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剣狼の願い  作者: クタクタニ
第1章 始まりの願い
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1-6 旅の始まり

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーセリス


盗賊の達を縛り、ファルを落ち着かせていると、フーセが言っていたとおりにシルちゃんに連れられて村の屈強なオヤジ達が来た。

「人さらいたぁいい度胸だ!ファルちゃん大丈夫か?セリス良くやった!こいつらは任せとけ王国騎士に引き渡す、お前は一休みしてからこいや」


いうだけ言って盗賊達を荷馬車に放り込むと

早々と村に戻って行った


あいつらは…無事に生きて王国に引き渡されるのだろうか…


「はぁーやっと一息だな」


「セリスさん!お疲れ様でした」


にこやかにシルちゃんが、声をかけてくる


「シルちゃん!怪我は?大丈夫だったのか!?」


「ええ、全然このとおりですよ!」


「でもどうやって?かなりの深い傷だったはず…」


「まぁ…えっと…健康な体に変身した?みたいな…」


「シルは俺に感謝しろ!」


「はいはい、ありがとうございました」

そっぽを向いてシルちゃんが返事をする。


変身の能力を使ってうまいことできたということか…それで直ぐに追ってこれたと…


「ファル?本当に大丈夫か?」


「うん、だいぶ落ち着いたわ、みんなのおかげね…本当にありがとう」


「まぁ儂から言わせたら30点じゃの」


「ファルねえは助かったんだから良いじゃん!」


「ワッパ、それは最低ラインじゃ、それができねばマイナスじゃよ、まず、小僧考えが浅い、馬を脅かし外に人を呼び寄せる、結果は今回は運良く2人出て来たから良かったの、1人だったらもう1人うまく止められたとしても、姉を盾に取られた時点でおぬしの負けで確定じゃった。儂を囮にしてその結果…がっかりじゃ」


「それを言うならセリス?フーセじゃないんだから技の名前を叫ぶ必要はなかったんじゃない?」


まさかの助けたファルからダメ出しをされる


「いや、それはむしろ良い、使い慣れない技じゃ、どんな技も技を出した結果を想像できねば形が崩れたものになる場合が多い、気剣体の一致、気、つまり自分の気持ちじゃな、それを言葉にする事で剣と体が付いてくる、全てを一致させた時に望んだ結末をえるんじゃ。」


「そういうものですか?」


「まぁ殺さずを誓ったからこそ小僧も無意識的に技の名を叫んだのじゃろ、ええんじゃないか?一閃破打、

一閃乱打。貫くのではなく打ち込むという感じじゃの?これはまぁセリスの作った技といってよいのではないかの?」


耳の痛くなる評価に続いて…技名を叫んでいたか…しかも無意識的に…恥ずかしい…


「良いなぁにいちゃんの技か!俺もオリジナル技作りたいぜ」


正直パル様の技を点から面に変えたほぼパクリ技みたいなものなので尚更恥ずかしくなる


「もうやめてくれ、俺も今回は反省だ、技が使えるようになって浮かれていたんだと思う。」


「そうね、でもみんな無事でよかったわ、それに嬉しい報酬もあるじゃない」


「報酬?」


「馬車!馬付き!ホロ付き!食料付き」


盗賊達が残して行った外に止まってる馬車をみる


「あの人たちはもう使うことはないでしょ?有効に使わせてもらいましょう」


こんなことが有ったのにファルはどうやら予定通りに旅行に出かけるつもりのようだ…


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


村に戻り、ファルとシルちゃんを家まで送る


「明日は朝一は疲れが残ってるでしょうからゆっくり寝てお昼に出ましょうか?」


「いやというかこんなことが有ったんだ、明日は…」


「大丈夫よ、ちゃんとおじさん達は説得するわ、任せといて!」


「セリスさん、お姉ちゃんが行くって行ったら行くんですよ。何言ったって無駄なのは…」


「わかってるけど…」


「大丈夫よ貴方が一緒なんだもの…」


「そう言われると弱いな、分かった、じゃあまた明日

、なんか有ったら直ぐに知らせてくれ」


「はい、了解いたしました」


ファルがおどけてみせる


「おやすみ」


「おやすみなさい」


そんな挨拶を交わす中、馬車の荷台ではフーセが既に爆睡していた。



初めての対人戦


不意打ち。奇襲…一方的なものだった…


しかも失敗し…情けない


「小僧、悔んでおるのか?まぁだいぶお粗末な闘いぶりだったからの?」


荷台からまたダメ出しをくらう


「闘いにもなってませんよ、結局、剣狼様とフーセが来てくれたおかげで何とかなりましたが…そうでなければ…」


「そうじゃの…姉は奪われお前は下手すれば土の中じゃな、組み稽古はしておるが闘いの基本は打たれずに打つじゃ、相手の反撃を許した時点で必ず敗北の可能性が出てくる、今回はラッキーじゃったかもしれない、しかしな小僧お主は記憶の中のパルではなく、自分自身の経験を得た、パルなんか初戦なんて目も当てられたもんじゃ無かったぞ、悔やむな次にいかせ、お主はまだまだ強くなれるし、そうなってもらわねばならん」


