5-18 フーセの核
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーールル
「おかえりなさい。ルル姫。色々準備していたがまさかの堂々たる正面からとは恐れ入ったよ」
セリスとファルがにこやかに立っている
「おうちに帰るのに準備なんているのかしら?」
「ふむ、それもそうだな、まだ君の家でもあるんだな」
「先に言っておくわ、私達に戦うつもりは無いわ、交渉に来たの」
主導権を取られる前にこちらの話にしなくては
「交渉?なるほど姫は交渉になる手札が有ると」
「ええ、単刀直入に言うわ。私をこの国の王にしなさい。」
「あぁいいともしてやるさ。こちらからお願いしよう」
「えっ?」
「ジーコ社を取り込むってのはなかなかにいい案だ流石だよ、もしかしてこれが手札だったか?」
「えっええ。」
「じゃあ話は終わりだな、早速準備に入るか」
「準備?」
「ああ、もちろん君を王にする為の準備さ、ファル」
「はい。」
「まったくルルったらもう少しあがいてくれないと私が色々準備した時間がもったいないじゃ無い、わざわざフージだって連れてきたのに、私としては泣いてお願いされたかったのに残念だわ、今からでも間に合うわよ?少し反抗してくれないかしら?」
どうする、なんか反抗する理由が無くってきてる、これじゃ私が今までやってきたことがバカみたいじゃ無い…
最初から協力していればこんな苦労…
「シルちゃん、ルルちゃんに打ち込んで!」
ソフィーが叫ぶと、私の頭に魔力の衝撃が走る
「さすがソフィー、ギリギリね。」
ファルがクスクス笑う
「ソフィーも退場願うべきだったかな」
頭に残る衝撃を振り払い聞く
「もしかしなくても、洗脳始まってたってことかしら?」
「洗脳?イヤイヤそんなつもりはないよ、こちらから協力したいという話だったじゃないか。」
「協力…ねぇ」
「フーセ!出てきて。」
「ちょっとシルちゃん、まだ早い」
「これじゃ話し合いになんてならないよ、あっちは言葉が攻撃になるんだから」
「俺のデバーーーン!」
「成る程、成る程そいつに俺とファルを倒してもらおうということか?」
「おう!にいちゃん、今の俺はメチャクチャつえーぞ!」
「まった、まった!フーセ、ストップ。ってかハウス!あくまで話し合い、だからね、待って。」
「ふふふ、そうよね、時間稼ぎしたいもんね、マーダンや、ユウヒ達が来るまでって感じかな?フーセはとっておきの一か八かの最終手段にするしかないものね、シルは見切りが早くてダメよ。」
「お見通しって感じだわね」
「まぁ色々想定したけどまぁ結局の所どうにもならないってなったら戦うしかないものね。」
「そうなだけどね、私からの要望はこの国の平和の継続よ、戦争がないって言うのもそうだけど経済的にもね、それが叶うなら操られようと構わないと思っているわ」
「ちょっとルルちゃん!」
詰め寄るシルちゃんとソフィーを制止して続ける
「私としての今後の政策はこうよ、まず武器の流通の規制、これは現在我が国の魔獣掃討作戦が終わってる事により、ジーコ社、商業組合の協力を得られれば実現可能と踏んでいるわ。その上でこの国を観光を売りとした整備を行い、一大観光国家とする。」
「成る程、成る程。面白いな。実に面白い」
「そうなれば安全な中立国という事で各国の会議なんかも期待できる、わざわざ戦争して攻めなくてもあったから来てくれれば操り放題!って事で貴方の目的も労力少なく果たせるんじゃないかしら。」
パチパチとセリスが手を叩く
「演説は終わりかな?じゃぁそのようにしよう。と言ったらどうなるんだ?また頭に一発シルに貰うのかな?」
「うっ…」
「つまる所な、ルル姫。交渉にならないんだよ、そんな話は、決めるのは私君の案も実に面白い、そうするかもしれない。でっ?ってことだ。私の目的世界統一をするにあたり君を操りこの国を操るって事にはなんの変わりもない。君の願いは叶えても構わない、じゃぁその代価に私が望むのはここでおとなしく私に従えだ。」
「いい顔してるわよルル。王族だから交渉のテーブルにさえつけないなんてことなかったもんね、カイ君辺りがここにいれば、話ぐらいは出来たかもね。」
「なぁルルねぇーちゃん。セリスにいちゃんとファル姉を元に戻すって事じゃねえのか?俺もシルもそのつもりでここまで来たんだけどさ?難しい事はよくワカンねぇけど取り言えずぶっ飛ばしてからゆっくり考えたらいいんじゃねぇか?」
「いや、あのね、フーセ君。それができたら苦労しないって言うか…」
私の言葉に被せてファルが話し出す
「ほんと、フーセぽい事言うわね、そう言いたいならそう言えばいいじゃないシル、代弁させてないで」
「えっ、なに?わたし?」
???どういうこと?なんの話?
