5-14 突然の別れ
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーリン
カタカタと進む馬車の音…心地がいい
干し草が少しチクチクするけれど暖かい気持ちになる
もう少しこのまま横になろう、幸せ〜
ガタン!
馬車が大きく揺れて頭を打つ
「イッター」
「あぁ!りんすまない!大丈夫か?」
イルナさんの声が聞こえる、えっと私どうしたんだっけ?
「目が覚めた?りん?大丈夫?」
ソフィーさんが覗き込んで来る
「あっ大丈夫です。えーと…おはようございます。」
「大丈夫そうじゃな」
剣狼さんがそう言いながら私が起き上がって空いた干し草の上に横になる
「ちょっと剣狼!りんちゃんもう少し休ませなきゃ!なんであんたがそこで寝るのよ!」
「あああっ、もっもう大丈夫ですからシルさん。それよりどうなったんですか?」
シルさんに地下を出た後の事を教えてもらう
「それで、そこでモグラさんが突然足元から現れて私達を助けてくれたってわけ。そのあとモグラさんのトンネルを通ってイルナさんとマーダンさんが乗って来た馬車に乗って今はルルちゃんがいるフェルトに向かって移動中。」
「そうだったんですか…ごめんなさい、大変な時に私…」
「その前に気を失うぐらい頑張ってくれたんだから気にしないの、みんな無事だし、おじ様も連れ出せたしね」
自分のいる反対側にある簡易ベットの上に王様が寝かせられている。その傍にモグラさんが馬車の揺れを感じさせないぐらいまっすぐ立っている。
「モグラさん!」
モグラさんに抱きつく。
モグラさんはポンと私の頭な手を置くと
「無事でよかった。」
そう言って頭をわしわししてくれました。ちょっと痛かったけどポカポカしました。
「済まないなリン、王にベットを使わせてもらっている。」
「いえいえいえ!いいんです!当然です!」
「そうじゃ、いいんじゃ、そんな雌の匂いをプンプンさせたベットにリンを寝かせるのはまだ早いわい。」
「け、け、け、剣狼様!?」
イルナさんとマーダンさんが慌てています。どうしたんでしょうか?
「黙って前を見ていろ」
そうモグラさんが言うと2人は大人しく前を向きます
「儂の鼻にもリンにも毒にしかなりはせんがな…まぁ仲が良いことは良いことじゃの」
???毒???
「王様は大丈夫なんですか?」
「王都からかなり離れてから頭には魔力を打ち込んだわ、シルちゃんが…」
「あぁ脈や呼吸も問題ない、気を失っておられるだけだ、暗示が解けているかどうかは起きて見ないとわからんがな、そこはシル殿しだいだな」
「ちょちょちょっと!ソフィもモグラさんも、なんか失敗してたら私のせいみたいに言わないでよ!心配なら他の人やってよ!」
「この中で王に直接手を出せるのは血縁であるシル様しかおりませんので…」
「イルナさんまでなんで急に様付けするかなーみんなずるいんだから」
馬車の中に笑いが起きる
「アソーマ隊長さん達はずっと私たちを騙していたんでしょうか?」
「いや、おそらくそうでは無いじゃろう、ファルは暗示をかけたとゆうておった、つまりは何かの合図で命令を聞くようにされておったのじゃろう、王都の人々もおそらくそれじゃろう。」
「王都にいると暗示にかけられてしまうのでしょうか?」
「どうじゃろうな、まぁどうやって暗示をかけているかはわからんからな、案外我らも既にかかっている恐れもないわけでは無いな…念のため全員に魔力を打ち込んでおくか?」
「そうですね、その方が良いかもしれません。」
気を失ってしまう恐れもあるので順番にシルさんが魔力を打ち込む
「イルナさん行きますよ」
「なんだか注射を打たれるようで緊張しますね、どうぞ来てください。」
「えい!」
