5-20 ソフィーとサリナ
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーシル
「け…剣狼?」
「わるいな、記憶が混乱して遅刻しそうになった」
「どこに行ったかと思ったらようやく来たかエディル」
「ああ、会いたかったよネル、悪いが」
一瞬で剣狼がセリスさんの懐に入り込み食らいつく
「くっ、くそ!」
剣狼がすぐさま払い飛ばされるが
セリスさんの体からは血が流れていない…
「やっぱダメか、出来れば操りの核まで撮りたかったんだけどな。」
「くっ、何のつもりだ、エディル」
「悪いなネル、説明は後回しだ。ソフィー人型になれ」
「何のつもりなのにーさん」
ソフィーが言われた通り人型になる。
「おっと、悪いこれ着てろ」
エディルのマント?モグラさんに預けたはずなのに…
「あら?珍しく紳士じゃない?どこから出したのよ」
「今さっき下でモグラ君から拝借して来た」
「拝借って、あっちは大丈夫なの?」
「あーまぁ大丈夫だろ、こいつの中に入ってた土やら石やら出して埋めて来たから今はむしろ救出活動中かな?」
剣狼が茶色い玉を出す
「それって核?」
「ああ、収納の核だ、それよりも時間がない、ソフィー、とりあえず頼みがある。」
「なによ?」
「お兄ちゃんと呼んでくれ」
「はっ?」
「頼む重要な事なんだ。」
「バカだとは思ってたけど、限界超えちゃったのねにーさん」
「ソフィー!ホント頼む、時間がないんだ」
幼い姿のソフィーが困惑している…いや、ここにいる全員がポカンとしている。
「おっ…おにいちゃん?」
「よし!キタコレ!俺はやってやったぞコルム!」
「死ね、ウジ虫」
ソフィーが剣狼の腹を蹴り飛ばす
「あら?何でかしら体が勝手に…」
「いてて、なんだよ!記憶の核なんで必要ないんじゃないか?サリナ」
「サリナ?」
ソフィーが首を傾げるのを見て剣狼が人型になる。
「すぐに思い出すさ。」
そういうと、ソフィーに記憶の核を当てる
「さっきのはセリスさんから記憶の核を奪い取ってたんだ…」
「どうだ?」
ソフィーがふるふると体を揺らす
「おそい!それで死ね!」
ソフィーが目を見開くと再び剣狼が蹴り飛ばされる。
「あーようやく戻った〜えーとそれでどうするんだっけ?」
ソフィーがキョロキョロする。
「うんうん、懐しい。まぁまずはやることやらなきゃな、えっとシル?」
「えっ、あっ、はい。」
「フーセの核貸して」
「えっ?うん」
「よし、じゃぁこれからちょっと大変だと思うけど頑張ってね、寝癖のすごい人が貴方の味方になってくれるからね」
「それってどういう…」
「いってらっしゃい。」
そう言うとフーセの核をまた私の首にかける
その途端目の前がグニャグニャと変わっていく
回る、落ちる?気持ち悪い、眩しい、最悪だとにかく最悪だ。
いったいなんなの?
お姉ちゃんがおかしくなって、セリスさんがネルで、
フーセがフーセじゃなくて、ソフィーも、剣狼も、みんな変わっちゃって、私だけ置いてけぼり?
みんな、置いてかないでよ
私も連れてってよ
一人は…いやだよ、
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
揺れてる
「ちょっと」
揺れてる
「ちょっとあんた、大丈夫?」
「んっ…」
「流石にここで寝てたらあんたも石にされちゃうよ?」
目を開く、まだちょっと気持ち悪い
「ちょっと大丈夫じゃない…」
「病気かなんかじゃ無いでしょうね、しょうがない。私のとこおいで。休ませてあげるわ」
解放してくれた女の子を見る
「そ、ソフィー?」
「ソフィー?誰よそれ?私はサリナ。あんたは?」
「サリナ?」
「ええ、サリナよ。それで?あんたは?」
「シル…です…」
ソフィーじゃ無い?でも…
辺りを見渡す…
お城の…中庭?でも私が知ってるムスシタナ城じゃ無い…
「ここはどこ?」
「はっ?見ればわかるでしょ?城の中庭よ」
「いや、その…なんて言うのかな?何処のお城?」
「何処の?って頭でも打った?城っていったらネル様のお城以外に無いでしょう、ホント大丈夫アンタ?」
「ネル様?ネル様ってネル様?」
「あー重症ね、とりあえず私の部屋に来なさい」
ソフィーの姿をしたサリナが私の手を引く
どう見ても人型になったソフィーだでも…
メイド服?
