5-6 おしゃべり狼とドタバタ娘達
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー剣狼
「まずは基本からいくかの」
儂を兵士達が取り囲む。セリスと共に訓練していたもの達だから2番隊のようじゃな
「片刃は勿論じゃが両刃であろうと剣には裏表がある。作り手によって違うが目印になるものが必ずあるはずじゃ、わからぬ奴は店のものにでも聴くとええな。ちなみにこの剣は…」
殺気立った兵士の1人を切りつける
「こちらが表で」
剣をかえし、隣の兵士を切り上げる
「こちらが裏じゃ」
「うっ、うぉおおお!」
周りにいた兵士達が剣を振り上げる
「せっかちじゃなまだ始まったばかりとゆうのに」
横薙ぎに剣を振るい間合いを取らせる
「更に剣と言うより刃物全般じゃの、こうやって押し切る物と引き切る物とがある。これは押し切る剣じゃな、おっ?この剣はなかなか考えて作ってあるの、裏が引き切るように出来ておる。珍しいの。ならばこの剣での戦い方は1の閃で切りおろし、2の閃で引き切る。こうする事で剣の切れ味が落ちにくくなると言う事じゃな。」
講義しながら次々と兵士達を切っていく、
「ほれ、後ろの衛生兵、講義の邪魔になるから倒れてるものをよせい」
兵士達は動かない、まぁ下っ端達じゃ儂の講演に聞き惚れても仕方ないの
「しょうがないの、ではこちら側に」
自分を囲む円の反対側に向かう
「剣の持ち方じゃな、慣れてない奴は気合いを込め過ぎて剣を力強く握るものが多いがそれはいかんぞ、無駄な力は動きを鈍くする。」
「ダァーーー!」
「お主話を聞いておらんのか?そうやって力を入れておると剣先が固定されてどう切るか一目瞭然になる」
兵士の剣を紙一重でかわし蹴り飛ばす
「ほれ、もう一度チャンスをやろう」
「クソが!なめやがって!」
「はぁーお主は素振りが足らんようじゃな、良いか切りつける瞬間だけ力を入れるんじゃ、毎日最低千回は素振りせい。」
剣を握り直し塚で首元に衝撃を与える
「そもそもお主ら素振りを何のためにやるか分かっとるか?楽に剣を振る振り方を学ぶためじゃよ?ただ降ってるだけじゃ意味ないんじゃよ?無駄な力を入れずに相手を切る、わかるか?」
「いやいや、新米達に素晴らしい講義、ありがとうございます。お前たちちゃんと聞いてたか?」
「おす!」
「この武人がおっしゃられてた事は基本も基本、言うまでも無いと思っていた事だがお前らしっかり覚えろ」
「おす!」
「さて、基本はそろそろ終わりにしていただいて応用編と参りませんか?御武人。名を聞いても?」
「かっかっか、ロウじゃ。2番隊部隊長のヒル何とかじゃったか?」
「今は2番隊隊長です、ヒルロッテと申します。」
「そうじゃそうじゃヒルロッテじゃ、良かろう。もう少し基礎を話そうと思ったったがその辺も交えていくかの。」
「お前らは黙って見ていろ、では参りますよ。」
ヒルロッテが剣を抜く
「さて、続きじゃの、相手を見極める講義といくかの。隊長さんの剣は片手片刃の剣、この事からまずは速度に重視した剣士だと伺える、つまり」
ヒルロッテが一瞬で懐に飛び込んで切り上げてくるのを剣で抑える
「黙っていても相手が攻めてくると言う事じゃな、まずは初撃を止めねばならん、構えの時点で右手に剣を持ち右足を引いておった事から手足右利きという事、まずこの時点でスピードを生かした攻撃をするとなると自分の左にしか攻撃が来ないと判断できる。そうなれば剣を下ろすタイミングを合わせるだけじゃ」
剣をはじきあげ間合いを取らせる
「もう一度来るか?」
「いえ、別の手でいきましょう。」
「なんじゃ同じできたら初手で切り返す方法を講義しようと思ったったのに」
ヒルロッテが中段に構える
「流石隊長わかっておる、基本の構えじゃがこれが一番読みにくい、この構えならば相手はどこに攻撃が来るか動かねば分からん。」
ヒルロッテは動かない
「なんじゃ、こんのか?ならばこうしようかの?」
ジリジリと間合いを詰める
「ここくらいかの?おそらくかの構えを取った時の隊長殿の間合いのギリギリ外がここじゃ、間合いの測り方はーー」
ヒルロッテが構えた剣を真っ直ぐにのばし、喉元を狙って来る。
「まぁ勘違いされがちじゃが間合いは届かないと言う意味ではないからのぉ、自分が受けずに避けられる距離というやつじゃな」
