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剣狼の願い  作者: クタクタニ
変わる願い
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6-2 コルムの推論

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーシル


コルムさんにフーセの核を預けて3日。進展はまだ無いようだ…有るのかもしれないけれどコルムさんは一方的に、フーセが核になった時のことや、フーセの核が…フーセもどきが現れた時のことを聞きはしても、こちらの質問には答えてくれなかった。


その間に、サリナがお城の人に話を付けてくれたようで、私はコルムさんの助手というか雑用係として、城内以外はある程度自由に歩きまわれるようになった。つまりはお城の周りとこの家だけと言う事なんだけどね。


「タダ飯食わせる余裕は全然ねぇんだ、あのクソ兄貴、城の研究者っていっても、結果がある程度出さなきゃ金にならねぇ、しっかり働いてもらうからな。」


「ごめんなさい、私が帰る為に研究してもらってるから本来の仕事にならないんだよね…」


「それに関しちゃ、問題ないっていうより有難いと思ってる、最近あいつは俺をおとしめる、くっだらねぇ物ばっかり作ってたからな、少なくとも今は願い玉の研究してんだろ?むしろあれをやらなきゃいけなかった筈だから結果オーライだ。」


「なら良いんだけどね」


「俺としてもあいつの世話だけじゃなくて小銭を稼いできたいんだけど、目を離すとろくなことをしねぇ、服燃やしたりよ…そこでだ!俺は街に出て働いて貯蓄をこの機会に増やしておきたい、お前には俺の代わりにあのクソ兄貴の世話を任せたい。炊事洗濯…って奴だ」


「わかった。」


「ああ、あとわかってると思うけど城には入んなよ、ろくな事にはなんねぇ、下手にネル王やらエディル様に目を付けられたら、お前そこそこ可愛いからな、連れてかれるぞ」


「エディル!エディルがいるの?」


「そりゃいるよ、王子だぜ?」


「何だよ王子と知り合いか?」


「知り合い…じゃあ無いのかここじゃ…」


「あんま大きい声じゃ言えないけどな、王子も、兄貴といい勝負の変人だ、悪りぃ事は言わねぇ、関わらない方がいいぜ。」


そんなやり取りの後サリナは街に仕事をしに出て行った。

とりあえず私は言われたとおり2人の小屋と言うか家を片付ける事にする、居間兼台所兼研究室の部屋とサリナの部屋とトイレ、お風呂と言う名の外にカーテン引いただけのシャワー室。だけなんだけど…部屋の中はもう訳のわからないものだらけでどこから手をつけたら良いものか…


研究の事はよくわからないけれどゴミにしか見えない…


とりあえずご飯が3人で食べれるように片付けるか…

とやり始めて3日…


おかしい、何故か片付けが終わらない、3人がご飯を食べるスペースを作るだけなのにむしろ狭くなってる気がする。


「シル、頑張ってんな、飯をテーブルで食えるなんて思わなかったよ」


じゃあどこで食べてたんだろうか…


「こっち片付けるとな、兄貴の方側から少しずつ物が押し出されてきてドンドン隙間なくなるんだよ。」


「ほとんどあそこから動いてないのに何で物が増えてるのよ!?」


「ああ、俺もそれかになるんだけどよ、うかつに近づくとあいつが喜んじまうから嫌なんだよ、だから謎だ。」


「え゛えぇ〜」


「良い匂いがする…」


テーブルの物の奥から声がする


「これわーー!!サリナのあせのにおいぃーーー!」


「メシじゃねぇのかよ!?ドグサレヘンタイがぁ!」


サリナが持っていたスプーンでコラムを刺す


「はっはっは、そんなものでお兄ちゃんが止まると思うなよ…痛い…いたい!グリグリしないで」


「だったらお前が離れろよ!くそ、何で今日に限ってスープなんだ!フォーク取ってくれシル!」


ソフィーと同じ姿で毒を吐かれるのにもだいぶ慣れてきたかな…


「それより兄貴がこっち側に来るって事はなんかわかったって事だよな」


「ああ!わかったぞ!」


「ホントですか!?」


「ああ、このまま一人この玉を研究してても何にも分からないと言うことがわかった。」


「そういうのはわかったっていわねぇんだよ!この穀潰しの役立たず!」


サリナが私のスプーンも奪い取り両手出コルムさんの頭をグリグリする


「アッなんだろうサリナにこうされていると何か閃きそうだ」


パッとサリナが離れて横腹に蹴りを入れると、コルムさんが崩れ落ちる


「おしい、今のは角度はいいけど回転が足りなかった」


「あっそうか?」


横腹を抑えてコルムさんが立ち上がる


「冗談はここまでとして」


冗談はどのくだりだろう?


「少なくともこの核はやはり君にしか使えないという事がわかった、つまりだねこの核の中の人はだな、君の為にしか働かない、核になる時の願いだ。君の身代わりになったというし、君を守るとか君の願いを叶えるとかそんなところじゃ無いだろうか?おそらく君がピンチだったりした時に出てきたんじゃ無いか?どうかな?」


「…そう言われると…そんな気もします。」


「おい、シル。そいつはお前の恋人とかなのか?」


「ちっ…違う!幼馴染!兄弟みたいなかんじよ!うん、そうよ」


「ふーーん」


「そんな事はどうでも良い」


「その辺なんだよ兄貴!ここはちょっとシルをおちょくるところだろ?」


「…わからんな、どの辺だ?」


「もう!良いからコルムさん続き!」


「そうか、それでだな、君の深層心理の働きかけによりこの玉は力を出すと仮定する。そうなるとその玉から出てきた彼というのは、本人ではなく君が思う、君の記憶の中の彼だったと思われる。」


「あれだな、都合の良い男だな…そっちの方がいいんじゃねぇか?」


都合のいいフーセ…言われてみれば私が出てきて欲しい時にしか出てこなかった…まてまてまて!そうなると温泉はどうなる!?


「以上のことから君が戻りたいと心からこの核に願えば戻れるんじゃ無いかという推論が成り立つ。」


「ホントですか!?」


「推論だ、やってみなければわからない。試してみてくれ」


コルムさんからフーセの核を受け取り願う


「元の世界に戻りたい!戻りたい!戻りたい!」


「もっと強く」


「みんなのところに!戻りたい」


「心を込めて」


「お願いフーセ、私を元の世界に…」


「なんもおこんねぇな、ダメじゃねぇかよ!」


「ふむ、やはりか」


「わかってたんならやらせないで!」


「やはり鍵は未来のサリナか…そもそもこの時代に来たいなんてシル君は願っていなかったわけだしな」


「俺じゃねぇだろそれ…」


「そうなると…ちなみにこの核の人は生きたまま核になったんだよな」


「はい、私の身代わりになって核になったらしいので生きて核になったはずです。」


「その身代わりってのがよくわからないだけど、理論上できなくはないだろうけど相当難しい。相当精密な魔力操作魔力変化が必要となるはずだ、大魔法使いだったのかい?」


「いえ、多分変化の核と理の核の力じゃ無いかと…」


「変化の核…理の核…ね…いずれそれを可能としたその彼の話も聞きたいな…生きているなら戻すか」


「戻せるんですか!?」


「ん?できる。」


フーセが元に戻れる!そう思ったら目の前が霞んでくる


「お願いします!フーセを元に…」


「おっ、おい何故泣く、シル君!泣くのはやめたまえ」


「はっはっは、兄貴がうろたえるとか初めてみたぜ、なぁシル…良かったな」


サリナに抱きしめられる


「うん…うん…ありがとう、コルムさん、サリナ、ありがとう。」



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