「ソッ…サリナはここの従者なのかしら?」
「んー従者って言えばそうなんだけど、この格好はくそ兄貴の趣味ね、気持ち悪い。嫌がったら私の服全部燃やしやがったの、ホント呼吸やめたらいいのに。」
「それは…殺していいレベルね、私なら首を一回転させるつもりで蹴るわ」
「あら貴方わかってるじゃ無い、ホントそうしてやりたいのに届かないのよ、それにうまく蹴れないし」
「そう奴にはこうよ!」
上段蹴りをしてみせる
「貴方のキック凄いわそんな蹴りをしてみたい、っていうかあいつを蹴りたいわ!教えてちょうだい!」
そんな話をたぶんお城の中のホント隅っこにまるでここだけ隔離されたかのように小屋が建っていた。
「兄貴ここの研究者なんだけど、事あるたびに火事起こすから隔離されちゃったの、ちなみに私もここに住んで2年だけどこの小屋は三軒目よ」
ソフィーのお兄さんって剣狼?いやそれはフクロウの…でもソフィーじゃなくてサリナだし…でも、たしか剣狼もサリナって呼んでたような…
「こ…困ったお兄さんなのね…」
「ホントよ、自分で穴掘って埋まってくれないかしら」
小屋に入る
「よかったわねそのクソ兄貴は不在よ」
「えっええ、良かったような、見てみたかったというか…」
小屋の中は研究をしてるというだけあってなんだかわからないものが散乱していた
「ごめんね、流石にクソ兄貴でも飯のタネには違いないからここはどうにもならないの、こっちの部屋にいて」
案内された部屋はベットと机と椅子…そうだソフィーの部屋そっくりだ、やっぱりソフィーなのかな?
「今水持ってくるわ、ちょっと休んでて」
どうなってるんだろ、ネルの城って言ってたし、あのまま全員操られちゃったとか?でも全然違う城だし…
「はいお水、それで?貴方は何者?」
「何者って言われても…人間?シル・ファリーゼとしか…」
「なに?アンタ貴族様だったの?えっ…ヤバ!ご、ごめんなさい、そうとも知らず大変失礼な事を…」
「ああ、ちっ違う違う貴族…だけど貴族じゃ無いっていうか」
「?どういう事?ファミリーネーム持ちでしょ?じゃ無い、なんですよね?」
「かしこまらないで…おじ様が領主だったというかー」
「あー成る程取り壊しになった落ちぶれって事ね、それの再建のためにネル様に会いに来たと…ウンウン苦労してるのね、でも残念だけどその手の話は取り合ってもらえないわよ、これまでも何人も来て門前払いなんだから、でもまぁよく城の中まで入って来れたわね、あーそうか!無理やり入って頭をやられてあそこで倒れてたと…そうなると…もしかして私…ヤバイ?」
「うー違うんだと思うんだけどなんて言ったらいいか…そうだソフィーに寝癖のすんごい人が助けてくれるって言ってた」
「ここで寝癖のすんごい人ねぇ…それはもう…うちの兄貴しかいないな…兄貴に女の子の落ちぶれ貴族のお客様…!?そうか!兄貴に嫁入りすりゃ再建も夢じゃ無い!と考えたわけだ」
ジロジロと私を見る、
「まぁうん、いいな。上手いこと兄貴の面倒を押し付けられれば、うひ」
「サリナちゃん?心の声が漏れてる、それにそんなつもりじゃ無い。」
「なんだ違うのかよ」
その時扉の開く音が聞こえてくる
「マイスゥーートシスターーーサリナーーお兄ちゃんが帰ったよぉーーーーー」
サリナが頭を抱える
「さっ、ウジが湧きまくりの兄貴のお帰りだ」
私も頭が痛くなる、私…どうなっちゃうんだろ…




