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剣狼の願い  作者: クタクタニ
姫の願い
61/83

5-2 胃袋を掴むもの

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーールル

「なんでよ、なんでこないのよ!」


「何か勘違いしておらんか姫よ?儂はお主の飼い犬では無いのだぞ?何故お主らに付き添わねばならん、シル嬢、フーセにはついてやらんこともないがお主は別じゃよ。」


「だから、そのシルちゃん達を助ける為に動いてるんじゃない!」


「違うじゃろ、それはおまけじゃろ?姫よ」


「そんな事…は…」


「おお、正直、正直。そういうところは気に入っておるぞ。しかしな、王としては落第点じゃよ、まぁパルも似たようなもんじゃったがな。」


「どうしてこないのよ…」


「理由は3つ、1つ目は今言った通り、儂はお前のものになった覚えはない。2つ目、儂を交渉の材料にする気じゃろ?それが気に食わん。」


「そんなつもりはないわ、出来れば扱いにくいボスコミュール、最悪でイカルガと思ってる、剣狼を手放すなんて」


「ほれみ、手放すとかの前にお主の物ではないとゆうておる」


「揚げ足取らないでよ、そんなつもりはないんだから。」


「そして3つ目これが一番重要じゃ。」


「なによ、3つ目って」


「儂の飯は誰が作る。道中魔獣がおるとは限らんだろ?」


1つ目2つ目はプライドが理由なのに重要と言った3つ目はご飯って…


「そんなの私が作るわよ!」


「ほう!お主はリンよりうまい飯が作れるとぬかすか!やってみぃ、出来たならばお主の前で腹出して寝てやるわい」


「出来るわよ、魔力込めるだけでしょ!やってやろうじゃないの!出した腹に私の名前書いてやるわ!」


「ええじゃろ、審査員はこの場にいないコガラスのやつじゃ!それなら文句あるまい?負けたらお主が儂の前に腹出して寝ろよ、儂直々にサインしてやるわ」


売り言葉に買い言葉。やってやろうじゃないの、私だって何年もフージに鍛えられて来たんだから、花嫁修行的なものだってやってるのよ、姫だからって料理出来ないとでも思ってるんでしょ!魔力量ならファルにだって負けないだから!


「首輪をつけてあげるわ!剣狼。」


「やってみぃ!お主に儂からも首輪をプレゼントしてやる」



こうして私対剣狼ではなくリンちゃんとのお料理対決が行われることになる。

しかし、話はフージの耳にも届くことになり…


「面白そうですね、当家の主人としてその対決には一枚噛ませてもらいます。姫はもう20。一般としては問題ありませんが、王族としてはもういい加減身を固めて貰わなくてはいけません。殿方を射止めるには胃袋からと相場は決まっております、腕前確かめさせてもらいますよ?」


「相手が変なのしか居なかっただけよ、どうせ政略結婚ならもっとお金あるとこにしなきゃダメでしょ」


「そんな事を口にしてるからダメなんですよあなたは、でもまぁこれから向かわれるスマートジーコ社のユウヒさんなんてほんとその点全てクリアした人ですよ、ルル王女?貴方のこれまでの力見定めてあげます、しっかりね。」


完全に話が変わっていた。

私はバカだ、ちょっと考えれば分かる事だったじゃない


〜〜〜〜〜

人型になったソフィーとフージの話し合いが終わりこちらを向く。


「話は分かったわ、ここは平等に審査する為私とフージ、アストレア家の料理長の3人で採点します。

評価は、審査員がそれぞれ、見た目と味、の他に私が魔力がどれだけ込められているか、フージがマナーや気配り、料理長にはそれ以外の何かを見てもらいます。」


「まて!コガラス!儂は魔力について姫にいっておるのじゃよ、魔力の評価部分が少ないのでは話にならんじゃろ!」


「うるさい、ギンギン丸。魔力が足りなかったら量を増やして貰えばいいでしょ?そもそもちゃんと魔力を込めれなければ料理はどうせ黒こげよ、全部評価がさがるわ、どうせ貴方、リンから離れたく無いんでしょ?あの子撫でるの上手だしね、気に入っちゃったんだもんね?最初からそう言えば良いのに」


