4-20 ごめんなさい
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーリン
朝、ルル様に会話の核でこちらの状況を伝えてこちらは一日休養を取ることを伝える。
「うん、オッケーオッケー、無理しないで。期限があるわけじゃないから安全第一でしっかり休んでちょうだい。」
姫様からそう言われてシルさんも落ち着いたのか再び眠りについた
何しろ夜中の間移動していたので私も眠い。
そんな中モグラさんに声をかけられる
「私は色々と調査も頼まれている、この時間を使い情報取集を行う。剣狼殿にも手伝ってもらうから今日はここで休んでいてくれ。」
そう言って剣狼さんを連れて言ってしまう。
もしかしたらタアキ村に先に行って目的を果たすのでは?とも思ったが、今はシルさんの体を休めることが優先なのでそれならその方が良いかもしれないと思う。
モグラさんが一通りの物は出して置いていってくれたので、朝食を用意することにする。
「ご飯を食べてしっかり寝る。これぞ健康な体を作る基本」
カイ様が考えたのかはわからないがお店に貼ってあった張り紙の一節だ。もちろん「それが商売の第一歩」と続くわけだが今は商売は関係ないのでそこは忘れよう。
でも言っていることはその通りだと思う。しっかりシルさんに栄養を取ってもらわなくては。
沢から水を汲んで、薪に火をつける。
立派な調理器具は無いけれど、モグラさんが置いていたベーコンを直火で焼き、沢に自生していた香草を洗い、これまたモグラさんが置いておいていってくれたパンにそれらを挟んでサンドウィッチをつくる。
「シルさん、眠いと思いますけど、朝食できましたよ」
「わぁ、リンちゃんありがとう!」
シルさんがそう言ってサンドウィッチにかぶりつく
「美味しい!」
そう言ってもらえるがやはりかなり眠そうだ
「食べたら、休みましょう。私もとっても眠くて。」
「牛になっちゃうけどリンちゃんと一緒ならそれでもいい」
そう言ってシルさんが抱きついてくる
「私が見張ってるから、ゆっくり休んで良いわよ。」
そう言ってソフィーさんがモグラさんが開けてくれた洞穴から出て行く。
私はシルさんに抱きつかれて眠る
ちょっと苦しかったけど暖かかった。
どれぐらい寝ただろうか?
まだ洞穴の外は明るいので夕刻には早いようだけれどチラチラと雪が降っている
モグラさんが置いて言ってくれた毛布のお陰で休むことは出来たがやはりそこ柄出ると寒い
洞穴から出て、火を起こす
するとソフィーが降りてくる
「休めたかしら?」
「はい、だいぶ休めました。」
「よかったわ、起きがけで悪いんだけど私にもごはん作ってくれる?お腹空いちゃったわ」
姫さま達と別れて数日、私はご飯に魔力を込める方法をシルさんに教えてもらっていた。
「うちの子になりなさい!」
トルダワに入る前の夜に私がご飯を作るとソフィーさんがそう言ってくれた。とっても嬉しかった。
残りのベーコンに魔力を込めてソフィーに渡す
「うんバッチリね、魔力の濃さが絶妙よ。」
まぁベーコンは焼いただけなので味を褒められてもしょうがないけれど、魔力をの濃さと言われても自分では良し悪しがわからないのでなんとも言えない。
「ファルちゃんより上手なんだから自信持っていいのよ」
シルさんのお姉さんのファルさんを引き合いに出されるがそれこそあったことが無い人と比べられてもよくわからない。まぁ褒められて悪い気はしないのだけれども。
ベーコンを平らげるとソフィーもちょっと休みたいと言って私に見張りを頼んで洞穴に入っていく。
見張り、と言っても黙っていたのでは寒くて仕方ない。
モグラさんもいつ戻ってくるかわからないので足りなくなったら大変だから薪になりそうな木を集めることにした。
薪を集めていると街道で馬が走って来るのが見える
私はさっと木に隠れる。
馬は私のそばを通り過ぎる
「ふう」
私が緊張を解いた瞬間その馬が急に暴れ出す
乗っていた人が振り落とされる
私は思わず駆け出して声をかける
「大丈夫ですか?」
「イタタタァ、お尻打っちゃったけど大丈夫。」
女の人が腰をさする
私はすぐに暴れた馬を落ち着かせる。
「この子かなり若い子ですね、あまり無理をさせたらダメですよ」
「そうなの、ごめんなさい、馬のことは他の人に任せて居たからあまり詳しくなかったの、気をつけるわ」
「少し休ませた方がいいです、ちゃんと落ち着くまで。お姉さんも休んだ方がいいですよ。急がば回れです。」
「ありがとう。そうね、そうするわ。」
「今お水持ってきます。待っていて下さい。」
そう言って私は洞穴に戻る
兵士の人じゃ無いけどソフィーに話しておいた方がいいかな?
