1-8 二刀魔剣アシュラ
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「チャチャマルいうな、小烏」
「兄さんもやめてくださる?私はカラスではなくてフウロウよ?」
「そんなものエディルに文句言えい」
「チャチャマルだってエディルがつけたものよ!」
「わかった、わかった、ソフィー…ダメじゃ!ソフィーって柄じゃないじゃろ?」
「じゃぁチャチャで良いじゃない?」
「やめい!」
「ケンロー?妹いたの?フクロウだけど?」
「こやつは…そうじゃな、お前らに分かりやすくいうなら二刀魔剣アシュラの一刀。小烏丸じゃ」
「そう、私とチャチャ丸の二刀の総称がアシュラってこと、一緒にされるとかほんと嫌なのにね?」
「ケンローはチャチャマルだったのか!?」
「チャチャの妹さんなんだ、宜しくお願い致します。」
「だからチャチャいうな!」
「よろしくね、可愛いお嬢さんたち、兄さんがお世話になってるようね」
「いえいえ、チャチャマルには色々教えてもらってるんですよ」
「あら?チャチャまる兄さんが指導してるの?それは心配だわ!」
「ガッハッハ、そろそろいじめるのはやめてやったらどうだ?チャチャマルが凹んでいるぞ?
「儂…帰りたい…」
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立ち話もということで熊改め、大男改め、
森の守人ガジュさんのお家に招待されることになりました。私たちの旅行の目的を話すと
「お前ら4人で湖でキャンプ!?無理無理、寝てる暇なんてないぞ?さっきの奴らにずっと囲まれる事になる。一週ぐらいならここに泊まってけ、ソフィーと2人で住んどるが元は王国騎士の待機所だ、寝るところも掃除すれば有るから適当に使っていいぞ」
「それは助かります!お掃除がんばるのでお願いします」
誰よりも先に私が返事をする。
体を洗える!ゆっくり寝れる!虫がこない!
何より湖の見える丘の上のログハウスなんて素敵すぎる。
「おし、儂としてもそうしてくれると助かる。ただ
この森の管理人としてお前らに守ってもらいたいことがある、まず、襲って来たやつはしょうがないとしても魔獣だから、倒しやすいからと言って同じやつばかりを狙うな。あと先ほど小僧がやろうとしたから止めたが、木を無駄に切るな。あと細かいことは今は言わんが必要があれば注意する。」
「分かりました。宜しくお願い致します」
セリスさんが頭を下げるのを見てみんなで頭を下げる
「ガジュさんはなぜこの森の管理を?」
「儂は元は王国騎士でな、魔獣一掃の任を与えられていてな、それでこの地に来たんだが、その時ソフィーに邪魔されてな、この地を荒らすなーってな、それでも仕事だからな、なんとかしなければ〜とここに滞在するうちにここが好きになってしまった。王国にここの森から魔獣が出て行かないよう管理するからという事で許可をもらってここで守人をしとるんだ。さっきの注意はこの森から魔獣たちが出て行きたがらんようにするための注意だ、守ってくれよ?」
「魔獣一掃した方が安全で皆んながこの湖に遊びにこれるんじゃない?」
「ガッハッハ、まぁ皆んなにこの景色を見せたいと言うのは分かるがな、それは人の都合。魔獣と言っても魔力を持った動物達だ。そいつがいなくなってしまうとな生態系のバランスが崩れて大変なことになる。例えば先ほどお前らが襲われてたレッドウルフじゃが、あいつらも森の番人みたいなものでの。ナワバリに入って来た奴らを追い払ってくれる、奴らがいなくなると他から来た奴らが森に溢れて草木が死んでしまう。
まぁそんな感じだな」
「なるほど、それじゃ魔獣狩りというわけには行きませんね」
「いやいや先ほどもいったが度を過ぎねば構わんよ弱肉強食って奴だ、狩っても構わんがその日食べる分、あとは襲われた時は仕方ない、ぐらいに考えてくれると良いな。まぁ狩りに行く時は儂も同行しよう」
「お願いします、心強いです。」
「しかし強くなってどうする?勇者にでもなるきか?」
「まぁそのような大きな存在にはなりたいとは思いますがね…」
「魔王がおらんのでは勇者にはならんな、そういえばここに魔剣アシュラが揃ってるんだな魔王にはすぐなれそうだぞ!ガッハッハ」
「グゥーーーー」
剣狼がお腹を鳴らす
「儂、腹減ったの〜」
「ガジュさん、キッチンお借りしてもいいかしら?」
おねぇちゃんが立ち上がる
「おう、あるもんは好きに使っていいぞ」
「ねぇねぇケンロー!ソフィー!俺の夢を1つ叶えてよ!」
フーセが口を開く
「何するわけじゃないけど、魔剣アシュラを持って見たい!」