「うるさい!コガラス。わかったそれでいい。」


どうやらリンちゃんは殿方を既に射止めて居たようだ、既に口うるさい狼は飼い犬だったか…しつけてもらわなきゃ。


「あのー、その他の何かってなんですか?」


おずおずと手を挙げてリンちゃんが聞く


「そうですね、手際の良さや工夫の仕方などですね、普段から料理をしている人から見てどうかというところを評価してもらいます。」


リンちゃんがこちらを見上げる


「えっと、私も剣狼さんと一緒にいたいので全力でやります!」


「ええ、リンちゃん。私も全力でやるわ!恨みっこなしよ。」


「はい」


「じゃぁ時間は1時間。食材はここにあるものを好きなものを使って、時間内なら一品でもいいし、たくさん作ってもいいわ。」


「はじめ!」


ふふふ、魔力の好みはわからないけど、食材に魔力を込める方法はシルちゃんを見て覚えてあるの、魔力コントロールはシルちゃんよりは得意なはず。さらにフージの下で16年もやってきたのよ、さらにフージがいなくなった後も結婚を断った代償に花嫁修行までやらされていた。つまり私は10年そこいらで逃げ出したファルやシルとは格がちがうのよ!格が!リンちゃんの作る料理も美味しいけどそんなに差がつくとは思えない、ごめんねリンちゃん!負ける気がしないわ!私可愛いだけのお姫様じゃないの!出来るお姫様なのよ!



リンちゃんは…どうやら郷土料理かな、多分地元のシーバード地方のものだろう。人情で来たか!これはポイント高そうだ!


私も負けてられない、私の故郷の料理。それは宮廷料理。見た目にも味でも一流の物を用意してあげるわ。私だって小さい頃からただ美味しいって食べていたわけじゃないの、沢山の料理を見て来たんだから私の持てる全てを味わってもらうわ!


ここの食品庫を見て一瞬で料理は決まった

既に熟成されたウサギ肉があったからだ、この時期の旬とも言えるウサギ、更にこちらの地方は赤ワインも有名。もうこれしか無いと言わざるを得ない。

リンちゃんはお鍋で間違いない、ではスープを出した所で濃厚な出汁が出た者には勝てない、逆にサッパリとさせる為にサラダを用意しよう。この時期は根菜が豊富シャキシャキとした歯ごたえを生ハムでまとめて程よい塩分を与えよう。 魔力を込める時間も必要だ、二品が限界かな。


リンちゃんはお鍋一品で勝負するようだ。

確かにお鍋ならばそれ一つで完成されたものと言えるだろう。1時間しかないこの時間でダシがどこまででるか、そこが勝負の鍵とあったところか?



「そこまで!!!」


2人とも料理を出して


時間ギリギリになってしまったがなんとか完成した、魔力もうまくこもったはずだ。


おお〜


「ルルちゃんがジビエ、リンちゃんがお鍋か。ルルちゃんから頂こうかしら?」


「どうぞ、根菜の生ハム包と、ラパン(ウサギ肉)の赤ワイン煮込みです。」


「おお〜!さすがルルちゃん、美しいお皿だわ、流石にいいもの食べてきてるだけあるわね。」


「ふむ、この季節に、温かさが感じられる色どり。流石ですな。」


「柔らかい、でも程よい弾力が口の中で踊る」


「ソースがしっかりと肉と絡んで溶けていきますね。」


「しっかりと魔力もこもっている、もしかしてこの赤ワイン」


「ええ、魔力のこもったワイン、この地方で作られているホークアイというワインね?魔力がこもっている事で濃厚な味わいがあるので煮込みにするのに最適なんですよ。よく勉強してますねルル。」


「はい、ありがとうございます。」


「シャキシャキとした根菜で口の中がサッパリして、もっと食べたい!という気持ちになりますな、バランス共に素晴らしい出来ですね、いやぁ私も勉強になりますな」


「褒めすぎですよ料理長。」


かなり好感触だ!これなら行ける!