私はソフィーに声をかけ事情を説明していると
後ろから声が聞こえてくる
「ほんと急がば回れよね?トレントの反応が沢山消えたからトルダワに向かう途中だったんだけど、前に休んだ事のある辺りでその子に出会うだもの、もしかしてって思ったら、ちょっと安易だったんじゃ無い?ソフィーそれにシル。」
振り向くとさっきのお姉さんが洞穴の入り口に立っていた、先程と変わらず優しそうな顔をしている
「リンちゃん、シルちゃんを起こして。」
そう言うとソフィーさんがお姉さんの前に出る
「久しぶりね、ファル。元気そうでなによりよ」
シルさんのお姉さん!
「あらあらシル、大丈夫?怪我してるの」
シルさんが起き上がる
「おっお姉ちゃん!?」
「シルが無事でフーセと剣狼が見当たらない。剣狼はルルの方にいたと考えてもフーセが貴方から離れるとは考えにくい、と言うことは首からかかってるそれ核よね?もしかしてそれがフーセかしら?」
息を飲む
「正解かな?まぁ良いわシル帰りましょ?迎えにきたわ」
私はお姉さんの前に両手を広げて立ちふさがる
「ごめんね、乱暴なことはする気は無いから安心して。ねっシル」
そう言ってシルさんに笑いかける
「この子には手を出さないで」
そう言ってシルさんが立ち上がる
「もちろんよ、でもこんな小さい子をこんなところに置いていくのは心配だわ、一緒に王都に来た方が安全だと思うけど?」
「ソフィーがついてるから大丈夫よ、ねっお姉ちゃん」
「あらあら、言うようになったわねシル、でも交渉としては成り立ってないわよ」
そう告げた瞬間、お姉さんが崩れるように倒れる
「あら?私がこうしてしまえば動けないのじゃなくて」
ソフィーさんがお姉さんを重くしたようだ
「そうね、でも貴方がたも動けないじゃない?それとも誰か助けに来てくれるのかしら」
「ソフィーやめて、お願い。」
シルさんが止める
「お姉ちゃん私が黙ってついて行くからこの子とソフィーは見逃して。お願い。」
「そうね、さっきこの子には助けられたしね。わかったわソフィーも今は見逃してあげる、ただ剣狼とルルに伝言を頼めるかしら?」
「なに?」
「貴方たちの願いを叶えるにはもう時間はない。早くいらっしゃい。って言えばわかるかな。」
「どう言うこと?」
「本人達に聞いてみたら?シル、いらっしゃい。」
「シルさん!」
私はシルさんの腕にしがみつく
「ありがとう、大丈夫だよリンちゃん。この人私のおねぇちゃんなんだから…大丈夫。」
そう言って私の頭を撫でると洞穴から出て行く。
お姉さんはシルさんの怪我を本当に心配しているように見えた
そんな姿を私は黙って見送る
どうしたら良いかわからなかった
ただわかることはある。
また私は失敗した。
私が余計なことをしなければ…
涙が溢れた
ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。