一歩下がり伸び切った手を剣の面で叩き剣を落とさせる。
「隊長殿は相手に合わせ過ぎじゃよ、儂の講義に付き合っとるからそうなる」
「はっはっはっ、まったくですね。いや、もっと聞きたくなってしまう。基本からやり直しですね。」
「ヒルロッテ!あんた何やってんの?バカなの?そいつの言うとおりよ、なんで同じ土俵で戦ってんの、しかも負けるとかほんと有り得ない。私たちの任務はそいつを捕まえる事よ?わかってる?」
「シルビアか」
「おお!バインバインのおねぇちゃんがきたのぉ?」
「3番隊隊長、シルビア・ノックスよ」
「今度は嬢ちゃんが相手か?」
「いえ、ここにいる全員よ?第2第3小隊構え!」
「次は対魔術戦闘の講義か、だいぶ予定より早いがまぁええじゃろ」
「ヒュンゼル!!!」
無数の氷の刃がこちらを目指して飛んでくる
「では第2部じゃな。」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーソフィ
「剣狼さん大丈夫でしょうか?」
りんがつぶやく、ほんとにーさんのこと大好きねこの子は…
「大丈夫よ、むしろ1人の方が楽なんじゃ無いかしら?最悪自分1人なら王都から逃げるのも楽勝でしょうよ」
「そうなんですか?」
「そうそう、剣狼を唯一心配するとしたら餌でつられて罠にかかるぐらいのものよ」
「ふふふっそれは心配ね」
ドーンと東の方から煙が上がる
「今はあそこら辺にいるみたいね」
「東の広場の辺りかな?」
「だだだだ大丈夫でしょうか?」
「大丈夫大丈夫、追っ手にあんな大技使わせるぐらいだもの、完全に挑発しまくってる証拠よ。遊んでるわね、にーさん。さて、あっちに完全に集中してるわね、今のうちに少し場所を移しましょう。流石に風を避けれる所には移動したいわね、寒いったらありゃしない。」
「賛成〜さむーい」
「私はシルさんに抱かれてソフィを抱えてるんであったかいです。でも風邪を引いたら大変です。移動しましょう。」
私がマントから出て辺りを確認する。
「大丈夫そうね、ゆっくり移動しましょう。
辺りを確認しながら場所を探す。
「あっあそこの馬小屋なんてどうです?飼葉もあるから暖を取れると思いますけど。」
「あそこ、兵士達の馬小屋よ?流石に危ないんじゃ無い?」
「そう?灯台下暗しっていうじゃない?姿も消せるし大丈夫じゃないかしら?」
「馬の事なら自身が有ります!ねっシルさん!行きましょ」
テンションの上がったリンに引っ張られて馬小屋というか厩舎に入る。
中に入るとほとんどの馬が出払っているらしく奥に一頭を残してガランとしていた。
「まぁそうでしょうね、外壁の外に騎馬隊がいたし」
「私、奥の子に挨拶してきますね!」
てってってとリンちゃんが走っていく
「はじめまして、貴方お名前は?えっ!?シルバーさん?」
そうか、会話の核を使えば動物とも話せるんだっけ
「この子、イルナさんのお馬さんでしたよ!ご主人様はまだ戻れないけど元気ですよー私はご主人様のお友達です。」
楽しそうにシルバーと会話するリンちゃんを見ているとシルちゃんが私の隣にくる
「急に疑問に思ったんだけど、ソフィーって他のフクロウとお話しってできるの?」
「感情みたいなのはわかるけどね、会話ではないわね。」
「そうなんだ、じゃあさぁ会話の核って会話するというより思いを言葉にしてるのかな?」
「そうなるかな?」
「はい、良いですよ、いっしょに飼葉も新しくしますね。」
せっせとシルバーのお世話を始めるりん。働き者だなぁ
「はーい今行きますよーえっ?うんわかった。シルさん、ソフィさん誰か来るそうです。隠れましょう。」
外に気配は感じないけど、この馬の方が敏感なんだろうか?
シルバーの後ろに行きマントで姿を消す。
馬の真後ろにいるというのもなかなかに緊張するものだがリンちゃんが大丈夫と言うからにはそれを信じるしかない
出入り口を3人で見つめる…が…誰もこない…
「シルバーの勘違いじゃない?」
シルバーがなく
「来たって言ってます。」
「そう言ったって誰も来てないわよ?」
ガコっと音がすると通路の一番奥の床が盛り上がる
…地下?隠し通路?
シルちゃんとりんちゃんは一生懸命口を押さえている
ゆっくりと誰かが登って来た。