倒れそうになったイルナさんをマーダンさんが支える
「気を失っていますね、追っ手が来ないとも限りませんので時間を掛けてやるしかありませんね」
〜〜〜〜〜〜
私が再び目を冷ますと辺りは暗くなっていた
馬車は止まり野営の準備が既に出来ていた。
「リンちゃん目が覚めた?大丈夫?」
「はい!なんか逆にスッキリした感じです。」
「たくさん寝て魔力が戻って来たんじゃ無いかしら?」
私の頭の上にソフィさんが止まります
「はい、ご飯は任せてください!」
「後、魔力を打ち込んで無いのは剣狼だけね」
「儂も打つのか?儂はスペシャルじゃからいらんじゃろ?」
「どうせご飯食べたら寝るだけでしょ?寝る前に一発ぶち込んであげるわよ」
「なんじゃ最近儂の扱いがフーセと同列になって来てやしないか?シル嬢?」
「そんなことないわよ、フーセだったらもうとっくに後ろから魔力打ち込んでるもの」
「儂、いやじゃなぁー」
「私が嫌なら…じゃあ、りんにやってもらいなさいよ。」
「そうじゃな、その方がいくらか安心じゃわい」
「もう喧嘩しないでくださいよ、シルさんも剣狼さんも」
「はぁーい、でも剣狼頑固だからりんちゃんお願いね」
「わかりました。でも私も魔力を打ち込むのは初めてなんで覚悟してくださいね。」
「そっ…そうじゃった…シル嬢!」
「私はもう魔力切れでーす。自分で言ったことには責任を持ってください。」
「私じゃ不安ですか?剣狼さん?」
「そ、そんなことはない、りんに任せるぞ!わ、儂は安心じゃ!」
これ以上喧嘩されるのも困るので、ずるい言い方してしまいました…ごめんなさい剣狼さん
私はこの後ずっと後悔する事になる
どうして私はこの時シルさんにお願いしなかったんだろう。もしかしたら…結果は変わらなかったかもしれない、でもこの年は私は失敗だらけで…全部悪い事につながっていて…
「剣狼さん、いきますよ。」
「よし、どんと来い。」
「はっ!!」
剣狼さんの頭に魔力を打ち込む。
打ち込まれると剣狼さんが意識を失う
「シルさん、大丈夫でしょうか?」
「大丈夫、大丈夫。後は朝になったら起きてくるでしょ、心配だったら朝ごはんちょっと良いものにしてやれば文句もないでしょうよ」
「ふふっ、そうですね。そうします。」
「じゃぁ私たちももう寝ましょう。」
「はい。」
そうして剣狼さんに背を向けて馬車に向かうと…
「そうだ…わた…せねば…何処に?…」
「ん?剣狼?」
気を失ったはずの剣狼さんが起き上がっている
「娘!ネルは何処だ!」
「もう目覚めたの?」
「答えろ、ネルは何処だ!」
「ネルってセリスさんの飲み込んだ核でしょ?王都だから来た方向戻れば良いじゃない、あっちでしょ」
そうシルさんが返すと剣狼さんは飛ぶように走って行ってしまう。
「???なに???」
「剣狼さん。寝ぼけてしまったんでしょうか?」
「そう…かもね?一応ソフィーには言っておく?」
「そうですね、そうしましょう。」
剣狼さんの事をソフィさんに話すと
「もしかしてボケがはじまたのかしら?言ってみれば1030歳ぐらいになるじゃない?私と違って年をとるとか言ってたし、ヤバイわね。もしもの時は…私が見るの?え゛ぇ〜…って言うのは冗談として、頭にショック受けてなんか思い出したんじゃない?まぁ1人の方がなんとかできるでしょう?放っておいていんじゃない?」
と気楽な返答を貰った。たしかに剣狼さん1人…というか1匹の方が色々と効率良さそうではある
「それもそうね、りんちゃん寝ましょう、そのうちふらっと帰ってくるわよ」
「はい…そうですね、そうします。」
暗闇の中に消えて行ったほうを目を凝らして見るけれどなにも見えない
そして剣狼さんはそのまま私達の所には戻ってこなかった…




