偏差値の高いヤリサーのお話し

ギャグです。秩父はネタですが、論文は全部実在の研究です

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ヤリサー。

世間では「セッ〇スが目的のサークル」一般を意味していると思う。

そのヤリサーに、この俺、多田三十郎（たださぶろう）は入部している。

すげえ名前だろう。童貞っぽい名前？

ああ、そうだ。俺はまだ童貞だ。

秩父生まれの秩父育ち。悪そうな猿が大体友達な環境だった。

とりあえずだな、同世代の女がいねえんだよ。

セッ○スどころじゃねえよ。まず人がいない。

秩父なめんな。広いんだよ秩父。人いないとこは本当にいない。

関東地方？　なにそれ？　美味しいの？

ああ、そんなことよりヤリサーだ。

俺は、学校推薦による入試で、K大に受かった。

一流校である。正直受かるとは誰も思っておらず、学校で祝賀会が行われたほどだ。

そんなK大に入ったのはいいが、身体がでかいだけの、山育ち丸出しな格好の俺は浮いた。

こんなオシャレで華やかな場所で、俺は生活できるのだろうか？

ここは山に戻り、猿と一緒にギャングスタラップの応酬でもしていた方が良いのではないか？

そんなカルチャーショックを受けていたところ、ある人が声をかけてきたのだ。

「君？　どこかサークル入るあてある？　うち、山登りするサークルなんだけど」

とてもさわやかで、イケメンな先輩。

見た目で選ばれたのだろう。

だが

「山登りなら任せてください！」

居場所がない大学に、いつもの山登り。

とても優しそうな先輩だし、ここならうまくやれる気がした。

後から聞いたら、俺は荷物持ち要員で声をかけられたそうだ。

別にそれはいい。

それよりも、俺は思わぬところで重宝された。

「準中型免許」である。

車が必須、しかもトラックばかりのうちでは、トラックの運転が必須だったのだ。

それのおかげでマイクロバスが運転できる。

運転手である。

また20になれば、中型、大型免許も取る気だ。

そんなサークルなのだが、ヤリサーだった。

山登り？

登らないなんだな。

麓（ふもと）のキャンプ場でセッ○スして終わり。

最初の合宿でもう止めようと思ったのだ。

なのだが、この先輩方の話が、滅茶苦茶面白かった。

「コンドーム？付けねーよ、あんなの。いいか、さぶろう。女はな、子宮に精液出されて幸せ感じる生き物なんだよ。女には中出しするのが礼儀なの」

新井先輩がこれを言った時に、ああ、本当にヤリサーの人って頭おかしいんだな、と確信したのだが

「Semen acts as an antidepressantという論文にな、中出しされた時の鬱（うつ）検査の話が載っていてな」

「は？」

突然流ちょうな英語でしゃべりだしたので、理解が追い付かなかった

「Beck Depression Inventory。日本語で言えばベック鬱（うつ）病調査表と言うんだが、中出しセッ○スされた後と、コンドーム付けてセッ○スした後。それぞれを診断したら、中出しには抗鬱（うつ）の作用があるって結果が出たんだ」

「じょ、冗談ですよね？」

「調べてみろ。研究は面白いぞ。英語は読めるか？読めるようになれ。世の中にはな。腐るほど面白い研究がある。勉強しろよ。せっかく大学入ったんだから」

信じらなかったが、この新井先輩は、こんな事をやたら知っていた。

「Sex with sweethearts: Exploring factors associated with inconsistent condom use among unmarried female entertainment workers in Cambodiaという論文にはな。中出しと、コンドームのセッ○スでの心理比較結果があるんだが、これがまた面白くてな。コンドーム有りのセッ○スは、オナニー後の心理変化と変わらん結果がでたそうな」

「Satisfaction (sexual, life, relationship, and mental health) is associated directly with penile-vaginal intercourse, but inversely with other sexual behavior frequenciesも面白い。これはオナニーのやりすぎは、メンタル変化に悪影響を与えるという結果だ」

冗談のような話だ。実際に新井先輩は

「全部相関関係の話だよ。因果関係は明らかになってない。全部アンケート調査の話さ」

と言っている。

「じゃあ、出鱈目ってことですか？」

「人の心理の因果関係が明らかになるなんて、極めて少ないんだよ。相関関係の話で犯罪防止対策やるのなんて溢れている。日本の警察とかももちろんね。常識を疑え、倫理を疑え」

新井先輩は茶目っ気豊かな顔で

「こんなことを真剣に研究してるんだ。学問って楽しいだろう？」

中西先輩も頭がおかしかった。

「新井の言ってる話はそこまで変じゃない。精液には様々な物質が含まれ、膣での吸収はあり得る。Beta-endorphin and calcitonin in human semen　などでは、所謂快楽物質の吸収についての考察もあるな」

この人は薬学部なのだが

「Does Semen Have Antidepressant Properties?　では、精液に含まれる抗鬱（こううつ）効果のある物質に着目した研究だ。相関値はきちんととれている」

「あの！？　このサークルって、なんでみんな理論武装してるんですか！？」

ヤリサーってもっと軽いんじゃないの？

「理論武装なんてしてない。単に真面目に勉強しているだけだ」

勉強って

「ペニス巨大化とか論文すごいぞ。今度やってみるといい」

「……いや、遠慮します」

でも、俺はこういう先輩たちの面白会話に魅せられてしまったのだ。

明日もまた合宿。

正直慣れない。でも

「明日はどんな面白い論文紹介してくるんだろ？」

そっちが楽しみになっていた。