5-19 南門の攻防
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーカイ
「すいませんね、お二人の邪魔をして」
「いえ、別にここが最後の地になる訳じゃ有りませんからお気になさらず。」
「でもまぁ何というか、これって弱いものイジメですよね。ほんと何人いるんだか…3対千人?」
「いや、悪いがカイ殿、私は弟の相手でおそらく手がいっぱいになる、2人で何とか後ろを頼みたい。」
「わかりました隊長、お任せください。」
「ははっ間違ったかなぁ〜、マーダン隊長、頑張りますけどね、できれば早く片付けて、こっち手伝ってくださいね」
「ああ、善処しよう。」
「カイ、イカルガで魔術攻撃の処理お願いします。」
「わかりました。できれば一発目で極力数減らしてくださると助かります。」
そういうとイルナがヴァルハラを振りかざし声を上げる
「二番隊元副隊長クー・イルナです。」
「クー!?」
「出来れば殺したくない、ですが手加減できる状況でもありません、死ぬな!いいな!」
えっ!?マーダン隊長を見ると既にマーリンと向かい合っているが、背中が少し笑っている気がする
「行きます!キャッスル・ウォール!」
私達の両側の兵士達を巻き込んで地面から氷の壁が生えてくる、氷の壁の中に私達を囲んでいた先頭にいた兵士達の大部分が巻き込まれたようだ。
「イルナさん、結婚おめでとうございます。」
正面の壁の間から兵士たちが突っ込んでくるそれに向かいイルナさんが剣を振るう
「いえ、実はまだ結婚はしていません。」
そこに向かって火の玉が飛んでくる
「ですよね、そんな暇なかったですもんね。」
それをイカルガで吸収する
「すいません、そう名乗っておきたくて…」
「いいですけど、出来ればそう言う死亡フラグみたいなのやめてくださいよ」
「いえ、これは生き残るという覚悟ですよ。これで必ず結婚しないといけなくなった、という事です。」
無数の矢が飛んでくる
「成る程、それでは私は式の司会でもさせてもらいますかね。」
それをイルナさんが薙ぎ払う
「それは有難い、結婚式をする為にも貴方を守りましょう。」
「ええ、是非お願いします。」
後ろではクー兄弟の戦いが始まっている、残念ながらこちらにはその戦いを見守る余裕は無かった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーマーダン
「あらあら兄さん結婚したの?私呼ばれてないんですけど」
「安心しろ、マーリン。式はまだだ。でもまぁ、どのみちお前は参列できないけどな。」
「あら?それは残念、じゃぁ責めてお墓はいっしょにしてあげるわ。」
「墓か…そうだな、イルナを連れて帰郷した時にお前の骨は連れてってやるよ」
「イカルガ、あの子が持ってるけど、それで私に勝てるのかしら?」
「ああ、槍はあんまり好きじゃないんだ。わかるだろ?」
「そうだったわね。」
「それじゃあ始めようか」
「ええ、そしてさようなら」
マーリンが手を挙げたかと思うとすぐさま振り下ろす
「マーズメル・ペンタグラム」
5つの巨大な火球が頭上から降り注ぐ
「ウインド・フット」
術を唱えてマーリンの懐に飛び込みそのまま胴体を切り落とす。
「にーさんが魔術を!?」
「ああ、つまらない事にこだわるのはやめたんだ」
「なるぼどね」
振り返ると落ちた上半身と下半身をなにかがつなぎ合わせていく
「でもまぁそれで?って感じなんだけど、これに関してはどう対応するのかしら?」
「それは切りながら考えるさ」
そう、切っても繋がる、いくら切っても無駄かもしれない、ただ姫の話ではシル殿が腕を消滅させた時再生はしなかったと言う。できるか?弟を…何度も…
「くっ、雑念が入るな…」
「あらあら大丈夫?」
「あぁ、直ぐに細切れにしてやる。」
「させないわよ、ヒュンゼル!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーイルナ
戦っている兵士達は操られているせいなのか動きが悪い、いや司令官がわるいのか?統率出来ていない時点で付け入る隙はあると思ったけれど…
「イルナさんマジックポーションです。飲んでください。」
「いいんですか?こんな高価なもの」
「命より高いものはありませんよ」
「確かに…」
いくら隙をついて善戦しようとこの人数は…どこまで体力と魔力が持つか…
「うわぁー」「ぎゃぁー」
向かい合う兵士達が後ろの方から叫び声が聞こえてくる
「カイ殿、何か来ます」
「そのようですね、出来れば兵士を全部倒してからきてくれないかな…はははっ」
兵士達の間通り抜けて
「ピンチみたいだなカイ!」
「剣狼様!?」
「っといってもそんな時間がないから手短に。変化の核を寄越せ」
「助けに来たんじゃ無いんですか?変化の核が今なくなると流石に死んじゃうんですが…」
「なんだ?助けて欲しいのか、うーん…おっイカルガ持ってるじゃ無いかそれありゃこれくらいの相手お前1人で十分だろ、あームキムキも居るのか、それじゃあちょっとだけ助けてやる。カイ、イカルガは魔力を吸収する、だから放出だってできるんだ、槍の先に魔力貯めるイメージできるか?」
「はい、こうですかね?」
「じゃぁそれにマーズメルみたいな炎にするイメージ」
「あっ出た。」
「目標に向かって放り投げる」
兵士達に火球が飛んでいく
「後はお前なら応用きくだろ、上手いことやってくれ、イルナのねーちゃんはサポートしてやりな、いらないとは思うけどな。変化の核持ってくぞ。」
「待ってください、隊長が…」
「しょうがねぇな、兄弟対決に水を指すほど野暮じゃ無いんだがな、ちょっとだけ平等にしてやるか、どちらにしろ変化の核が必要だ。よこせ」
剣狼様の口元に変化の核をだすと、それをくわえる。
「ムキムキの体元に戻してやる。」
そういうとマーリンに向かって走りだす
「ちょいとごめんよ」
マーリンを後ろから蹴飛ばして地面に頭を擦り付ける
「剣狼様!?」
「えっとこんな感じか?ムキムキ」
マーリンの黒い何かが消えて人の肌に戻っていく、
「まぁこんなもんか、隊長さん、こいつの頭の方は記憶の核が無いと元に戻せないから、ほどほどにな」
「戻せるんですか!?」
「あぁたぶん戻せるよ、この後うまくいけばな。と言うわけで忙しいからもう行くぞ」
「はっはい」
そうマーダンに言って剣狼様は南門を越えていく
「くっゾォおおおお!犬っころ!!!!」
地面にめり込んだ顔を引き出しながらマーリンが叫ぶ
「ははは、マーリン。いい筋肉だな」
「なっ!?」
元に戻った自分の体を見て
「いっイヤァァァぁーー!!!!」
悲鳴をあげた
「私の…私の体が…こんなみすぼらしく…」
「いや、マーリン。良い体だぞ!」
隊長の顔に笑みがこぼれる、もう大丈夫だ。
「イルナさん、剣狼様はああいってましたけどね、1人は…流石に…きびしいですー」
そう言いながらも既に炎だけでなく氷、風を操って槍を振るっている。
「もうちょっと行けるんじゃ無いですか?」
「体力的に…無理ー」
「仕方ありませんね」
グビッとマジックポーションを飲み干す
後相手は700人くらいだろうか、終わりはまだ見えないけれど、もうすぐ私の旦那様が来てくれる。それならば…
「とっとと終わらせましょう。」
恥ずかしい姿は見せられない。
私はヴァルハラを握りしめる
今なら私にもできる気がする
私はヴァルハラを振るう
その姿はムチのようにしなっていた。
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