「じゃぁ次はリンちゃんのお鍋行って見ましょうか?」


ソフィーの上機嫌な声にリンちゃんが反応する


「はい、直ぐに出しますね。」


そう言いながらお鍋からお椀によそう


「私の住んでいたシーバードの鍋です。いっぱい有りますので皆さんもどうぞ」


ぐっ、そうかリンちゃん!その手があったか、オーディエンスを巻き込むとは、できるわね。


「あったまりますね、冬といえばこれと言った感じですね。まさに故郷の味と言いましょうか…」


「あの短時間でよくこれだけ出汁が出ましたね」


「シーバード地方の人たちはみんな各家庭で秘蔵のダシ汁粉があるんですよ、ですのでこれは私の家の味とも言えます。」


そういうとポケットから乾いた粒が入った瓶が出てくる


「それは興味深いですな、この短時間でこれだけの出汁が出るならば私もそう言った物を作って見たいですな。」


「私の家の配合は教えられませんが作り方後でお教えしますね。」


「是非お願いします。」


私もお鍋をいただく、美味しい。でも…これはあくまでもお家の晩御飯!味見た目で負ける気はしない。料理長がダシ粉にかなり興味を示していたけど味の採点はまた別の話よ!


「リンちゃん?このお鍋、魔力をどうやって込めたの?具材一つ一つの魔力が均等になってる、出来上がって魔力を込めたんじゃ水というかダシ汁の温度に影響が出るんでしょ?となれば具材一つ一つに魔力を込めるしかないわよね?」


そう、魔力を込めると温度変化が生じる、熱くなったり冷たくなったり、水に魔力を込めようとすると、沸騰するか、凍ってしまう。精密な魔力コントロールが出来ればもしかしたらできるかもしれないけれど、それが出来れば大魔術も使える世界有数の魔法使いと言われていてもおかしくない。流石にリンちゃんにそこまでできるとは思えない。


「ハイ、それはですね、ヒュンゼルで作った氷に魔力を込めて、それをゴーズメルで溶かした水で調理しました。食材には魔力は込めてません、染み込んだ水が魔力を均等にしているんだと思います。」


カラーんとスプーンが落ちる


「水に魔力を充填しておく事が可能ということ?」


「えっあっ、はい」


「ソフィー!充填された魔力量はどれくらい!」


「えっいつものリンちゃんの、ご飯と同じくらいかな?」


「という事は魔力は散っていないのよね?」


「そうなのかしらね?」


「まさか!それは…マジックポーションをリンが作った…と?」


カイ君がワナワナと震えだす


「ええ、水に魔力を込めると沸騰する、もしくは凍ってしまう、飲めるように温度を戻すと魔力は散ってしまって飲む事は出来ない。でもこのお鍋のダシ汁は魔力がこもったまま魔力をが散っていないという事は…」