「嫌じゃ」
「フーセは勇者に憧れてたんじゃないのか?」
「勇者魔王の本はいっぱい読んだんだ、そのお話の中で読んだすごい剣がここに揃ってるんだぜにいちゃん!」
「ならそこのマントも着てごらんなさい、それはエディルのマントよ」
「まじか!キタコレ!」
「コガラス、なんで乗り気なんじゃ」
「いいじゃない、子供の夢を叶えるのは大人の務めじゃなくて?チャチャ丸?」
「わかった、わかった一回だけじゃぞ?」
右手にチャチャ丸、左手に小烏丸。床に引きずるマントをつけたフーセ。ずいぶん嬉しそうな顔をしている…お子様め。
「ふふっ、かっこいいわよフーセ、まさに魔王エディルね」
キッチンで料理していたおねぇちゃん顔を出す
「ほんと?ねーちゃん」
「魔王フーセか、これは危険だな、話を聞かない!説得は無理そうだ」
セリスさんがからかう
それを聞いてフーセが調子にのる
「ファファファ!こうやって魔力を溜めて!」
「調子にのるなワッパ!」
剣狼が元の姿に戻る、ソフィーさんも元に戻り口を開く
「この感じ…あなた理の核を持ってるの!?」
「あぁ言って無かったの…」
「散らばったのを集めたんじゃよ、儂の核を合わせて5つじゃ、お前のを合わせて6つか?」
「兄さん、何をする気?」
ソフィーさんが声を荒げる
「何もせんよ魔力ストックをしておくだけじゃ、それに目の届くところにあった方が安心じゃろ?」
「それはそうですが…」
「行方がわからんのはあと2つじゃ、まぁそのうち見つかるじゃろ」
「しかしワッパ。ほんとエディルを思い出したわい、話を聞かんところとかそっくりじゃ」
「魔王ってどんな感じだったんだ?」
「エディルはね、魔王って言われてるけど、本当は…うーん…研究者がいちばんしっくりくるかしら、彼はねディヴァイスターの持ち主、最初の王、ネルの息子だったの。」
「ネルを倒して世界を二分したんじゃないの!?」
「まぁ、近いといえば近いんだけど、ネル王が死んだのはエディルが殺した?といえなくもないんだけどね…後継のエディルは研究に没頭、剣士では無かった彼は使いやすいように聖剣を2つに分けそれを補助するために兄さんと私、魔力を持った生物を融合させた。それがアシュラってわけよ。それで私たちをさらに研究しまくって国をほったらかしていたら、
国の内政が悪化、しまいに崩壊。それがごちゃ混ぜになって今の伝承になったんじゃないかしら?」
「いろんな意味で残念な奴じゃった」
「じゃぁエディルの子供がパル?」
「いやいやエディルの死後、間に何年も空いておる、
子孫には違いないじゃろうがな」
「じゃぁ他の七星剣は?」
「あれらは儂らの核を分散して作った模造刀じゃ、忌々しいから4本はへし折って核だけ奪い返してやったわ、もう一本もいずれみつけてやる」
「あれ?核は8つなのに七星剣?残りの一個は?」
「それも行方知れずじゃ」
「それを集めるのが剣狼様の目的?」
「いや、やっきになって探しておるわけではない、見つかったらええなぁぐらいじゃの」
「ではあと…核が残り一個ですね、にーさん」
「なに?」
「儂が持っとる」
ガジュさんがポケットから橙色の玉をだす。
「会話の核だ。」
「私も見つけて核だけ取っておいたの」
「へし折ったか!」
「兄さんと一緒にしないでくれる?私たちのように意思があるわけじゃないけど一緒に戦った事もあるでしょ」
「ふん」
「ご飯できましたよー今日はシチューにして見たわ。剣狼様には噛み応えを重視して固めに焼いたお肉を…」
ケンローが肉にかぶりつく
「ファル嬢!今日も最高じゃ」
そんなケンローをみてふと疑問に思う
「ケンローってなんでちゃちゃまるなの?」
「ブフォっ!」
「わっ汚い!」
「兄さんはね、昔は毛並みが茶色かったの、それでちゃちゃまる」
「じゃぁ今はギンギン丸だね」
「黙れワッパ」
「そうね〜昔はそこら中取っ替え引っ替え手を出して食い散らかしていたわ…まさにギンギンね」
「食い物の話じゃからな!?」
「それにしても魔獣ばかり食べていたギンギン丸は人の食べ物も食べれる様になったの?」
「誰がギンギン丸じゃ、お前も食ってみぃ、ファル嬢の偉大さがわかるぞ」
一口食べてソフィーさんの毛が逆立つのがわかる
「あなた!うちの子になりなさい!」
「やらんぞ」
「ダメよ、だからギンギン丸なのよ!」
「お主の様なピーチクパーチクうるさい奴がおってはファル嬢の才能が埋もれてしまうわい」
「まぁーー」
…この後もずっと兄妹の、口喧嘩は終わらなかった。
久々に、あえてうれしかったのかな?
2人とも?2匹とも、嬉しそうだった。
少なくとも私はそうだと思っていた。




