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異世界でなぜこんな事に  作者: 笹薙
8/19

皆で朝ご飯

「ま・・・前と同じってもしかしてまたぁあ?!うえぇぇ」


またしても、見慣れ始めた天蓋ベッドから勢いよく起き上がり、前回同様あっけなくまたベッド沈んだ。


「夢から起きると物凄くお腹空く。多分また心配かけただろうなぁ•••」


独り言を言っているとサッとベッドカーテンが開いて、侍女さんが現れた。


「アイリーン様おはようございます。ただ今、朝の6の刻でございます。ちなみに、3日半ほどお眠りでいらっしゃいました。お身体の具合はいかがでしょうか?」


侍女さんがサラッと聞きたいことを先回りして教えてくれた。

私の扱いにもう既に慣れていらっしゃる。ありがたい。


「体調は大丈夫です。お腹すきました。」


「アイリーン様、お目覚め早々で性急ではございますが、ご主人様方からアイリーン様とお話がしたいとの事です。ご気分が宜しければ身支度を調えた後ご主人様方と朝食をご一緒いただけますか?」


侍女さんが申し訳なさそうに頭を下げ、こちらの様子をうかがっている。

正直、寝てただけだからお腹空いてるだけだし、ご主人様方ってことはアリシアさんだけじゃなくて、隊長さんと、もしかしたら旦那さんも同席でってことかな?

それにしたって、あの最初の日以来顔を合わせないまま、お世話になりっぱなしだから、こっちとしては願ったりかなったりだ。子供の振りしたり、色々嘘ついてたことも謝りたいし、神様とのお話もしたかったし。


「ぜひご一緒したいです!」


そうとなったらさっさとお風呂入って、着替えなくっちゃ。


「ありがとうございます。でしたら先ずは身を清めて身支度を調えさせていただきます。その前にこちらをどうぞ。」


差し出された侍女さんの両手の上には、3色のスコーンのようなクッキーのような焼き菓子が、ハンカチの上に乗っていた。


「何かお召し上がりになった方が宜しいかとご用意させていただきました。」


あぁーバターのいい匂い・・・。


「はぁわ~、ありがとうございます!とっても嬉しいです!美味しそう・・・。食べてもいいですか?」


おなか空くし鳴る。よだれがやばい。


「ふふ。もちろん召し上がってください。」


一口かじると、表面はさっくりしているけど、中はふんわりとしたスコーンとパンの間の様な・・・とにかくめちゃくちゃ美味しい。一番普通っぽいのを食べたけど、この世界で一番おいしいものはこれなんじゃないかなっていう位物凄く美味しい。とにかく美味しい。美味しすぎる。


「こんなに美味しいもの初めて食べました・・・。幸せですー。」


はぁーおいしい。自分の吐いた息さえ美味しい。


「ふふ。お気に召していただけて私も嬉しいです。さぁお清め致しましょう。」


ふわふわした気分でされるがままにお風呂に入って着替えをしてもらった。


「アイリーン様、体調はお変わりございませんか?」


「はい!さっきの美味しいおやつのおかげで元気いっぱいです!」


「それはようございました。では、ご主人様方が食堂でお待ちです。急がなくてもよろしいので、まいりましょうか」


「はい!よろしくお願いします!」


正直、ドレスって着慣れないから歩き辛い。慌てると転びそうになるので終始気を張って動かなきゃいけないのが、なお辛い。貴族様ってえらいなー。



階段を上っていると、食堂の扉の前にアリシアさんが待っていてくれた。


「アイリーン!また寝込んじゃって心配してたのよ?ふふふ。顔色が良さそうで安心したわ。寝起きにこんな呼び出しをしてしまってごめんなさいね・・・。少し時間が無くて・・・。」


アリシアさんが申し訳なさそうに顔を覗き込んできたので、慌てる。


「いえいえいえいえ!そもそも寝てる私が悪いので!謝らないでください!皆さんとお話もしたかったので有難いです!ご飯一緒に食べられるのも嬉しいです!私の方は願ったりかなったりなので!本当に気にしないでください!」


「アイリーン・・・。貴女って本当に素敵な子ね・・・。それなのに・・・。ごめんなさい、話し過ぎよね、行きましょう。みんな待っているわ。」


アリシアさんは、物凄く落ち込んでるような・・・?何で?


食堂の扉を開けると、予想通り隊長と、デビットさんがすでに座っていた。


「お待たせいたしました。早速はじめましょう」


アリシアさんが召使に指示を出しながら私をアリシアさんの隣の席に座らせてくれる。


「なんか、寝てばっかりですみません。お待たせしてしまっていたみたいで、説明も何も話さないままで・・・色々と分かった事があるのでお伝えしたいです。」


隊長さんに向かって頭を下げながら今日のご飯の顔ぶれを眺める。


「まぁまぁ、急かしてしまって悪かったな、色々と状況が変わって話したいことがあるのは事実だが、まずは食事にしよう。話はそれからだ。」


隊長さんがそういうと、一斉に皆のグラスに果実水が注がれた。

お食事タイム開始だ!