剣狼様に慰められる


「はい、精進いたします」


「お師匠様と呼んでも良いぞ」


「それは…考えておきます…」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「朝だぁーーーーーセリ兄!おはよう」


「…おはよう」


ここは是非、昨日の功労者としてファルに起こしてもらいたかった所である…百歩譲ってゆっくり寝せて欲しかった…


「セリス、おはよう」


「うぁぁぁ!いたのかファル!」


居ないと思っていたので不意を突かれて驚いてしまう


「いたのかとは失礼ね、せっかく朝ごはん作りに来たのに、おじさま達はもうごはん食べて畑に出たわよ」


「セリスさん全然起きないんですもの、みんなで起こしに来ましたよ」


シルちゃんが窓を開けながら言う


「にーちゃん、俺は速く行きたい!冒険に!」


まだ気だるさが残る状況でこのテンションはだいぶ疲れる。


「まずは朝ごはん…と言うよりもう昼ごはんになっちゃうかしら?みんなでいただきましょう。あっおじさま達から伝言、旅行楽しんでこい、全員無事に連れて帰ってこい、出来なきゃ二度と戻ってくるな!ですって、よろしくねセリス」


起こした身体をもう一度ベットに投げ出す


「はぁーー明日に延期しないか?」


「ダメー!!!!!」×3


「ですよね〜〜」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ん?小僧ようやく来たか、待ちくたびれたぞ」


昨日盗賊から残して行った馬車の荷台から声をかけられる。既に干し草を敷いて自分の場所取りと言うかベットが完成していた。


「お待たせして申し訳ございません」


「それじゃ行こうぜ!」


フーセが当たり前のごとく御者台にすわり号令をかける。フーセの親父さんは荷運びしている、よく手伝いもしてるし、まぁ任せて大丈夫だろう。


「じゃあ、済まないがもうちょい休ませてもらおうかな」


荷台に乗り込み身体を伸ばす、立派な馬車を得られたのは幸運だった、詰めれば全員で寝ることも可能だ。


「トルダワ湖まで馬車を止めずに進んで1日、昨日の今日だし今日は夕方なったら野営して休むか、この馬車ならまず、動物にやられることもないだろうし、魔獣が出る森に入る前に準備の確認も兼ねてだな」


「セリス、寝てて良いわよ。フーセと私とシルで交代しながら行くからゆっくり休んでね」


「ありがたい、どうにも疲れが抜けないんだ」


「昨日は実戦で一閃やら閃刃やら乱発しとったからな、体にだいぶ反動が来るのだろう」


「そうか…じゃぁお言葉に甘えて…」


荷台に寝そべりグッと体を伸ばす

通り抜けて行く風、剣狼様が敷いている干し草の香りを感じているとふわっと頭を持ち上げられる


「頭痛いでしょ?昨日のお礼も兼ねてサービス」


膝枕である。


「あっいやっでも」


「遠慮しないの、ね?」


「あっおねーちゃんズルい!」


「これは昨日のお礼なんだから今回だけよ」


「うーんしょうがない譲ってあげるか」


「ファルねぇ俺にも!!」


「うーん、考えとくね?」


「俺だってファインプレーしたんだぜ!」


「こら前見て!今日もちゃんと頑張ったら晩御飯美味しいの作ってあげるわよ」


「よっしゃー!肉と芋炒めたあれが良いなぁー」


「はいはい」


「儂は肉をコウヤクジュの実で…」


昼過ぎに既に晩飯で盛り上がる2人…1人と一匹?


