5-12 王都脱出作戦 2
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーりん
お姫さまから借りている会話の核。
私なりに色々試して見たところ色々便利な核です。
まずは動物さんとお話が出来ます。と言っても何とでも話せるわけではなさそうです、心を通わせると言うのでしょうか、ワンコや猫さんお馬さんとは会話ができたのですが、虫や、植物などとはお話はできませんでした、ただ虫や植物も意識のようなあったかい感じや冷たい感じと言うのは何となく気のせいかもしれないけれど感じることができました。
あと念話が出来ます、近くの人と口を開かなくても会話ができます、パスを繋げば離れていてもお話できます、距離はしっかり測ってないので正確にはわかりませんが恐らく周囲5キロぐらいはいけるだろうと、これは私の魔力によるとソフィーさんが言っていました。
そして七星剣のアルテ、ほんと剣じゃなくて弓なのにと思うのですがこの弓の力も加わわって、一度パスを繋いだ人の方向と距離がわかるようになりました、これの力で1キロぐらいならパスをつなぐ事も出来ますし5キロくらいなら一方的になってしまいますがメッセージを送ることができます。また一箇所だけですがマーカーを付けるとどんなに離れていてもパスをつなぐことができます。
ソフィーさんや剣狼さんにはすごい!とか天才じゃーとか言われましたがなんとなく出来てしまったのでなんとも言えないのですが、以前核は人の思いや願いが力になった物と聞いたのできっとこの核の元になった人は淋しがり屋さんだったのでしょう。だから私と相性が良いのかもしれません。
「りん、大丈夫?ちょっと休んだ方が良いんじゃない?」
「こんなに沢山の人と一度にパスを繋ぐのは初めてなんで苦戦してました、だいぶ慣れてきたので大丈夫です。」
今、剣狼さんソフィーさんシルさん、アソーマ隊長さんとその部下の人達、総勢19名とパスを繋いでいる、私が必ず間に入る事になるのでめまぐるしい。
昨日剣狼さんが言っていた事もあるのでアソーマ隊長さん達の会話は聞き逃さないようにしないと…
「なんだったら俺たちのパスを一度切ったら良いんじゃないかい?気休めかもしれないけれど、どうせそばにいるんだ何かあったら言ってくれれば良いからさ」
ビルさんが私を心配してそう申し出てくれる
「ありがとうございます、でも大丈夫です。一度切ってもう一度繋ぐ方が大変なんで…」
「そうか…無理しないでくれ、いざと言うときは俺たちはもう繋がらなくなっても良いから隊長達を優先してくれな。」
「はい。」
ビルさんもジンさんも私を気遣ってくれる、念話の話を聞く限りにもみんな王様を助けるために必死だ、操られてるようには思えないんだけどな…
「王と合流に成功、操られているせいか抵抗が激しいため心苦しいが気を失ってもらった、これより脱出に入る。りん殿、剣狼殿にも連絡を!城からの脱出に成功したら再度連絡する、その際剣狼殿も離脱するようにと」
「わかりました。」
「剣狼さん、聞こえました?」
「了解じゃ、じゃあ最後少し派手にいくかのぉ」
剣狼さんに意識を送って気がつく、あれ?ソフィーさんがいない…どこ…えっ?
「シルさん、隣の部屋にある私のバック取ってきてもらえますか?」
「えっ、うん。」
「私が行こうか?」
「あの、えっと…それはちょっと…」
「済まない、シルさんお願いするよ、ビル、レディのカバンは魔法で詰まっている、男が軽々しく触って良いものではないのだよ」
なにを勘違いしてくれたかはわからないが良かったです。
シルさんが隣の部屋に行く、ソフィーさんが隠れて戻ってきたと言うことは何かあるのだろう。
「剣狼さん今どの辺りですか?」
「今は南西のあたりじゃな、工業地帯の入り口の辺りかの?」
「ジンさんビルさん、その辺りの地下道の入り口はどこにありますか?」
「その辺か、あまり重要なところがないからその近くとなると昨日使った工場の入り口か、さっき使った南の公園側の入り口だろうな」
「だそうです。どちらかから脱出の準備をお願いします」
「了解じゃ。」
シルさんが部屋に戻ってくる、
「私達も脱出の準備だね。」
そう言って私のバックを私に手渡すとシルさんも少し大きめのリュックを抱きかかえる。
私のバックの中身は触った感じ変わらない、シルさんの方か…
「良いぞ!城からの脱出に成功!全員離脱、王都から出るぞ!」
「剣狼さん脱出してください。」
「りんちゃん剣狼を迎えに行くよ!」
部屋を出ようとするとジンさんに呼び止められる
「待ちたまえ君達は先に出口に迎え、私達が迎えに行こう」
「嫌です!剣狼さんは私が出迎えるんです。」
シルさんが迎えに行くって言ったって事はきっとソフィーさんにそう言われたからだ、迎えに行かなきゃ!
そう思って言い返した時ふらついてしまう
「ほら、魔力を使いすぎて足がおぼつかないじゃないか、無理するなここから脱出しなきゃならないんだ」
「でも!!」
「剣狼の事になるとこの子テコとして動かないの、悪いけど迎えに行かせてもらわ」
シルさんが支えてくれる、体が軽い…ソフィーさんの力だ。
「わかった、一緒に行こう」
「よし、俺がおんぶしよう」
そうビルさんが言ってくれたが私は首を振る
「自分の足で歩きます。」
シルさんと手を繋ぐ体が軽いこれなら走る事だってできる!
