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旅 その2 ~洞窟~

「さて、このまま洞窟を進むぞ」


 ポルックの号令で巨大蟹は洞窟の奥へと進み始めた。

 その動きは、洞窟内の地形が入り組んでいるせいか、とてもゆっくりとしたものだったので、会話を楽しむこともできそうだ。


 私は先程から気になっていたドラゴンのことを、ポルックに聞いてみることにした。


「さっき、ドラゴンは人をめったに襲わないって言ってたけど、人と鳥人族って違うの?」

「ああ? 嬢ちゃん何言ってんだ? 鳥人族も俺ら獣人族と同じ人だろうが。

 なあ嬢ちゃん、どっから来たんだ?」


(げ! まずい、完全に怪しい目で見られちゃってるよ!)


「す、すごく遠い所で……えーっと……」


 私が言葉に詰まっているとアイカが助け舟を出してくれた。


〈マスターはある島国の出身で辛い記憶があるので、私が代わりに話しますね。

 マスターはその島国で家畜のように働かされて……と色々あって、私とマスターはともに旅に出ることにしたのです。マスターが居なければ、今の私は無いのです〉


 アイカが準備していたようにスラスラと身の上話をする。


(ずいぶん脚色されているけど、嘘は言っていない上に、さり気なく私が無知なのも違和感が無いようにフォローしているのが怖いよ)


 アイカの話を聞いたポルックは徐々にバツの悪そうな表情になっていた。


「すまねえな。そんな事があったとは。別に詮索するつもりは無かったんだが……。商人の悪い癖で変な聞き方しちまった。

 そうか……吟遊詩人の歌なんかより、よっぽど泣ける話じゃねえか……まさか奴隷だったとは……」


 後半は目の端に涙を浮かべながら、尻すぼみにゴニョゴニョ言っていたのでうまく聞き取れなかったが、これ以上は詮索されることはなさそうで一安心である。


〈そういう事なので、色々教えて頂けると助かります〉


「ああ! 何でも教えてやろうじゃねえか! もちろん、懐の中身と、そこの小麦粉の純度は教えるわけにはいかねえけどな! がっはっは!」


 ポルックはそう言って豪快に笑ってみせた。


 ◇


「この洞窟には危険な魔物はいないの?」

「んー、アシッドアントとかポイズンスパイダーとか、色々いるな。でもこっちには相棒が居るからな。こっちから何かしない限り向こうから襲ってくることなんてねえさ」


 この世界の自然界にいる魔物も地球の動物と同じで、むやみに強者に襲いかかったりはしないらしい。

 私達を運んでくれている巨大蟹はランドジャイアントクラブと呼ばれる魔獣で、陸上では上位に位置するため、野生の魔物が襲ってくることは殆どないそうだ。

 仮に襲ってくるとしても、まずは警告の意味を込めて威嚇されるらしい。その場合は刺激しないようにその場を離れれば大抵の場合はやり過ごせるのだとか。


「このカニさんってそんなに強かったんだね」


 全身が硬い甲羅に覆われているため生半可な攻撃は通らず、動きも非常に素早く、巨大なハサミに掴まれれば一溜りも無い。そんな攻守揃った巨大蟹相手に立ち向かってくる魔獣はそうそう居ないだろう。


 そんな話をしていると、あっという間に時は過ぎていった。



「この先に行くとな、面白い光景が見られるぞ」

「面白い光景?」

「ああ、嬢ちゃん悪いが明かりを消してくれるか?

 そこのランタンの魔石を取り出せば良いんだ」

〈マスター私がやります〉


 アイカが明かりを消すと、周囲から一切の光が消えた。


「わ! 真っ暗だよ!」

「大丈夫だ。相棒には見えてっからこのまま進むぞ。

 嬢ちゃんたちも目が慣れてきたら見えてくるだろうさ」


〈マスター……! とってもすごいです!〉


 AI妖精であるアイカの目はすぐに順応したようで、興奮した様子ではしゃいだ声を上げる。

 私の目にも、徐々にその光景が見え始める。


 私達の周囲に広がっていたのは──

 ──キラキラと輝く美しい地底湖だった。


 いつの間にか、狭い洞窟を抜けて地下に広がる巨大な空洞へと出ていたようで、目の前には地下水をたっぷりと湛えた湖が広がっていた。

 地底湖の淡い明かりとアイカの誘導を頼りに、蟹の背から降りて周囲に広がる巨大な地底湖を見渡す。


 水面付近では淡い光がホタルのように飛びまわり、ときに明滅したりしている。


「ほんとに……すごい……」

〈美しいです……〉


 その神秘的な光景に私は思わず息をのんだ。


「光って飛んでいるのは微精霊だ。絶景だろう?」


 水中には光る藻が生え、水面から顔を出している岩には光るキノコや百合の花のような植物が生えていた。

 まるで蝶が花から花へと飛びまわるように、微精霊が光る植物の間を行き来している。


(綺麗……)


 この世のものとは思えないほどの光景に、私はすっかり魅入ってしまっていた。


 耳を澄ますと、静かに水が流れる音や、天井から垂れる雫が水面に落ちる音が、鼓膜に心地よく響く。視覚だけではなく聴覚でも感じられる美しさに心が洗われるような気がした。


 思い切り空気を吸い込むと、その空気すらもとても美味しいものに感じる。


(ずっとここに居たい)


 そう思ってしまうほどに魅力的な光景だった。


 ◇


 私達は地底湖で村でもらったサンドイッチを食べたりしてしばらくの間、神秘的な光景を堪能した。それから地底湖の脇を抜けて奥へと進むと、洞窟の出口の明かりが見えてくる。


「さあ、そろそろ出口だぞ!」

次回、『旅 その3 ~異世界の夜空~』。


**************************


今年最後の投稿を読んでくださってありがとうございます!


評価&ブクマもいただき、ありがとうございました!!! 誤字報告も頂き感謝です!

執筆の励みになります!


前回に引き続き、全力で異世界感を演出しております! 

ずっと考えていた設定をお披露目できて、とっても楽しいです(笑)

もし、『地底湖の光景を見てみたい』『異世界風景の描写を増やしてほしい』とか

思っていただけていたら、ぜひ小説評価☆☆☆☆☆やコメントで聞かせてください!



来年も引き続き『AI妖精と行くゆるり異世界旅 ~私には最強サポートがいるので楽しみつつ魔王でも目指してみます~』をよろしくお願い申し上げます!

良いお年をお迎えください!!!

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