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剣狼の願い  作者: クタクタニ
姫の願い
60/83

5-1 真実の意味

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーシル

「シルちゃん無事で良かった。」


何を言われるのかと思っていたがセリスさんとの再会は予想に反するものだった


「大丈夫なのかい?核になってしまったのでは無いかと聞いていたから…」


「だ、大丈夫ですよ、この通りピンピンしてます。私の代わりにフーセがこんなのになっちゃいましたけど」


そう言ってフーセの核を見せる


「これがフーセ?フーセが核になったのか?なんで?」


「私の代わりに変化の核を使って…」


「元に戻せるか?なんかわかるかファル」


「さすがにわからないわ、賢智の核も無いんだもの」


「ルルちゃんが賢智の核で調べたら方法はあるって、剣狼がディヴァイスターの破壊力ならとかって言ってた」


「ディヴァイスターか…」


「えっと…セリスさん?ネルさん?」


「あっ!嗚呼すまない、セリスでいいよ、もう混乱は無いから、セリスで間違いない。」


「えっ?でも…」


「ほら、ファル、やっぱり完全に勘違いしちゃってるよ、俺だって逆の立場ならそう思うよ」


「そんな事言ったってあの時はああするしか無いと思ったんだもの」


「どういう事ですか?」


「多分、シルちゃん達は俺がネルに精神を乗っ取られたとか、操られているとか思ってるんだろ?」


「はい…」


「ちなみにその理由はファルが飲み込んでいた核が操りの核だからだよな?」


「そうです」


「まずそこが間違いなんだよ、剣狼様の早とちりなのか、わざと言ってるのかまではわからないけどね、俺がファルから飲まされたのは行ってみたら真実の核ってところかな」


「真実の核?」


「まぁ元がネルっていうのは間違いないんだけど、ネルは真実を求めていたんだ、嘘か本当かわかる核ってとこだな」


「でも飲み込んだ時セリスさんは…」


「そうなんだよ、あの時は俺の記憶の核の力で真実の核であるネルの記憶を読んでしまって完全に憑依って言うのかな?ネルになってしまっていたんだ」


「セリスさんってこんなに饒舌でしたっけ?」


「そうね、言い訳とかごまかそうとかしてる時饒舌になるわよね」


「ファル、頼むからややこしくしないでくれよ、今はこのややこしくなった状況なんとかしたいんだからさ」


「ふふふ、ごめんなさい」


「じゃ、じゃぁマーリンさんは?あんな体に…」


「それは俺の話じゃない、ファルどーぞ。」


「あれは…その…まずね、マーリンと戦うことになっちゃってマーリンの体に私大穴開けちゃったの」


「開けちゃったって!!」


「王宮全域にルルから会話の核で話があったじゃない、あれを聞いて真っ先に来たのがマーリンだった。」


「それじゃ…」


「事故とは言わないわ、セリスはネルになりきってるし、私が戦うしかなかった、あの時の戦いは武闘祭の様なお祭りではなかった。マーリンは王国兵士として城を王を守るために私達を本気で殺す覚悟で向かって来たわ、私も全力で答えるしかなかった。その結果…」


「そんな…」


「仕方なかったなんて言葉で片付けられないのも分かってる、私はなんとかマーリンを元に戻せないか、命を取り留められないかやったわ、それがあの体。トレントを作り出した技術の応用で、欠損した部分をトレントの細胞を使ってつなぎ合わせた。記憶もあるし、死んでないとも言えなくはない…とも思ってるけど…やっぱり元通りとはいかなかった。」


「でも、マーリンさんは…」


「トレントの核がもう少し安定すればあんな体じゃ無くて元の体には近づくわ、でも、組み込んだトレントのコアとの干渉で自我が保てない。」


「どうにかできるの?」


「したいとは思ってる、でも時間が必要ね、記憶の核の制御と出来れば賢智の核も…賢智の核はルルが持ってるんでしょ?」


「うん。」


「やっぱりルルか…」


「お姉ちゃんルルちゃんを殺すって言ってた…」


「それはそうよ!こちらが真面目に話していれば私を虐める事しかしないんだもの、私を怒らせる天才なのよあの子は!」


「ちょちょっと、お姉ちゃん落ち着いて…」


「まぁ話を整頓するよ、俺は記憶の核の力でネルって名乗ってたけど今はもう落ち着いてその心配は無い、ネルの記憶は呼び出せるけど基本セリスで間違いない。ここまでいい?」


