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剣狼の願い  作者: クタクタニ
姫の願い
69/83

5-10 後手の画策

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーイルナ

フェルトに着いてから姫様は休む事なく動き回っている。


ユウヒ殿やカイ殿との話し合いに始まり、関係各所への挨拶回り、イカルガとボスコミュールを工房に預けて研究させ…と色々と同時進行でやっているので私にはもう何が何やらと言ったところだ。


カイ殿がマネージャーとなり姫様を完全にバックアップしている。


自分があの立場になったとしたらゾッとする。

相手は資産家や貴族ばかり、扉の外で聞こえてくる話を聞いてるだけで具合が悪くなりそうだ。


「すいません、アストレア家から姫様宛に手紙が届いています、中は話し合い中のご様子なのでお願いできますか?」


「ええ、預かりましょう。」


手紙の裏手を見る。りんからの手紙の様だ。何か有ったのか?いずれ手紙が届くまでに数日かかっているはず、至急の内容かもしれない。


「至急の案件にて失礼します。」


「どうぞ。」


カイ様が入り口まで来る


中では姫様と貴族の方がにらめっこをしている様だ


「りんよりの手紙が届きました、緊急の可能性もあるので姫に。」


「承りました。」


そう言うとカイ殿が直ぐに手紙を開ける

こう言うのは姫様が開けるものでは無いのだろうか?


「剣狼様を連れてりんが王都に向かった様です。これはこちらも更に忙しくなりますよ。」


そう小声で言って扉を閉める


私達に配慮してくれたのだろうか


中からガタと音がすると姫様の声が聞こえてくる


「ごめんなさい、ジビル卿、貴方と交渉している時間は無くなった、即断して、私に着くのか静観するのか、返事を」


「なっ何を急に」


「皆様の面子を重んじてこうやって挨拶回りをしているところですがどうやら時間切れになりそうです、これから直ぐにでも動かねばなりません。この条件で乗らないなら仕方ありません、諦めますと言うことです。」


「イヤイヤ、そんな簡単に決めれることでは」


「そうですか、それでは失礼いたしますわ。カイこの後のゴーダス卿との面会任せてもいいかしら?」


「かしこまりました。」


「まっまて、わかったその条件でいい。」


「あら?ジビル卿。その決断力、頼りにさせていただきますわ」


姫の笑顔が見える様だ…


少し時間を置いて姫とカイ殿が出てくる


「手紙の内容は聞いた2人とも。」


「はい。」


「最悪の事態に近づいてしまっている、2人は直ぐに王都に向かってモグラと合流して。何とかお父様を奪還する事を考えてちょうだい、もちろんシルやりんの事もね。あの子達には悪いけどお父様の奪還が成功しないと私は大きく動けない、頼める?」


