表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界でなぜこんな事に  作者: 笹薙
9/19

ねがいはいっかい

結局、朝食の後は、本当に時間がないと言うので、私の夢の話や、私自身の事なんかを話すのは場を改める、という事になり、アリシアさん達はバタバタと遠征に行く準備をして追いやられるように馬車に乗ってていった。

代わりに、夜になったら隊長達が私の話を聞きたいと言うことで、夕食を一緒に食べる約束をして、その場は一時解散となった。




新しい執事さんは、とても物腰が柔らかくて、何でも丁寧に教えてくれて、物凄く優しい。


「あの、レイモンドさん•••?」


「お嬢様、是非()()とお呼びつけください。」


レイモンドさんはとても優しい雰囲気だけど、いかんせん高身長なので、時々注意される時の上から見下される眼光が、普段とのギャップと相まってめちゃくちゃ怖くて逆らえない。


「ひっ」


「お嬢様。是非()()と。」


ニコニコした口元と、鋭い眼差し。

この人もしかして暗殺者?


「お嬢様?」


「は!はい!!れ•••レイ•••」


「お嬢様、大変結構で御座います。」


ニコニコというか、もはやニヤニヤとした笑顔でとても嬉しそう。なんで?

レイさんが1番曲者っぽいのはなんでだろう。


「レイさんは、何歳なんですか?」


「さん付けはお辞めください。」


「あ、すいません」


「仕えるものに謝罪なさってはいけません。」


「あ、はい。」


すいませんと言いそうになってグッと口を閉じる。


「あのぅ•••レイ?」


「なんでしょうか、お嬢様」


「レイは、何歳ですか?」


「48歳に成りました。」


「48歳⁉全然48歳に見えないですね!」


「ありがとうございます。」

綺麗なお辞儀をするレイさん。

細やかな所作がいちいち綺麗なので、この人は結構偉い人なのかもしれない。


「あのぅ•••。侍女さんの名前も教えてもらえますか?」


「申し遅れました。私、アンナと申します。私の事もアンナ、とお呼びつけくださいますと大変嬉しく思います。」


「アンナ•••。」


アンナさんは、レイさんみたいに威圧する事無く、頭を下げたあとニコッと笑ってくれた。

普段淡々と仕事をこなすアンナさんの、慈愛に溢れた激レアな笑顔に頬が熱くなるのを感じる。だってアンナさんもめちゃくちゃ美人さんなんだもん。

私は悪くない。変態じゃない!

というか、ここに来てから見目麗しい人ばっかりだけど、こんな綺麗な人達から神の友人とか言われたり•••お嬢様とか言われたり•••。

なんかいたたまれないなぁ。

そんな大層な人間じゃないのに•••。

ただの無職なのに•••。


「アイリーン様?」

一人で勝手に赤くなったり暗くなったりしていたら、アンナさんが手をとって顔を覗き込んできた。


「体調が優れませんか?」

いつの間にかレイさんまでもが、私の前に片膝付いて顔を覗き込んでいた。

美男美女の執事と侍女。眼福すぎるぅ。


ぽーっとしてると、レイさんが「失礼いたします。」と言ってふわっと私を抱えた。

お姫様抱っこってやつだ。


「え?れっレイさん?!」


「さん付けはお辞めください。」


そう言うと、お姫様抱っこのまま食堂からスタスタと連れ出されてしまった。


「お嬢様はお疲れのご様子なので、お部屋までお連れします。」


後ろを見るとアンナさんもついて来てくれて、ホッとする。


「お嬢様、また後で色々とお話いたしましょう。今はお身体をお休めください。」


そう言ってレイさんがベッドに下ろしてくれて退室した後、アンナさんがぱぱっとドレスをワンピースに着替えさせてくれた。


「アンナさん」


「はい、何でしょうか」


「•••寝たらまた何日も経っちゃう気がして、なんか不安です•••。」


「そうですか•••。では私が責任を持ってアイリーン様を起こしますから、ご心配なさらずにお休みくださいませ。」


「え?本当ですか!!?」


そういう魔法でもあるのかと、ベッドに横になりかけた体を思いっきり起こして叫んでしまった。恥ずかしい。


「ふふ。お近くにあのお菓子を沢山置かせていただいたら、きっとアイリーン様は、お目覚めになると思いませて•••。ふふっ」


あのお菓子ってアンナさんがくれたスコーンみたいなあれか!


「確かにあのお菓子があったら、すぐさま起きちゃいそうですね。へへへ」


「今日はお夕食を御主人様とお約束されたのですから、今は少しお休みしましょう?また時間になったら、私が必ず起こして差し上げますから、ご安心ください。」


ふわっとアンナさんが布団を掛けてくれて、頭を撫でてくれた。


「アンナさん、ありがとうございます。安心したら、眠くなって来ました•••。このことも質問してみよう•••。」


アンナさんに撫でられながら、また私は眠ってしまったのでした。

あ、煙草吸うの忘れてた。








ーーーーーーーーーーーーーー



ふぅーっ

はー食後の一服最高〜



あ、ここ夢か



キョロキョロしてると光の玉がふわふわと近づいてきた。


『ねがいはいっかい、しつもんはなんどでも』


片手をビシっと上げて質問する。

「質問!現実で何日も寝込まないようにできますか?」


『しつもんにこたえる。ねがえばできる』


願いは一回の方か!


