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剣狼の願い  作者: クタクタニ
姫の願い
62/83

5-3 嘘の自由か真実の束縛か

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーシル

私が王都に戻ってから一週間が過ぎた。


お姉ちゃんやセリスさんから聞かされた話、つじつまが合ってるようでやっぱり違和感を感じる。

ただ2人は私を気遣ってくれてよくしてくれている、私が知っている2人だった。そのことで気のせいなのかなと言う気にもなってくる、今までの事は忘れてこのままの生活が続いていくんじゃないかと思えてくる。フーセを元に戻す方法も見つけてくれて前みたいに…


リンちゃんともまた交信した。

こちらの状況を伝えた、大丈夫だよ。と…あちらはルルちゃんとフージのところで無事合流できて、ルルちゃん達はそのまま次の場所に移動したそうだ、行き先を伝えるなと言われたそうでリンちゃんが私に謝っていた。操られてるかもしれないと思っているのだ、仕方ない…仕方ない。

リンちゃんはそのままフージの所に残って秘書官?になる勉強をするそうだ、ルルちゃんとお料理対決したらそうなったとかなんとか…ピンチなのか余裕があるのかほんとルルちゃんはわからない。定期的に交信する約束をして通信を切る。


私はどうするべきなんだろう?

王都を逃げ出してまたリンちゃんやルルちゃんに合流するべきなのか?でも逃げ出す?何のために?ここで私は襲われているわけでも無いしむしろ良くしてもらっている。ご飯はあるし毎日お風呂にも入れる。むしろここを出て他の人に迷惑をかける方が良くないんじゃないか?


「ねぇフーセ、私どうしたらいいんだろ?」


フーセの核が色々色が変わる


「わかんないよ、わかんない。」


ポタポタと涙が流れる、何で泣いているのか自分自身でもわからない。

フーセの核が紫色になる、オロオロしてる?


私は泣いてるのをフーセに見せないように両手で握りしめる。


「シルーナクナー!何で泣いてんだよコイツ!」


フーセの声が聞こえる


「えっ?」


手の中からフーセの核を出す


「フーセ?」


核に話しかけるが何も聞こえない、空耳?

もう一度両手で握りしめる


「フーセ!」


何も聞こえない、やっぱり幻聴?幻聴でフーセの声が聞こえるなんて…


ブンブンと首を振る


でもはっきり聞こえた気がする


フーセの核は次々に色が変わっていく、何やってんのこいつ?前にこれやってたときは…会話の核に魔力を込めようとしてた時だったかな?魔力…


もう一度核を握りしめて魔力をフーセに込める

「フーセ!なんか言って」


「聞こえる?聞こえますかぁー?あーあーあー」

「フーセ!聞こえる!聞こえるよ!」


「おお!ようやく伝わった!突然泣き出すからどうしたかと思ったぞ」


「うん、フーセ、良かった。」


「おい、また泣いてんのか?握られてっとなんも見えないんだよ。」


「こうしないと話せないからしょうがないでしょ。」


「魔力を込めてくれている時、声が相手に伝わるんだ、ようやく話せるぜ。」


「だったら、そう言っておいてよ、トルダワでみんな話したって」


「魔力込めろって言ったろ?」


「そんなのじゃわかんないでしょ、いつも重要なとこが抜けてるのよ!バカ!」


「わかんねー方がバカだろ!バーカバーカ」


「ほんと腹立つわね!こうしてやる!」


フーセの核を繋いだ紐をブンブンと振り回す


「参ったか!」


「気持ち悪い、やめろよバカ」


「そうか、こりてないか…」


「わ、悪かった、俺が悪かった!だからやめてくれ!」


「よし、勘弁してやる。感謝しろ」


「ふぅ、助かった、それで?なんで泣いてたんだよ」


「なんでもない、もう大丈夫だからいいの。それよりあんた元の姿には戻れないの?」


「ん?あぁ、多分戻れるけど魔力がかなり必要みたいだ、リンとファル姉からも魔力貰ったし、今やったら5分ぐらいかな?多分シルがぶっ倒れるだけ魔力込めてくれればもう2分ぐらいは伸ばせるかも。やって見るか?」


