5-11 王都脱出作戦 1
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーシル
「モグラさんはこちらにはこないのですか?」
アソーマ隊長に聞く
「あぁ、今王都迄の穴を開けている最中だ君達が彼に会えるのは王都脱出の時かな?」
「あのここにいる全員とパスを繋ぎました、出来ればモグラさんともパスを繋ぎたいのですが?」
「ふむ、とはいえ今急ピッチで作業中だからな、基本的にはこの後私が彼と共に場内に侵入するから私と繋がっていれば問題ないだろう。」
「そうですか…」
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昨夜寝る前に剣狼から私とりんとソフィに話があった。
「アソーマを完全に信用するなよお主ら」
「操られてるかもしれないってこと?」
「その可能性はゼロでは無い、そうでなかったとしても王を救うためなら儂らを切り捨てる可能性もある」
「流石にそんな人では…」
「ええか?優秀な奴ほど物事に順番を付ける、何が最優先かを決めておくんじゃな、心に迷いが出来ぬように。王の命と我らの命とを天秤にかけた時あやつは間違いなく王を選ぶと言う事じゃ。下手したらその次は嫁さんでその次はここにいる仲間で儂らなんて最後も最後よ」
「まぁ言ってることはわかるけどさ」
「なに、あやつを裏切れと言っているのではない、あやつに頼らずとも逃げ道は自分で確保すると言うことじゃ、今のうちにコガラスこの地図が正確か確かめてきてくれるか?儂らではどうも目立ちすぎる」
「まぁ、フクロウ使いが荒いですこと、いいわ。確認しましょう。」
「コガラスの確認が終わったら、2人とも地図を覚えよ、とりあえず最低脱出経路は覚えろよ。」
「そうやって怪しむなら手伝わなきゃ良いじゃない?」
「少なくともアソーマが操られてない確証を得たい、お主らはあやつの出したハーブ入りのシチューを食ったのであろう?それがもし逆に探知するものだったとしたら?」
「そんな事言うならここで捕まえたらいいじゃん」
「それも…そうか…考えすぎかのぉ?」
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そんな事もあり、モグラさんと会えれば安心できるかと思ったのだけれども…
「こちらにこの2人を置いていく、ビルとジンだ。俺の直属の部下で腕っぷしはそれなりに頼りになるぞ、体力もある。好きに使ってくれ」
「よろしくお願いします。」
「ビルっす。」
「ジンです。なんでも言ってください、こんな可愛い子の命令ならなんでも聞いちゃいますよ!」
「ははっ」
セリスさんぐらいの歳だろうか、どっしりとしたビルさんと性格が軽そうなジンさん。
「お主らこの娘らに手を出したら咬み殺すからな」
狼の姿で朝食が終わった剣狼が部屋に入って来る。
「もう、剣狼さん?食べすぎたら動かなくなりますよ?」
「大丈夫じゃ、今日は走りっぱなしになるからのぉ昼抜きの可能性も考えて昼の分も食っておかんとな。」
「あと隣の部屋に服は用意してあります。」
「うむ。さて隊長さん、確認じゃ、儂はこれより東門に姿を現してそちらに人を集める。まぁ一時間後ぐらいが人の集まるピークとして状況を見て他の門を周りつつ引っ掛け回す。そのピークに合わせ場内に侵入して王を奪還。それでええか?」
「ええ、ピーク時は教えてください、りん殿からの通信と共に侵入します。逆に王を確保すると同時にそちらにも通信を送ります、そうしたら剣狼殿も脱出に入ってください。脱出時は本通路以外は塞ぎながら脱出すると言うことでお願いします。」
「よかろう。ぬかるなよ!」
そう言うと剣狼が隣の部屋に入って行く
「りん、ボタン頼む。」
なんとも締まらなかった。
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(それじゃ、始めるぞぉー)
東門で剣狼が動き出した、基本的にどう動くかは剣狼任せである、ダガーになったソフィーを腰に携えているので昨日よりは楽だろう。
私はと言うと補給係と言っても実際のところする事はない
りんちゃんの隣に座っているだけである、まぁ剣狼が喉が渇いたら水とか持ってくのかな?
