お買い物に出発です。
「そろそろ着きますか?」
騎士団の集う碧塔の門から、かれこれ1時間以上馬車に揺られている気がする。
まぁ、時計が無いから正確な時間がよくわかんないけど…。
景色がずっと変わらなくて退屈だ…。
のどかな森の中を、レイさんとギルさんの三人で馬車に揺られている。
沈黙がいたたまれなくて、楽しいお買い物に浮かれた気持ちが徐々に萎んでいく.…。
「申し訳ございませんお嬢様。もう少々かかります。」
「あとどれ位かかりますか?」
「あと2、3刻程でしょうか」
そんなに?!
そんなに遠かったの?!
朝起きたのが7時だと仮定して、お屋敷を10時に出て、碧塔の門まで3、40分掛かったかな。門を出たのが12時だとしたら、到着するの夕方じゃん!!!
昼頃には買い物できるかと思ってたのに!
お昼ご飯はどうするんだろう?
ちょっとお腹空いてきちゃったんだけどなぁ…。
道の途中でご飯屋さんとか行くのかと思ったら、そんな建物無いし、木ばっかりだし…。
くぅぅぅう
ご飯の事を考えていたらお腹が鳴ってしまった。
恥ずかしいすぎる。
こんな事ならクロテか何か持ってくればよかった…。
真っ赤な顔で黙って俯いているとギルさんが口を開いた。
「…飯はどうするんですか?仕事中に連れ出されて、俺まだ食べてないんすけど…」
「そうですねぇ。一応携帯食は持ってきたのですが、何分二人分しかございません。どうしましょうか。」
携帯食…。
携帯食ってどんな味だろう?
クッキーみたいなやつかな?
「…お、俺携帯食はいらないっす…。」
「おや?遠慮なら不要ですよ?」
「…いらないっす。」
……携帯食って不味いのかな?
「森の中に何か食べられそうな物とかは無いんですか?木の実とか、果物とかがあれば食べてみたいんですが…?」
携帯食も気になるけど、せっかく森に居るんだし、木苺みたいなのとか無いのかなぁ〜?
「果物ですか?ギル君に心当たりはございますか?」
「…水辺が見つかれば何かあるかも知れないっすけど…。どこに何があるかはわかんないっすね」
「水辺かぁ…。」
川でも湖でも、あったら素適そうだな、滝とかあるのかなぁ。
普通に行ってみたい。マイナスイオン浴びたい。
しかも、水辺が見つかれば果物がある確率が高いなんて最高だ!
「お嬢様、果物があるかは行ってみなければわかりませんが、水辺でしたら少々行った先にあるはずです。道は逸れてしまいますが、まずは水辺に向かいますか?」
「はい!お願いします!」
やったー。
正直ずっと座ってておしりが痛かったし、足もモゾモゾしてきたから体を動かしたかったから嬉しい。
馬車が整えられた道路から、獣道に逸れて鬱蒼とした森の中を進みだした。
途端に今まで以上にガタゴトと大きく揺れだした馬車の揺れに、思わず椅子から落ちそうになり、とっさに利き手側の対面に座っていたギルさんに向かって突っ込んでしまった。
「うわわ!ごめんなさい!」
ギルさんがとっさに差し出してくれた腕の中に思いっきり飛び込む形になってしまい、ものすごく恥ずかしい。
「…いえ、お気になさらず。…どこかに掴まって座ったほうが良いっすよ。」
「お嬢様、座席の横に取っ手がありますので、そちらをお使いになるか、ドア横にある手すりにお掴まりください。」
「はい…、ありがとうございます。」
はぁぁ、なんか今日は、恥ばっかり重ねている気がする。
まぁ知らない場所ですし、常識も分かんないし、しょうがないか!うんうん。
初めてのお出かけだしー!
とりあえず、お買い物はお店の人に迷惑かけないように、お二人の言う事をちゃんと守ろう!
少しずつ学んで、常識人を目指すぞ!
…そういえば、魔法のお勉強って全然出来てないな。
おおとりさんが、ちゃんと勉強しないとやばい様な事いってたし、服屋行った後に、本屋にも行っておきたいな。
くうぅうぅぅ
早くお買い物行きたいな〜とあれこれ考えていたらまたお腹がなった…。
私のお腹よ空気読んでよ…。