「やってみて」


そう言うと核の光が飛び出す


「よ!久しぶり?」


久々にフーセの顔を見て私は…全力で蹴っ飛ばした。


「心配したんだから!このバカ!!!!」


フーセが吹っ飛ぶ


「なんでだよーおぉぉぉぉーーー」


何ヶ月間か我慢していた鬱憤が爆発してしまったようだ、手加減を忘れていた。


「しまった、やりすぎちゃった。」


フーセが飛んで行った方向から光が飛んでくると、そのまままた核に戻っていく。


すぐに魔力を込める


「ごめんごめん、思わず加減忘れちゃった」


返事はない、どうやら目を回してしまったようだ、しょうがないなぁ〜久々に足を振り抜いたらお腹がすいてきたし、ご飯でも食べて待つとしますか。


パン屋さんに向けて足を向ける

街を歩いていると声をかけられる


「おっシルちゃん元気でたか?」


「あっ親方さん!何言ってるんです?私はずっと元気ですよ!」


「ん?そうか落ち込んだ顔しとったと思っていたが思い違いだったか」


以前の潜伏騒ぎの時、即座に地下道を塞いだせいか足がつかず、抵抗もせずに店を見せたとこにより大事に至らなかったファイブアイズ商店は変わらず経営を続けている。

カイさんの事を話そうとしたら、何も言わなくてもあいつがどこで何してるかなんてうちの帳簿が教えてくれるからな。だそうだ。そんなものだろうか?


「はい、心配していただいてありがとうございます。」


「あーそうだ、ファル様に会ったらご注文の品は予定通りに揃いそうだって伝えてくれるか?」


「ご注文の品?」


「あぁ、なんか希少なもんをいっぱい注文もらってな、全部揃うか微妙だったんだがなんとかなっちまってな。来月頭には揃いそうだ、なんか急いでるみたいだったからな」


「わかりました、夜には合うのでその時にでも伝えておきますね」


「ありがとう。今度うちにもお茶しによってくれ」


「はい。」


そう言って親方さんと別れる

お店のみんなが無事で良かった


パン屋さんに隣接するカフェでお腹を満たして再びフーセの核に魔力を込める


「目が覚めた?」


「目が覚めた?じゃねーよ!いきなり殺人キックってどう言う事だよ!?意味分かんねーよ!」


「ごめんごめん、なんか思わず。」


「思わずで蹴るなよ、暴力魔人!こっちが思念体じゃなかったら死んでたぜ!」


「あんた強くなったっぽいからさ、トルダワの森ひっくり返したりしてたじゃない?だから大丈夫かなって」


「まっまぁな!あれくらいはわけないな」


ほんとちょろいわこいつ。


「ねぇフーセ、お姉ちゃんやセリスさんの事どう思う?」


「ん?どう思うって?2人が言ってた事か?」


「うん。」


「うーん、本当っぽいけど嘘っぽいかな」


「どっちよ?」


「わかんねぇよ、話してる限りには悪い感じはしないしさ、魔力の感じも変わんないし…嘘か本当か確かめたいのか?」


「本当ならそれに越した事ないんだけどね、嘘だったらそれ問い詰めたらどうなるんだろうって思うんだよね」


「嘘だとしたら牢屋に閉じ込められるとか?洗脳されちゃうとか?」


「そうなっちゃうでしょ?」


「つまりはあれだろ嘘かどうか確かめて嘘なら逃げれれば良いって事だろ?」


「まぁそうか…」


「まぁ俺も五分具現化したところでシル抱えて逃げるにも時間稼ぎにしかならねえからな…ケンローとかソフィーに相談してみたらどうだ?ほらめっちゃケンロー憎んでたみたいだしケンローと会えば普通でいられないんじゃね?そこでやばそうならケンローに乗って逃げる。完璧じゃね?」


「うーん…そうだね、連絡取って見る。」


「まぁ多分、分かってるからシルもそう言ってるんだろうけどさ、セリス兄はともかくファル姉がこうやってうやむやにするなんてあり得ないと思うから、こうなってる時点で黒だぜ?良いのか?」


そっか、そう言われて見るとその通りだ。


「うん、そうだよね、じゃぁ尚更なんとかしなきゃ、ありがとう、スッキリした。」


「そっかならいい。」


直ぐにリンちゃんに連絡を入れる

状況を剣狼に話すと2つ返事で直ぐに行くと言ってくれた。


嘘だとわかったら逃げ出す…


それにどれだけの意味があるのかわからない。


でも、私に出来る事は他に思いつかなかった。


思いつけなかった。


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