昨晩の話もあって、あまり知らない男の人がいると不安になる。この人たちに襲われたら正直ひとたまりもないだろう。
「ところでシルさん、フーセさんの核が激しく色が変わってますけど…」
「あっすっかり忘れてた。何よ?フーセ?」
(忘れておいて何よはねーだろ!)
「しょうがないじゃないドタバタしてたんだから」
「あの?シルさん?」
りんちゃんが不思議そうにこちらを見つめている
「ごめんごめん、フーセの事すっかり忘れてて」
「お話しできるんですか?」
「うん、魔力を込めながらなら会話ができるみたい」
「私も良いですか?」
「うん、やってみて」
りんちゃんが魔力を込める…
「フーセさん!フーセさん?おーい?あれ?何かやり方違うんでしょうか?」
「あれ?なんで?ちょっと貸してね」
魔力を込める
「フーセ?」
(おう、聞こえるか?)
「うん、聞こえる。」
(もしかしてシルしかダメなのか?そこのにいちゃん達にも試してもらってよ)
「あのジンさん、ビルさん、この玉に魔力込めてみてもらえます?」
「なんだい?これに魔力を込めたら良いんだね?ちなみにこれはなんだい?」
「えっと…通信する魔道具みたいな?魔力を込めるとお話しできるはずなんですが…」
まぁ詳しく説明するのもややこしいのでいいか、嘘ってわけでもないし
「オーケー、シルの頼みなら僕が断るわけないじゃないか」
「えっ、ええお願いします。」
ジンさんが魔力を込める…
「聞こえるかいジンだ!応答したまえ…こちらジンだ!うーん、シルダメのようだ、ダメとは思うけどビルやってみなよ」
「わかった、ふん!ダァーーーーーめなようだね」
「そうですかありがとうございます。」
フーセの核を返してもらいもう一度魔力を込める
(あれだなお前しかダメなのかもしれないな)
「なんでよ?」
(長く魔力こめてるのお前だからとかか?ワカンねぇけど…)
「なによそれ…」
ため息をつく、りんちゃんに悪いことしたな
「なんか私の魔力じゃないとダメみたい…ごめんなさい、りんちゃん。」
「そうですか…残念です。お話ししたかったな…あっそれでフーセさんはなんて?」
「あぁそうだった聞いてなかった、どうしたのよフーセ」
(どうしたもこうしたもねーよ、王都脱出するなら俺が囮になれば剣狼に任せりゃ逃げれただろう?俺なんていざとなりゃ核に戻ればすぐに退避出来るんだし)
「忘れてたんだからしょうがないでしょ!だったら出てきてそう言えばいいじゃない!」
(俺だって勝手に出れたら苦労しないわ!勝手に出れねぇからそう言ってんだろ)
「だってあんた勝手に出てきてたじゃない!」
(出れねえよ、お前が…もういいよ、ともかくだ、剣狼が言ってた通りアソーマのおっちゃんには気をつけろ、最悪俺を呼び出して囮に使えいいな。)
「どう言うこと?」
(今そこの2人に魔力入れてもらってわかったんだけどうまく言えないけどなんか違和感があるんだなんでだ、操られてる人の魔力にそんなのが出るのかはワカンねぇ、ファル姉は普通だったし、だけど一応気をつけた方が良さそうだぞ)
「うんわかった」
「フーセさんはなんて?」
「私が忘れてたことに怒ってる、忘れんなーだってさ」
「私も気をつけて見るようにするんで何かあったら教えてくださいね、フーセさん」
フーセの核が色が変わる、頼むよ、ってところかな
その時剣狼から通信が入る
(よしー団体様のご到着じゃあ!アソーマとやらに行けと伝えよ)
(全員と繋いであります)
(こちらアソーマ。では場内に侵入する。第2班は退路の確保、第1班は俺に続け)
(繋がっとるんじゃよな?南東の教会の辺りじゃこのまま南の方に抜けるから水を用意しといてくれるか?)