「しかし姫の警護は…」


「大丈夫、ここからは早速未来の旦那様にも働いてもらうわ」


「ならば言う事は有りませんね。直ぐに準備して本日中に王都に向けて立ちます。」


マーダン隊長が敬礼するのを見て慌てて自分もする。


マーダン隊長に続いてその場を離れようとすると姫様に手を掴まれる


「イルナ、チャンスよ!ふたり旅。」


姫様が私を引っ張って小声でつぶやく


「なななっ何を!」


「ダブル結婚式しちゃう?」


「姫様の隣で私を辱める気ですか、やめてください」


「あら?結婚する気はあるのね」

クスクスと姫が笑う


「姫様いじめないでください。」


「ごめんごめん、怒らないでイルナ。でもチャンスよ!押し倒しちゃいなさい、あいつ鈍感だからはっきり言わないとわかんないわよ、頑張って。」


そう言って私から離れる


「王都の東の森にモグラの連絡員がいるはずよまずはそこに行ってモグラと合流してちょうだい。」


「はい。」


マーダン隊長を追いかける


「どうした?姫はなんと?」


「がんばれと激励の言葉をいただきました。」


「そうか、私がついている2人でがんばろう。」


「はい、覚悟してくださいね」


「?何をだ?」


「なんでもですよ」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーールル

なんで動いちゃうかなぁ〜その為にソフィを付けたのに…

剣狼がいると強気になっちゃうのかしら?あの3人があちら側に渡ってしまうとさらにこちらが不利になる。


「カイ君、一度現状をまとめましょう、ユウヒ、貴方も聞いて。」


「まず私達の当面の着地点は私が国王になるところ。その為の問題点についてね。」


「1つ、現国王が操られ実質セリスとファルが国を動かしている。現国王が生きている時点でこのまま王都を攻めた所で私は謀反を起こしたものとして次の国王にはなれなくなる可能性がたかい。新しい国にはしたいけどムスシタナを滅ぼしたい訳じゃないからよ。だから王の奪還がまず必要となる。盾にされたらそれこそ手も足も出ないからね。


2つ、戦力が足りない。王都の兵士たちはあちらに洗脳されて全てが敵に回っているものだと考えなければ行けない、少数精鋭で城に潜入しセリスとファルをなんとかしないといけない。理想は捕縛して変化の核でお腹から操りの核を取り出す。封印ないし、できる事なら破壊なんだけど、正直なところ難しいかなぁ。

とにかくあちらの戦力を何処かに集中させて城を出来るだけ空にする、その上でセリスとファルを抑える。


んで3つ。その後の処理ね、洗脳が解ける場合と解けない場合がある。ネルをなんとかできたら洗脳とか解けてくれたら良いんだけどこれはやってみないとわからない、頭に魔力ぶち込んだら良いんだけど、それって市民を攻撃してるみたいじゃない?あとその他諸々の事後処理がめまいね。大きいところでこの3つ。

私を王に認めさせるのも同時進行でやっていかなきゃいけないけど、まぁそこはスマート社とファイブアイズ商会から力を借りていくしかないわね。他に何かある?」


「第2、第3を動かさせるともなるとそれはもはや戦争ですよ?近隣諸国には何というです?」


「そうかーそう見えるかー違うのよ軍事訓練でした…ってのは?」


「それならそれで、なぜ前もって話がなかったかと叩かれますよ?」


「よねーダンナ様?なにか良いアイデアないかしら?」


「姫さまお戯れはおよしください。」


「恥ずかしがり屋ね。ユウヒは」


「そうですね、今まで戦争以外で全部隊が出たのは魔獣掃討の時と病が全土に広がった時ぐらいですかね」


「そう言う噂を流す?ダメね、確認されたらすぐわかるし、実際魔獣を引っ張ってきたり、病を流行らせる訳にもいかないわね。」


「懐まで入り込めないならば出てきてもらうと言うのはどうです?」


「どうやって、ノコノコ出てこないでしょ」


「姫様の結婚式をここでやってしまうんですよ。更に新女王としての名乗りをあげる、あちらには招待状を送りましょうノコノコきてくださいと。」


「いや、流石に首都ではなくここでやるのは他の国への示しがつかないのではないか?」


「そこはあれですよ、姫様の思想もともに発表、スマート社と国のプロジェクトです。なるほどそう言うことかとなるんじゃないですかね?どう思います?」


「悪くないかもね、貴方達は世界へ向けての言質もとれて安心ということね。」


「そうですね。それもあります。」


「少し煮詰めないといけないけど、流石カイ君。頼りになるわ。」


「私もすでに全のチップを出させられていますからね、勝率は上げますよ。」


「ともあれ、現状はモグラとマーダン、イルナ達の成功を信じるしかないわ。」


「そうですね、成功を信じて我々はやるべき事をやりましょう。」


人の力を信じる。聞こえはいいが、言い方を変えたら他人任せ。でも失敗したら自分が滅亡。ただ今打てる最善の手を打っているつもりだけれど…不安はぬぐえない。


「たのむわよ…みんな…」


気持ちを切り替えて次の交渉へと向かう


今はやれる事をやるしか無いのだ。




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