「はい」


「んでファル、シルちゃんは分かってると思うけど念の為。ファルはルル姫様が嫌い。特に真実の核の力でルル姫の嘘ホントがわかってからは多分シルちゃんが知ってる時より酷いと思うよ。ただ殺すとか言ってるけど本音じゃ…無い。無いと思うよ。」


「あの女の方を持つのセリス?覚えてる?行かない。」


「寄らない、近づかない。じゃぁなくて、ごめんこれは泥沼にはまる、なんとかわかってシルちゃん。」


「わかりました、そこは百歩譲ります。そこは飲み込んでも、兵士や、救い出したマーダンさん。ルルちゃんを見たら完全に気が狂ったように襲いかかって来ました、それに村の人達の記憶の操作だって、フーセのお父さんにあったけど私のことは忘れてた…そこはどう説明してくれるんですか?」


「それは記憶の核の力を使った、これだな。」


セリスさんが黄色い核を取り出す


「えっ?飲み込んでたんじゃ?」


「吐き出した、なんかファルに色々苦いやつを飲まされたよ」


「正直あの騒ぎで混乱が大きくてなマーリンじゃないけどみんな俺とファルを外敵として向かって来た、とてもじゃ無いけど説得は不可能、流石に全員にマーリンのように延命処置も出来ない。そこで記憶の核を使った。記憶の植え付けだな、俺が気絶させてファルがこの核を使って記憶の改ざんをしたんだ、流石にぶっつけ本番だからな上手く出来なかったんだろう、ファルの記憶から憎しみみたいなのが植え付けられちゃたんじゃ無いかと思う。」


「村の方は前に説明した通りよ、心配かけないように気にしないようにしただけ、もちろん元に戻るから安心して。っていうか兵士の人達とかマーダン達、襲いかかってたの?捕まえてとは言ったけど」


「それはあれじゃ無いか、保護してとか言わないとダメだったんじゃ無いか?」


「そんな事言ったって…えっ?私のせい?」


「そう言うつもりじゃないって、怒るなよ、」


「マーダンさんだって処刑するって」


「あれは形だけだよ、本当に処刑する訳じゃ無かった。マーダンは実力者だから気絶させるとかホント無理。大人しく記憶の核を使わせてもらえるような相手じゃなかったから牢に入ってもらって説得を続けてたんだ。聞いてくれなかったけどな」


「処刑話はムスシタナ王が言い出した話なんだ、そうだな直接話した方が納得いくだろ、謁見の間に行こう。」


何となくつじつまはあっている気がする、セリスさんやお姉ちゃんを見てるとそうだったんだ…と言う気にもなってくる。もやもやする。


「おお!シル無事であったか!良く顔を見せておくれ」


「おじさま!ご無事で何よりです。」


「無事も何も私はこの通りピンピンしとるよ。混乱があって一番隊の面々は王妃を連れてどこかに消えるし、ルルは何やら画策しておるし。困ったものじゃよ。」


「ルルちゃんは元気です。大丈夫ですよ。」


「お転婆だから、また何か企んでるのであろう。」


「私が次の王になると言っていました。」


「そうか…シル、儂はの、私の代でムスシタナ王国を終わらせるべきではないかと、思っている。」


「何でそんな、やっぱり、操られて…」


「いやいや違うんじゃ、前々から思っていたんじゃよ。儂が作った平和な国。聞こえはいい、そして本当に平和になった。しかしそれは大きな負債を負っておる。借金大国じゃな、実際のところもうどうこう出来る状態では無いんじゃ、もはや挟まれている隣国三カ国に明け渡すのは時間の問題であろう、そうなると領地の奪い合いが始まるであろう。」


「そんな…どうにかならないんですか?」


「そこでこの騒ぎに乗じて新しい国を起こす。あくまでも借金はムスシタナ王国の借金じゃ、無くなれば罪に問われるのは儂だ、儂の子供達にそれを背負わせたくはない。」


その後も色々と政治的な話をしていたが正直なところ理解できなかった、とにかく親心として子供に負債を合わせたくないから改革が必要で、今がそのチャンスなのだというような事らしい。


