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異世界でなぜこんな事に  作者: 笹薙
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柔らかい風


独りは嫌だなぁ…

何の音もしない。

暗くも眩しくもない部屋だったのに、今は心無しか薄暗くなった気がする。どんよりとした部屋に1人でうずくまっている。

ふと、頭上から風が吹いていることに気づいた。フワッフワッと髪がなびいている。


わずらわしいと言うか、くすぐったかった。

夢の中でも風吹くんだなぁ。


そう思っていたら段々と風が強くなってきたので、更に身体を縮めて小さくなった。

さっきまで、ふわふわと吹いていた優しい風が、いつの間にか耐え難いほどブワッブワッっと強く体に打ち付けてくる。まるで大きな鳥が目の前で飛び立とうとしている様だ。



「あいちゃんあいちゃん。」


っは? え? 神様の一部さんの声?

びっくりして顔を上げると、私の体より大きな、白い孔雀の様な鳥が、楽しそうに目を細めてこっちを見ていた。


「キヒヒ。ありがとう、あいちゃん。気に入ったんだよ」


え?


「ほ、え?神様の一部さん?」


「キヒヒ、そうだよ」


見た目は鳥なのに、なんか凄く意地悪そうに笑っているように見える神様の一部さん。


「いなくなっちゃったかと、思いました。」


ボロボロの泣き顔で思いっきり睨んでみたけど、やっぱり神様の一部さんは楽しそうに、意地悪な表情を崩していない。


「キヒヒ、いなくなる所だったんだよ?」


え? やっぱり私失敗してたの?


「何かが失敗してたんですか?ちゃんと想像出来て無かったですか?」


「あいちゃんは失敗していないんだよ。キヒヒ」


…。


何だこの鳥!

キヒキヒ煩いな!


「馬鹿に、してるんですか?」


なんか腹が立ってきた。

居なくなっちゃったと思って、本当に死ぬほど寂しかったのに!


「キヒヒ、馬鹿になんてしていないよ。あいちゃんが願ったんだよ?」


「ん? 私が願った?」


「あいちゃんが戻れと願ったんだよ?」


神様の一部さんが、ふわっと大きな翼で私を囲んだ。

「ありがとう、あいちゃん」と言って、ぎゅっと抱きしめられた。人とは違ってふわふわの羽根が温かくて、何だか体の力が抜けてしまった。


「私、おこってたのに…。マジおこですよ。なんかズルくないですか?」


「キヒヒ。ごめんね、あいちゃん。」


視界が真っ白で、神様の一部さんの顔は見えないけど、どうせ楽しそうな顔で言ってるんだろうな。ムカつく。


「はぁー。もう良いですから、離してくださいよ。」


なんか温かくて眠くなってくる。

私を覆っていた翼がなくなったので、目の前の大きな鳥を観察する事にした。やっぱり孔雀っぽいけど、でかすぎるからどちらかと言うと朱雀?

朱雀と言うと白いイメージは無いんだけど、これも結局私の想像の結果なのかな?どうして白い朱雀になったのかさっぱりわからん。

尻尾の羽根が長くて飛んだら格好良さそうだけど、今は床に引きずっている。それもいい感じだけど。


「与えられたら、対価を払わなくてはいけないんだよ?」


ん?何んだ急に?


「さっきしましたね、その話。」


「あいちゃんが、戻れと、願ったんだよ?」


はぁぁぁ? 

対価払えって事??!


「私が、戻ってって言ったから戻ってこれたんでしょう?!」


「キヒヒ。そうだよ?」


何なんだこの悪徳鳥は!

性格悪くないか?

本当に神様の一部だったのか?



「…そういえば、戻ってって言わなかったら、どうなったんですか?」


「姿を賜れ無かったかもしれないんだよ。キヒヒ」


「…私は、神様の一部さんが言っていた、[私は私になりたい]って言ってたお願いは叶えられたんですよね?」


「キヒッ、そうだねぇ、この姿は気に入ったんだよ。」


はぁー。このデカ鳥、譲る気ないな?

取れるだけ毟りとろうとしてるな?


「あいちゃん、あいちゃん」


ぐぬぅ。


「願いを叶えた。対価がほしいんだよ。あいちゃん。」


くそぅ。ムカつくけど、憎めないのがまた腹立つー!

ただのデカい鳥のくせに! キヒキヒうるさいくせに!

子首を傾げる姿が美しい。さすが私が作っただけあるな!


「…どうすれば良いんですか?」


「私も名前を呼ばれたい。名を賜りたいんだよ。」


名前?

それだけ?


「何でもいいんですか?」


「キヒヒ、あいちゃんに名付けてほしいんだよ。」


…可愛いことを言うじゃ無いか。


名前…。うーん…。鳥の名前…。

鳥なんか飼ったことないから思いつかないな。

白くてデカい鳥…。


「おおとりさん」

とか、人間っぽくていい感じじゃ無い?

デカい鳥だから[おおとり]さん。分かりやすくていい。

私の名前とも似てるし、羽鳥と大鳥。いい感じじゃないか?

もうこれしかないな。


「はい! おおとりさんに決まりました!」


ビシッと指を差して命名すると、目を見開いた大鳥さんは、羽根を逆立てたかと思うと、バサッと羽ばたいて空中をくるッと1回転して元の位置に着地した。

真っ白だった羽根が、つやつやと輝いていて、光の加減のせいか虹色に見えてとっても綺麗だった。


「お…、おおとりさん?」


「なんだい?あいちゃん。」


「なんか、ちょっと、雰囲気変わってませんか?」


一回り大きくなったような、羽根の艶も凄いし。


「キヒヒ、名を賜ったからだよ。ありがとう、あいちゃん」


名前つけると、バージョンアップするの?

名前付けるのって…そんな大事だったのか。


「あいちゃんあいちゃん。」


「はぁい」


「起きる時間決めると良いんだよ」


あぁ、そうかここ夢か。

なんか、凄く色んな事が起きてどっと疲れが…。


「えぇっと、使用人の誰かが起こしに来たら起きたいです。」


「誰かが起こしに来たら、新しい朝だよ。あいちゃん、ゆっくり休んでね」


キヒキヒと、楽しそうな声が響いて、とってもうるさいのに、何だか私まで笑ってしまった。おおとりさん、戻って来てくれて良かった。




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