ビルさんが悲しそうな顔をするのを見てジンさんが肩を叩いている、頼られなかったのが悲しかったのかな、悪いことしたのかな?ビルさんごめんなさい。
南の通路に行くと狼の姿になった剣狼さんが待っていた
「よし儂の背に乗れ、直ぐに出るぞ」
私が剣狼の背に乗ると…
ドーンと南の出入り口が土で埋まる
「これで追っては来ません行きましょう。」
後ろを振り返るとジンさんが紐を握っている
「コガラス、なぜあの2人も連れてきた!倒せとゆうたじゃろ?」
「それは…」
「ジンさんもビルさんもなにも悪いことしてないもの、そんな人蹴れないよ!」
「はぁーーそのセリフワッパにも聞かせてやりたいわい」
ふとシルさんの胸元を見ると核が色がウンウンと言わんばかりに色が変化する
「うるさい、あいつは別腹だからいいの!」
フーセさん、デザート感覚だったんですね、何でしょう、わかる気がします。私もフーセさんと話しているとポカポカしますしね。
「仕方ない他から出るしかないの、りんフラフラの様じゃの、パスはもう切れ、儂の背で休んでおれ」
「はい。皆さん、魔力が限界なのでパスを切ります」
そう伝えてパスを切る、どっと疲れが押し寄せる
「わざわざ言わんでもええじゃろうに、シル、お主も乗れ、りんが落ちん様に支えてくれ、行くぞ」
ジンさんとビルさんが戻って行った道を追いかける
他からってどういうことだろう?わからないけれど…疲れた…
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー剣狼
どうやらりんは意識を失った様じゃの、頑張りすぎなんじゃ、少し手を抜くということができんのかの?
「シル、しっかり捕まっておれよ」
工場の方から出ようと道を曲がり走る
「くそ、塞がれておる。」
きた道を戻り他に進む
「くそこっちもか」
遠くから地鳴りの様な音が聞こえる、困ったのぉ…あやつら他の道を塞いでおるな、しもうたのぉ…こんな事なら真っ先に出口から飛び出して逃げた方が良かったかの?
「こうなったら王都から出る出口から出るしか無いんじゃない?」
「その様じゃの…」
「ちなみに聞いていい?兄さん」
「なんじゃ?」
さっきのとこから出れた時どうやって王都から出るつもりだったの?
「どうやって?それは正面突破じゃが?」
「はっ?」
「その為に儂が頑張って兵士たちを疲れさせて動けん用に引っ掻き回したんじゃろ?」
「はぁーじゃぁどっちから出ても一緒じゃない、見直して損したわ」
「なんじゃ損したって」
「はいはいここで喧嘩しないで、フーセが具現化できるから、俺を囮に逃げろって言ってるわ」
「ワッパが?会話できるのか?」
「話できるの私だけみたいだけど魔力を込めている間は話せるようになったよ」
「そいつはワッパに期待するしかなさそうじゃの、いざと言うときは頼むと伝えてくれ」
「任せとけだってさ。」
「そう言われるとなんか不安ね」
「…ほんとだ…確かに…」
しかしまぁ地面をあれだけひっくり返せる力があるならば、それだけでも十分距離が稼げるだろう、ここは期待するしかないの
出口の光が見える
「出るぞ」
目が絡む、
歓声と拍手が起こる
兵隊達に囲まれると思っていたがそれはなかった様だ
出口ではアソーマ達が出迎えてくれた
「剣狼殿ご無事でしたか、ありがとう、我々も誰もかけることなく脱出に成功しました。」
どうやら儂の考えすぎであったか…
「おじ様は?」
「操られているせいか激しく抵抗されてな、気を失っている。済まない我々の中では魔力コントロールに長けた物がいないのでなシル殿、王に魔力を打ち込んでは貰えないだろうか、皆流石に不安があり出来ずにいるのだ」
「…わかりました」
横になった王にシルが駆け寄る
「おじ様痛いかもしれないけどごめんね」
そう言って頭に手を添えると、
「はい。お疲れ様でした。ルルも来てると思って待ってたんだけどこれで全員だったか…待って損したわ」
全員が出口があった丘の上を見上げる
ファル…
「じゃあもういいわね。」
ファルが手を叩くとアソーマ達の動きが止まる
「全員操っておったのか?」
「操る?あぁ町の人たちにはね暗示をかけてあるの、合図を送るとねこの通り、私の言うことを聞くようになるの。」
「おねぇちゃん!」
「もうシル、自由にさせてあげてたのに、もう閉じ込めなきゃいけなくなったじゃない。悪い子ね」
しもうたのぉ、一度大丈夫と思ったのが裏目にでたのぉ…こやつら置いて駆け抜けたらよかったのぉ
りんは気を失って念話が出来んしな…
何とかシルを背に乗せて逃げるしかないかのぉ
シルの側には横になった王とアソーマ。素早く動けばりんが背から落ちる、仕方ない
「フーセを呼べ!」
「フーセ!お願い!」
シルの手から光が溢れた。