やっぱり出来立てのご飯は美味しい。湯気ののぼるスープも、採れたてのサラダも、焼き立てのパンも、見慣れないフルーツも、全部美味しい。

しかも侍女さんにもらったスコーンっぽいやつもある!わざわざ用意してくれたみたいに私の近くにだけある小さな籠に入っている。

ちらっと侍女さんを見ると微笑んでいるから、きっとそうなんだろう。


食後の紅茶を飲んで一息ついていると隊長さんが話し出した。


「さて、話というのは我々の仕事の事なんだ。」


仕事の話・・・?


「君の意見も聞かずに申し訳ないが、君が前回目覚めた時に、アリシアに話してくれた事は陛下のお耳に入れさせてもらった。」


「ごふっ!あぁあ!すいません!!陛下って王様ですか・・・?」

なんで王様が急に出てくるの?

危うく鼻から紅茶出すところだった、あぶないあぶない。


「うむ。神の友人の事は一応国家機密にあたるのでな、陛下に秘匿すると反逆で裁かれる。」


え?!


「まぁ、問答無用で裁かれはしないだろうがな、まぁそういうわけで、アイリーンの事は陛下と陛下の認めた一部の人間には話した。事後報告で悪いな。その代わりに国王の庇護を頂いたので、アイリーンにも身分が与えられぞ。おかげでずいぶん動きやすくなったはずだ。もう木箱に入れる必要はない」


カラカラと笑う隊長さん。冗談言ってる場合じゃないってもう!

国王の庇護とか恐れ多すぎでしょ・・・。


「まぁそんなわけで、色々と閉じ込めてしまって不自由な暮らしをさせてしまっていたが、それもある程度は終わりだ。一応護衛は付けた方がいいとは思うが、まぁ出かけるときは召使にでも聞いてくれ。」


「はぁ・・・。わかりました。」


「本題なんだが、遠征でしばらくアリシアとデビットがここを離れる事になった。息子も連れていく話になったのでこの館に主人が不在になってしまうんだ。」


あー、じゃぁどこか宿にでも泊まらなくっちゃかな?

折角仲良くなったのに寂しいなぁ。


「そうなんですか、どれくらいかかるんですか?」


「滞在が6日移動が片道3日の12日間の予定だ。」


あれ、意外とそんな永遠のお別れな感じだじゃない。

もっと何ヶ月もかかるのかと思ってた。良かった良かった。


「じゃぁ何処か、住み込みのお仕事でも有れば斡旋とかしてもらえると、ありがたいですね。」


「は?!」


ん?


「いや、すまん。何か勘違いしていると思うから、話を最後まで聞いてくれ。」


何やら隊長さんが眉間を押さえながら溜息をついている。


「あ、はい。すいません」


「この館の主人が不在になるので、繰り上がってアイリーンがこの館の主人代行になる。」


は?!


「だがなー、女性だけだとなかなか不用心なのでなー。その•••臨時でアイリーンに執事を1人、付けたいと思ってな。うん。護衛も兼ねてな。」


何で隊長さん急に歯切れわるくなったの?護衛って言うとあのときの年下騎士様かな?名前なんだったっけ•••。


「ただ今ご紹介に預かりました。本日よりアイリーン様の執事を務めさせていただきます、•••レイモンドと申します。わたくしのことは気軽にレイとお呼びつけくださいませ。」 


隊長さんの後ろにずっと待機していた、肩より長い茶髪を細いリボンで上品にまとめた、片眼鏡のにこにこ顔の執事さんが一歩前に出て自己紹介してくれた。この人隊長さんの執事じゃなくて、私の執事さんだったのか!


「は!はい!よろしくお願いします。アイリーン•ハドリーです!」


執事さんはペコッときれいなお辞儀をして、にこにこしながら隊長の側を離れて私の側に待機した。

優しそうな人で良かった。

あのときの年下騎士様が四六時中近くにいたらと想像してちょっと怖気づいてたから、この人なら怖くないし一安心だ。

でも、あの人も護ってくれるって神様言ってたし、あの人もきっと良い人なんだろうな。今度逢えたら怖がってないでちゃんとお話しよう。


「まぁ、話と言うのは、その位だ。アイリーンがこの屋敷の主人代行で、そちらの執事がアイリーンの臨時執事だ。アリシアたちが不在の間、館の管理をして欲しい。難しいことは召使いと侍女と執事がやるはずだから、アイリーンはここで寝起きして暮らしてくれれば良い。今までとたいして変わらないが、外出などは侍女か執事に聞いてくれ。本館の中は自由に使ってくれていい。」


ほおお•••!!!

アリシアさんがいないのはやっぱりちょっと寂しいけど、隊長さんたちの気遣いが嬉しい。

私が寂しくないように執事さんとか侍女さんとか、優秀な人を私のそばに置いて、自由に過ごせるようにしてくれたのかな。


「ありがとうございます。精一杯!主人代行を務めさせて頂きます!」


ちょっとした感動してうるうるしてしまったので、頭を下げて顔を隠した。


「何かあったら言いなさい。対処しよう。」


隊長さんが執事さんを鋭い眼差しで見ながら言った。


「旦那様、ご心配には及びません。わたくしに、お任せください。」


執事さんは相変わらず人の良いにこにこ顔で丁寧にお辞儀をした。

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