「質問!願えば自分の好きな睡眠時間に調節出来ますか?」


『しつもんにこたえる。ねがえばできる』


ふむふむ


「質問!好きな睡眠時間に調節してもちゃんと休めるの?」


『しつもんにこたえる、ねがえばできる』


うーむ。いきなり1回しかないお願い使うのももったいない気がするけど、毎日、寝るたびに何日も経ってたら嫌すぎるから何とかしたい。


「質問!お願いで睡眠時間を自由に調節出来て、寝たら身体を完全回復させて欲しいって言うお願いは叶う?」


『しつもんにこたえる、ねがえばかなう』


これなら、ゲームみたいに短時間で疲れとれるから、まぁまぁ良いお願いなんじゃないかな?

神様の一部さんとは、寝ればいつでもお話できるんだろうし・・・。

よしきめた!これでいこう!


「お願い!睡眠時間を自由に調節出来て、寝たら身体を完全回復させてください。」


『ねがいはいっかい、すいみんじかんちょうせつしてかんぜんかいふくする?』


「はい!」


『ねがいをかなえる』


神様の一部さんからどんどん光が溢れ出してあたりが眩しくなった。思わ体を屈めて目を閉じててしまった。

体育座りをするように頭を抱えていると、自分の周りがじんわりと温かい何かで包まれたような気がした。


『ありがとう、あいちゃん。ごちそうさまでした。』


「んえ?!」

何でお礼?なにがご馳走様???

なんか神様の一部さんが神様っぽいしゃべり方になったような・・・。


「何がありがとうなの?」


『質問に答える。願いを叶えると、力を貰えるんだよ。』


なんかしゃべり方が知的になったような・・・。

まだ片言感は否めないけど・・・。


「なんでご馳走様って言ったの?」


『質問に答える。あいちゃんの願いを叶えるために、あいちゃんの力を頂いたからだよ』


私の力・・・?


「私の力って何?」


『質問に答える。あいちゃんの魔力だよ』


魔力!!神様も魔法使いなのか。

神様の力は何となく魔法とは違う気がするけど・・・。


「私の力を頂いたって言ったけど、頂かれちゃった私は大丈夫なの?」


『質問に答える。寝れば完全回復するから大丈夫だよ。』


あ、そうだった。


「私の魔力っていっぱいあるの?」


『質問に答える。いっぱいあるけど、まだいっぱい使えないんだよ』


ふむふむ


「いっぱいあるけど、いっぱい使えないとどうなる?」


『質問に答える。使えないと溢れるんだよ』


ん?なんか不穏な響き・・・。


「溢れるとどうなる?」


『質問に答える。溢れると集まるんだよ。』


んー?


「魔力があふれると何が集まるの?」


『質問に答える。魔のものだよ』


魔のもの・・・?魔物?魔族?やばくない?


「魔のものが集まるとどうなる?」


『質問に答える。増えたり減ったりするんだよ。』


増えたり減ったりする・・・?


「何が増えたり減ったりするの?」


『質問に答える。いきものだよ』


えぇー?

え・・・?やっぱやばいんじゃないか・・・?

物凄くやばい気がする多分。


「溢れないようにするにはどうすればいいですか?」


『質問に答える。知識を増やすか、私に与えるかだよ』


ふむふむ


「知識を増やすにはどうすればいいですか?」


『質問に答える。本を読み、鍛錬することだよ』


勉強あるのみってことか。


「神様の一部さんに渡すとどうなるんですか?」


『質問に答える。私に渡すと力を得るんだよ。』


力を得る・・・?


「神様の一部さんが力を得るとどうなりますか?」


『質問に答える。神様に近づくんだよ』


ほぉー?

あんまり悪いことにはならなそうだ。

普通に勉強してそれでも駄目なら神様の一部さんにあげよう。


『あいちゃんあいちゃん』


「どうしたの?」


『私に与えるのは最終手段だよ、あいちゃん。』


ん?


「そうなの?」


『あいちゃんの力はとても強いんだよ。まだ一度にいっぱい貰えないんだよ。』


あぁーなるほど。


『ごめんね、あいちゃん』


「じゃぁ私も勉強頑張ります。」


『あいちゃんの使える魔力と保持してる魔力は、今はとても差があって大変だと思うんだよ』


「なるほど・・・。」

よくわかんないけど、使える力が少なすぎて減らすのが大変ってことかな?


『今、あいちゃんのお願いを叶える為に沢山減らしたから、保持してる魔力は大幅に減ったんだよ』


おお!じゃぁグダグダ考えてないで、早めに願い事しといてよかった。


『しばらくは溢れる心配はないけど、保持魔力はどんどん戻るから、使える魔力は早めに伸ばすんだよ?』


「はーい・・・。」


魔法の勉強はやらなきゃ使えないんだろうなー、と思ってたけど、結構死に物狂いで勉強しなきゃ危ない気がする多分・・・。

うーちょっと憂鬱だな。楽しく暮らしたいのに・・・。


『あいちゃんあいちゃん』


「なんですか?」


『起きる時間はどうする?』


あーどうしよう。アンナさんが起こしてくれるって約束してくれたし、アンナさんにまかせようかな。


「アンナさんが起こしに来てくれたら起きたいです。」


『アンナさんが起こしに来たら、新しい朝だよ。あいちゃん。ゆっくり休んでね』



どこからとものなく、バターのいい香りがしたような気がして、ついついよだれが出てしまった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