「わかった?」


「ごめん、正直良く分からなかった」


「とりあえず言えるのはまだ計画の段階、おじさまったら他国に伝わったらまずい話までしちゃうんだもの、口外しちゃダメよ。」


「口外するも何も誰に言うのよ」


「王宮の外っていうか誰にも言ったらまずいわね」


「お城から出てもいいの?」


「?別にいいわよ、何でダメなの?まぁまた探しに行くのは大変だから王都からは出ないでほしいかな、出るなら一言言ってちょうだい。」


「じゃぁ何で私を連れ戻したのよ」


「勘違いされたままじゃ悲しいじゃない。それにルル達だって黙って戻ってくれればいいけど変な詮索してるからあちこち走り回って逃げ回ってるんでしょ?私が行っても話は聞かないし、兵士達をやっても蹴散らしちゃうし、もう黙って待ってた方が帰ってくるかな?って思って。」


「伝言は?あれはどういう事?」


「ソフィーに伝えてって言った事?ああ言っておけば早めに帰ってくるかな?って思ったの。」


「お姉ちゃん達は何をしようとしてるの?」


「うーん今の所は居なくなった一番隊の人達のお仕事かな、戻ってきたらどうなるかはその時になって見ないと分からないかな。」


「それはそうとフーセを何とかしないとな」


セリスさんが割って入ってくる


「いちをネルの記憶を読んで見たけどディヴァイスターなら核を破壊する事は出来るみたいだけど、壊したからってフーセが無事に出てくるとは限らなそうだぞ?」


「でも賢智の核はできるって…」


「おそらく、こう書いたんでしょう?《ディヴァイスターを使えばフーセを元に戻せる》」


「確かそうだった」


「これだと可能性が少しでもあれば賢智の核は肯定しちゃうの、だからディヴァイスターを使えばフーセを必ず元に戻せるって書いた場合には多分文字は光らないわ」


「そんな…」


「とりあえずそっちはネルの記憶を読み取って方法が無いか探してみるよ。」


「セリス、またネルになっちゃったとかやめてよ?」


「わかってる、だから時間をかけてゆっくり調べるしかない、待ってろよフーセ。」


「じゃぁ私達は仕事に戻るわ、とりあえず私と相部屋よ、好きに使って、クローゼットにシルが置いて行った荷物も有るからね。」


そう言うと2人は言ってしまう


本当だとは思えない、嘘だとも言い切れない、私に嘘をついてどうなる?よく考えてみたら私を捕まえる意味だってわからない。じゃぁ本当に2人は操られてなんていなかったの?わからない…


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーネル


「ちょっといい加減すぎたかなファル?」


「いいんじゃない、別に嘘だったーてバレたからと言って困る事は無いんだもの。そもそもそれがわかったからってあの子がどうこうできないでしょう?」


「そうなったら逃げてしまうんじゃないか?やっぱり牢に閉じ込めるなり精神操作した方が間違いないとは思うんだが?」


「それこそ意味がなくなっちゃうわ、出来るだけ今の精神状態を保ってあげなくちゃ、あの子の願いが変わっちゃったら大変だもの。それにわかったからって逃げ出すような子じゃないわ、そこまで馬鹿じゃないもの。でもほんとフーセがまた余計なことしてくれるから手間が増えちゃったわ。」


「あいつはほんとミラクルメーカーだな、良くも悪くも。」


「ほんとルルと同じくらい厄介よ、常識が通じないあたりはルルより上かもしれないわ」


「フーセの核ぐらいは取っておいた方がよかったんじゃないか?」


「それは思ったんだけどね、あんな状態でも見方がいるって思えれば逃げ出さないんじゃないかと思うの、それにフーセの核はなんて言うのかな意思が色になって出てきてた、フーセが核に閉じ込められてるみたいな感じかな。多分フーセの願いはシルちゃんの身代わりってとこじゃ無いかな、もはや役割を果たしたって感じだと推測する、まぁシルを核に変える時は離しておいた方がいいかな?」


「真核はどれくらいで出来る?」


「うーん、素材が足りないからな、まだちょっとわからない、出来る限り急ぐわ」


「じゃぁそっちはよろしく。こちらはエディルと姫さまをお迎えする準備でもするかな。」


「はい、今晩はシルも入れてみんなでご飯食べに行きましょう?6時に宿舎で。」


「わかった。」


さて、フーセのおかげでまたやることが増えた、まったくなかなか先には進まないものだ。


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