(えっと南の出口は…南の真ん中に噴水のある公園の噴水脇に水用意して起きます)
「南の公園ね、直ぐに用意するわ」
「シルさん、私が置いてきましょう。私なら五分もあれば置いてこれる」
「あっじゃあお願いします。」
(五分後には用意できそうです、少しずらして向かってください)
(了解じゃ)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーソフィー
兄さんがここまで動けるとは思わなかった
いや、動けるんだろうとは思うが普段基本的に丸くなって寝ている姿しか見ていないので、こんな事にと言うと隊長さん達に失礼かもしれないが、あまり兄さんに利益になる話では無いのにこんなにも動くというか頑張るとは思わなかった。
「兄さん、何をたくらんでいるの?」
「たくらんでいる?何をじゃ?」
「わざわざ兄さんが手を貸すなんて」
「あぁそのことか。このまま逃げた所でどん詰まりになるのは見えているからのぉ、簡単に追いかけられんように引っ掻き回さ無いと行けないと思った、そこにこの話が来たからついでじゃよついで。」
「そんな簡単に答えるってことは嘘でしょ?」
「そう言うと言うことは儂が教えんと言う事までわかっておるんじゃろ?まぁ説明が面倒なだけじゃ暇じゃろうしヒントをやるから自分で考えい、ネルの狙いは何かを考えてみぃ」
「ネルの狙い?」
「お!バインバインのねーちゃんが来おった、ちょいと忙しくなるから後は自分で考えい」
ネルの狙い…ネルと言うと言うことはセリスちゃんが完全にネルになっていると想定して考えると言うことね…
まずは目的は国の建国と言うよりは世界の統一。
そのための足掛かりになるこの国をまとめたい。
王を生かしたまま、2番目の位置につき王様を操ってこの国をまとめようとしている、これはいらない混乱を増やしたく無いからかしら?
この国をまとめるためにはまず反抗勢力、まぁルルちゃん達をなんとかしないといけない。その割にはだいぶ泳がせてる感じがあるわね、なぜ?
この国の人達を全員支配下に置く方が優先だった?
うん、そうか、反抗勢力を束ねてもらって一気に支配下に置いた方が楽だから、小さな小競り合いを何回もするよりまとめちゃえみたいな?かもしれないわね。
シルちゃんの事は?なんでこの国に連れ戻して置いたのに何もしないの?セリスちゃんとファルちゃんの意識が残っている?まぁそれも否定できないけどそれが無いとしたらシルちゃんが必要?シルちゃんが出来る特別な事…シーバード山を消したあの力かしら?今はその能力が無いから?でもフーセが身代わりになったのは流石にわかってるわよね?あっもう一度シルちゃんを核にしようとしてる?ついでにシルちゃんを囮にして反抗勢力を呼び出して…一網打尽にする。
今私たちが泳がされているのはルルちゃん達が姿を出すのを待っているって所かしら?だとしたら脱出したところでどの道出口でお出迎えがいっぱいって事かしら?もしくはアソーマ達に拘束されるって事かしら?
にーさんが噴水のある公園に行くと水の入ったボトルを掴んでゴクゴクと一気に飲み干す
「なんとなくわかったわ、それでどうやって脱出する?」
「儂の見立てではシル嬢ちゃんならばお主の力も加えれば見張りの2人ぐらいならば片づけられるじゃろう、お前こっそりあやつらのところに戻って2人とともに一時間後ぐらいにこの辺りに戻ってこい、細かいことはりんと合流したら通信でやり取りする。」
「何か手があるのね?」
「まぁなんとかなるじゃろう。」
「意外と考えてたのね見直したわにーさん。」
「知らんかったのか?儂は賢狼じゃよ?」
「はいはい、頼りにしてるわよにーさん。じゃあ私行くけどよろしくね」
「待て、コガラス、お前の分の干し肉は置いていけ、授業料じゃ」
「目ざといのね」
「どっちがじゃ」
まぁいいわ、りんのところに行けば追加分の干し肉あるだろうしね。
ブックマークありがとうございます。お盆はなにげに忙しく更新が滞ってしまって申し訳ございません。




