったが、アイカは至って冷静だった。
〈今更ですマスター……〉
「どうしたんだ嬢ちゃん?」
「あはは! な、なんでも無いです! ただ、ポルクス村ってすごいんだねって! ねえアイカ!」
両手を振って全力でごまかす。
そして話を変えるべく全力で叫んだ。
「さあ、首都に向かおう!!!」
◇
それから私たちは再び巨大蟹の背に乗り、首都の城門前へと向かった。
「それじゃ、おれはここまでだ」
「え? 中には入らないの?」
「ああ、ちょっとな」
ポルックはそう言って天を仰ぎ、遠い目をする。
(昔なにかあったのかな? 嫌なことを思い出させるのも悪いし聞かないでおこう)
詳しい事情を聞くのは止めておいた。
「まあそういう訳で、おれが案内できるのはここまでだが、最後に一つアドバイスだ。
首都では、目立つことは避けた方が良い」
「え? どうして?」
「首都には色んなやつが居る。良くも悪くもな」
ポルック曰く、首都には犯罪組織のような集団も居て、特に希少な妖精族は狙われるリスクも高いようだ。
「特に妖精の嬢ちゃんはあまり人前に出ない方が良いだろうな」
その話を聞いた私は少しだけ思案する。
(薄々考えてはいたけど、ここは異世界なんだ。誰かが自分を守ってくれる訳でもない。自分たちの身は自分たちで守るのがこの世界の常識なんだ)
私は「よし」と心のなかでつぶやいて気を引き締める。
(まあ、観光も楽しむけどね! いざって時はアイカも居るし!)
方針が決まったところで、ポルックに礼を言う。
「アドバイスありがとう」
「いやいや、礼なんていらねえよ」
ポルックは照れくさそうに、はにかんで笑った。
ポルックのアドバイスを受けて、アイカがちゃんと隠れられるか試してみることにした。
「それじゃアイカ、隠れてみて。ポルックさんはアイカが隠れられてるか見ていてね」
「ああ」
〈マスター、失礼します〉
そう言ったアイカがニヤッといたずらっぽく笑った後、私の服の中へと入り込んできた。
「ア、アイカ! ちょ、どこに隠れようとしてるの!?」
くすぐったくて身体をよじる。
そして、慌てて服の中からアイカを追い出し、つまみ上げる。
「アイカァアアアア!?」
〈ひゃっ! ごめんなさい! マスター!
ちょっと魔がさして……〉
そんな私たちのやり取りを、ポルックは呆れ顔で眺めていた。
◇
結局、腰につけたポーチか、ボリューミーな髪の中がアイカの定位置となった。他にもイヤーカフスへの変身もできちゃうみたい。これは妖精の羽根風のデザインの耳飾りで、すごく可愛いから個人的には一番気に入っている。アイカとの内緒話もしやすいし。
「さあいこう!」
「ポルックさん、ここまで連れてきてくれてありがとう!」
〈首都の事とかお金のこととか他にも色々教えてくれて、ありがとうでしたー!〉
「おう! 元気でな!」
こうして私たちは行商人ポルックと別れ、首都エルドミトスへと向かったのであった。
次回、『城門』。
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読んでくださってありがとうございます!
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執筆の励みになります!
ついに新章『エルドミトス』に突入しました! パチパチパチ!
大好きな中世風ファンタジーの世界を書けて、とても楽しいです!!!
もし、『町並みをもっと見てみたい!』『もっとファンタジー要素濃いめで!』と
思っていただけていたら、ぜひ感想や小説評価☆☆☆☆☆で聞かせてください!
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頑張って書いていくので、引き続き読んでいただけると嬉しいです!