「まさか秘匿されていたマジックポーションの作り方を解明するなんて…北の方から一口のポーションが数十万で輸入していたけれど…これで…」


「フージ、リンを私の妹…だと後々面倒なことになるわね、じゃぁ私付の秘書官にします。しばらくリンをここに置いていきますので教育お願い。」


「かしこまりました」


「えっ?えっ?」

リンちゃんがアワアワしている


「姫さま!リンはうちの従業員ですよ!」


「あら?シーバード山でリンちゃんの身柄を保護したのは私よ?いわばリンちゃんの保護者は今私。」


「そんなばかな!」

カイ君が詰め寄ってくる


「落ち着いて、カイ君、私ではマジックポーションを売ることはできないのよ?この意味わかるわよね?」


少し黙って目を閉じる


「成る程、姫さま。この話は後ほど。」


そういうとカイ君が手を出してくる

ぎゅっと交わした握手。私たちの目はらんらんと輝いていた事は間違いないだろう。


「何か良からぬ事を考えてそうだけれどそれじゃぁお料理対決の方はもう良いの?」


「それはそれ、これはこれよ!」


「じゃぁ採点に移るわね。見た目3点、味3点、それぞれの項目4点で1人合計10点。3人とも満点で合計30点よ。フージ?料理長、採点は出来た?」


「よろしいですわ。」


「でわ私からルルちゃん見た目3点、味3点、魔力2点。合計8点。リンちゃん見た目2点、味2点、魔力4点。合計8点よ。見た目も味もリンちゃんは悪いわけじゃないけれどルルちゃんがやっぱりインパクトあったかな。魔力はやっぱりリンちゃんの方が濃いわ。それでこの評価ね。」


これは予想通り、魔力のところは剣狼が太鼓判を押すぐらいだ負けるかもしれない事は分かっていた。ここで差が開かなかったのは良い結果と言って良いだろう。


「で次は私から。姫さま、見た目3点、味2点、マナー気配り2点。合計7点。リンさん見た目2点、味3点、マナー気配り3点。合計8点。見た目に関しては私たちの目の前で蓋を開くなどのワクワクさせるような演出が有れば評価は上がっていたでしょう。味に関してはこの時期ウサギ料理はこちらで良く食べているもので評価は厳しくさせてもらいました。マナー気配りに関しましてはちゃんと出来ていたことに関して2点。リンさんに1点多くつけさせて頂いたのは冷ました出汁で適温に温度を調整したところですね。そこを評価させて頂きました。」


1点リードされたか、でも。最後は料理長が見る手際や技術。リンちゃんもいろいろしたみたいだけど私の包丁さばきや隠し包丁を料理長なら分かってくれるはず!


「そうですか、では最後に私ですな、見た目味に関しまして姫さま、リンさん、お二方に3点をつけさせて頂きました。お客様にお出しするに値する大変素晴らしいものだと思います。それ以外の何かですが姫さま申し上げにくいのですが0点です。リンさんには3点つけさせて頂きました。」


「ちょ!ちょっと!なんでよ、0点て!自分で言うのも何だけど肉をさばいたり味付けだったりそれなりの技術が必要なのはわかるわよね!」


「ええ、その辺りはお見事でした、うちのコック達も舌を巻くような技術だったと思います。」


「だったら何でよ!」


「調理場へ行きましょう、行けばわかります。」


調理場へ移動して一目で理由がわかってしまう


「こちらがリンさんが使っていた作業場、そしてそちらが…」


散らかっていた、使った調理器具は洗わずにシンクにたまり、残った食材は出しっ放し、作業台は勿論汚れていた。


「まぁこれが理由ですね。説明は必要ですか?」


「無いわ。」


どうしよう、めちゃめちゃ恥ずかしい。


「かーかっかっか、負けたの?まけーたのぉー姫?」


剣狼が勝ち誇る。


「ほれ、腹を出せ、わしの名を書いてやろう!」


「剣狼さん、ダメですよ意地悪言ったら。それに勝負して勝ったのは私なんですよ、そんな事言ってたらご飯野菜だけにしますからね。」


「じょ、冗談じゃよ、まぁしかし約束どおり儂はここに残るからな、それは良いな?」


「良いわよ、分かったわ。こちらが王都に向かう時は連絡するからその時はちゃんと来てよね。」


「よかろう。」


こうして剣狼、ソフィー、リンをアストレア家に残し、翌朝私とカイ君、マーダン、イルナはスマートジーコ社へむかうことになる。


出発の朝着替えていると

私のお腹に肉球の跡が付いていた

あの犬やりやがった。


飼い主にはチクって置いたのでしばらく野菜生活になることだろう。ザマーミロ。


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