暖かさと頭を撫でられる感触…


馬の一定のリズムで流れる足音と共に、自分の意識が心地よい世界へと落ちて行った…




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「セ…さ…」


「セリ…さん…て」


「セリスさん起きてください」


大きく伸びをする。

残念ながら心地よい枕はタオルへと変化していた…

くそ、もうちょい頑張って起きておけばよかった…


「今日はここで休む事に成りましたよ、起きて手伝ってくださいね、私とおねーちゃんは薪拾ってるんで、そこ降りたとこに沢があるんで水汲んできてもらえますか?」


「了解だ」


「あっにーちゃんこいつらのぶんも頼む」


馬たちの世話をしているフーセから声をかけられる


「あいよ、いっぱい休ませてもらったぶんも働きますよー」


トルダワ湖迄あと半日弱ぐらいかな?、まだ少し日が有るが少し早めにキャンプ地を決めたようだ

基本的に川を上流に向かって進むので水には困らないのはありがたい。


キャンプ準備を終え。一息つこうと思っていると、香ばしい匂いにつられみんな焚き火の周りに集まりだした。


「いい匂い、お腹すいちゃった」


「あとは自分たちのお好みで焼いて、剣狼様には実とお肉の香草焼きにして見ました。フーセにはご希望通り、お肉とお芋に頑張ってくれたからチーズをサービスしちゃうわね」


「キタコレ!間違いない!間違いないよ!ねぇちゃん

!!!」


……………………


「もう食えない…限界…」


「食べ過ぎよフーセ」


「ねぇちゃんの飯を食える幸せをお前はもっと感謝した方がいいと思うぞシル!ねぇちゃんは神の手を持っているんだ!」


「剣狼様?お口に合いました?」


「うむ、美味かったコウヤクジュの実の味は飽きてしもうたがこれならまだまだ食えそうじゃ」


「剣狼様、実はコウヤクジュの実は使ってませんわ」


「なぬ?でわこの魔力は…」


「以前私たちが頂いた核の使い方を学んでいましたら、七星の方々は剣にはめられた核に魔力を留めて能力を使用していました、ならばこのお肉にこうやって魔力を止めることができないか?と思ったんですよ、うまくいったみたいですね、良かったわ、あっこれどうぞ」


「天才じゃ!!!!なるほど確かにそれならば魔力を摂取することが可能じゃ!」


剣狼様が肉に食らいつく


「姉よ格上げじゃぁ〜!これからはファル嬢と呼ぼう!」


「まぁ食べ物に魔力を込めることで喜ばれるのは剣狼様ぐらいでしょうけどね」


「ファルねぇ、核に魔力を込めて使うって、核ってケンローに飲まされたあれだよね、飲んじまった僕らはどうなるの?」


「飲んだのは剣狼様の目的だからね…核に魔力をを充填させるためなのよ。体内に入ってれば魔力を込めなくても常に少しづつ魔力を補充できるとらしいわ、私たちの魔力だときっと満タンになるにはおばーちゃんになってるんじゃないかしら?体の中に有るから使う時はそんなに意識しなくても使えてるわね」


「ケンロー、いまいち何でもできるって実感ないんだけど…」


「そうじゃのう、お主の腹に入っているのは(ことわり)の核じゃ、現象を理解して、もっとうまくやるにはどうしたら良いかがわかる力…とエディルがゆうとったな、理解できれば何でもできるじゃろ?」


「???わかんないよ???」


「核を使えておらんのかのぉ?、儂もまぁファル嬢の賢知の核、小娘の変化の核、小僧の記憶の核をうまく使うためにしか使っとらんかったからのぉ」


「実感したいなら…そうね〜〜」


ファルが考えこむ


「フーセ、火の術、で炎は出せる?」


「えっとこんな感じなら…」


フーセが手のひらで小指程の炎をだす。


「今それは手のひらから魔力を垂れ流しにしている状態、それに形をあたえるわ、その火が丸くなるのをイメージして?」


「ダメだねぇちゃん、全然出来ない」


「じゃぁ今度はおへその下のあたりに魔力を貯めるイメージをしてみて」


「うん、なんか熱い」


「その状態で火球を作ってみて」


「おっ!まじかフーセこりゃすごい」


魔術はみんな練習をしているので火や風を起こすことは割とできる、もちろん威力はそれぞれだ。しかし形の無い炎や風に形をあたえるのはとても難しい魔力コントロールが必要になる、火球は俺たち中じゃ作れるのはファルぐらいだろう。


「力のコントロールを助けてくれる力ってこと?おねーちゃん?」


「まぁ正確にいうと違うんだけどそういう理解でも合ってると思うわ」


「ふーんそうか…だからあの時…」


「なんかあったのシルちゃん?」


「いえ!何でも無いですー」


「なるほどーこうやって使うのか!この火球どうやって投げるの?」


「魔力の放出で飛ばすのよ、狙って、そう、そこから炎をもう一度出すイメージね」


ちょろちょろと飛んだ火の玉は少し離れた先で「ポン」と言って消えた


「ねぇちゃん?」


「大きさと飛距離は魔力量を増やすしか無いわ」


「やっぱ何にも出来ないのと変わんないよー」


「まぁ、核を飲ませた結果どうやら能力は手に握って使ったったときよりも有るようじゃ使っとればなんかわかってくるじゃろうて」


「さぁそろそろ寝ますよ?」


「そうするかー」


「あらセリスは見張りよ、夕方まであんなに寝たんだから、剣狼様もよろしくお願いしますね?」


「へっ?」「儂も?」


「あら狼って夜行性でしたよね?」


「そうじゃが…」


「じゃぁにーちゃん、ケンロー!おやすみ」


「おやすみなさい。セリスさんケンロー。」


「お…おやすみ…」



「小僧…おぬし絶対将来尻にしかれるの?」


「まだ恋人ではありませんが……そうですね」


ため息をつきつつ空を見上げる


明日もどうやら晴れそうだ




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