「あれ?ルルちゃん気づいてるから止めてるかと思ったけどもしかしてわかってない?その顔初めて見た。可愛い」
「気づいてない?私が…何に?」
「ファル、流石にそれはここ最近フーセに知り合ったばかりの姫に求めるのは無理があるだろ?」
「それもそうかー、さっきのルルの顔可愛かった〜ちょっとだけルルの事好きになったかも。」
「なんの話してんだにいちゃん」
「簡単な事だよ、お前は誰だって話だ。」
「はっ?誰ってフーセだよ、何言ってんだ?」
「どれちょっと試してみるか、お前の最初の愛馬の名前なんだっけ?」
「……」
「去年渡せなかったシルへのプレゼント、あれどうした?」
「ペンダントなら渡した」
「それじゃなくて、髪が短くなっちゃってダメになったシュシュの方だよ。」
「あれは…」
「あっそうだった、私がもらって今つけてた。ごめんごめん」
「まさか…」
「わかった?ルルちゃんはわかったみたい、ソフィーもわかったみたいね。シル?わかるかな?」
シルちゃんがうつむいて震えている
「そうだもっと早いのがあったわ、ルルどうせアブソリュートに賢知の核つけて持ってるんでしょ?それで書いて見せてよ、これはフーセ本人だ。って」
「うっせー!俺は俺ダァ!」
フーセがソフィーを剣に変えてセリスに切りかかる
「ダァーーー!」
「おっ!足運びが上手くなってるな、癖が消えてる、まるでちょっと前の俺の足運びだ、うまいうまい、そうそうそこで距離を取って」
「一閃」
「よく見てるなシルちゃん、フーセよりセンスあるんじゃないか?」
「うんうん、ほんとだ言われてみればセリスの動きだね。フーセはこんな戦いの仕方じゃ無いでしょ?」
「我山城切!」
「おいおい、シルちゃん確かにフーセっぽいけどな、流石に」
フーセ君が壁を飛び越えた所で地面に叩きつけられる
「ここまでフーセは馬鹿じゃないぞ?」
「そうよ、フーセ可愛そう…あんなにフーセはシルのこと見てくれてたのにね、これじゃあんまりよ。」
「俺は負けねぇ!」
「おっ、これはフーセだ。でもな、シルちゃんがそんな顔してる時にフーセはそれを無視したりしないんだよ。シルちゃん」
シルちゃんが泣き崩れると同時にフーセ君が消える
ソフィーが元に戻ってシルちゃんの肩に止まる
「フーセ君を投影する核だったの…」
「フーセの願いが形になったもんだシルの願いを叶える核ってとこじゃないか?」
「さてと、まぁ偽物って言ってもうるさいのがいなくなったのは確かだ。つぎはどうする?お姫様。」
終わった、交渉できない、後続は不明、逃げる手段もない、せいぜいアブソリュートで一発お見舞いするぐらいか?
絶望感に潰されそうになった時窓が割れる
「泣くなシル、顔を上げろ」
「けっ剣狼!?」
作戦に加えられなかった
銀色の毛並みの狼が私達の前に立っていた




