4-16 トルダワの滝
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーモグラ
姫様に女、子供のお守りを任される
私が逃げるかもしれないと言う保険であろうか?
いや、これはカイが言い出した事。
彼とは有効な関係を保ちたい、頼まれた仕事は効率よく迅速に対応したいと考え、1人でいいと否定してしまった
その後姫にも言われ直ぐに承諾したがあれば失敗だったな、あれでは姫よりの人間になってしまったと思われても仕方ない。今後の対応の仕方を考慮しねばなるまい。
私は今森を走っている
馬に乗っているわけではない
割と良いスピードで自らの足で走っている
女、子供を連れての旅。私1人なら4日も有ればつくだろう、おそらく1週間はかかるだろうと予定していたが…
「シルさん、私も飛んでみたいです。」
「ダメよー私剣狼に1人で乗れないもの、後で休憩の時に貸してあげるからその時ね〜」
娘たちは普通に私のスピードについて来る。
正確にはオオカミとフクロウとマントの力なのだろうが、それでも年端もいかない娘たちに余裕でついて来られるとなんとも言えない気分になる。
「それにしてもモグラさん速いですね。」
横に並んで笑顔で話しかけて来る小さい娘
「普通だ」
そう返すと狼が言ってくる
「もっと出しても良いぞ、遠慮せんでもいい。」
「わかった」
速度を上げる、全く遠慮はしていないのだが、そう言われてしまうと出さないわけには行かないと思ってしまう、まだまだ私も未熟の様だ。
これでは4日どころか3日でついてしまう。
〜〜〜〜〜〜
3日目の夜トルダワ湖の近くまでたどり着く
「偵察に行く、ここで待っていろ」
2人を3日目のキャンプ地に残し先にトルダワ湖の様子を調べに行く。
姫の話ではフーセと呼ばれる少年達が始め拠点としていた場所、何かしら見張りなどを置いている可能性が高い。
人数などが分かればこちらも動きやすいのだが…
月明かりの中トルダワ湖周辺を警戒しながら移動する
辺りは静かだ…無論虫の声や動物の声は聞こえるが人の気配はない
聞いていた丘の上の家にたどり着くがやはり人の気配はない。この後もトルダワ湖の森、森の入り口、見晴らしの良いところ、各地を見て回るも、人の気配は無かった。
夜中になってしまったがキャンプ地に戻る
娘達は私の作った洞穴の中で就寝した様だ。洞穴の前で剣狼が見張りをしている。
「どうじゃった?」
「誰もいない。変わった様子もない、逆に不気味だと感じている。」
「北で姫達が見つかったという話だ、そちらの方に行ったのかも知らんの。」
「いずれ、丘の上の家に入るのはやめた方がいいだろう。」
「同感じゃな、こがらす、ボスコミュールはどこにあるんじゃ?」
「南西にある滝の裏よ」
家の丁度対岸の方か…
「誰もいないのが気になる、このまま娘達を置いて取りに行きたいと考えるが?」
「それは無しでお願いしたいです。」
洞穴のから大きい娘が顔を出す。
「ソフィー、そこにガジュさんのお墓があるんでしょ?」
「ええ…そうね。」
「今から出発でもいいのでお願いします。連れて行ってもらえませんか?モグラさん」
「モグラさんに着いて行けと言われました。」
小さい娘も起きてきてそう言う
こういう時に無視して置いて行くとろくなことにならないと私は知っている、仕方ない。
「わかった、行くのは日の出と共に。」
そう言って私は木に体を預けて座る
「ありがとうございます。」
そう言って娘たちも洞穴に戻って行った。
〜〜〜〜〜〜
日の出、湖は霧で覆われる。
2人の娘は狼に乗り付いてくる。
「ここよ。」
滝の横に小さな穴がある。
「私はここから入ってるけど、ここを掘ってくれる?中は広いから大丈夫。滝を通り抜けても行けるんだけど…この時期の水量じゃちょっと無理ね。」
確かに打ち付ける水しぶきが高く広がる、あの水量を受けるのは、なんとか私であれば行けるかもしれないが娘たちは無理であろう。
小さい穴を広げる。
冬という事もあり中は氷の洞窟となっていた。
「光の眷属よ盲目の時を解き放ち我を照らせ!ブライトフォール」
「こっちよ」
丁度滝の裏にこんもりとした小山が4つ並んでいる…墓か…
「右がシーラとドルジュ。その隣がゴーム、ガジュのお父さん、その隣がミーナ、お母さんね、一番左がガジュよ。」
「そうか、あやつらはつがいになっておったか。」
「ガジュの、おじいさんがボスコミュールの使い手だったの。」
娘たちが用意していた花を4つの束に分けそれぞれに備える。
無粋なのはわかっているがどうにも落ち着かない、
「それでボスコミュールは?」
「こっちよ」
墓の後ろの坂を登ると、大きな斧と言うよりはバトルアクスが滝の裏でトルダワを見守る様に突き突き刺さっていた。
「かなり重いわよ。」
ボスコミュールを持ち上げる。なんとか持ち上げる事は出来るがこれを振り回すとなるとドルジュなる人物はどれほどの筋力であったのだろうか?武器マスターと呼ばれるアサヒでもこれは無理だろう、アソーマなら何とか使えるかもしれないが黙って剣を持った方がいいかもしれない。
「これ持って行くの?無理じゃない?」
「ソフィーさんなら軽くできるんじゃないですか?」
「そうね、できるわね。」
ボスコミュールにフクロウが止まる
「どれ?あっこれなら私も持てる。リンちゃんも持てると思うよ」
「ほんとだ!どうです!カッコいいですか?」
「ウフフ、ギャップ萌えね。」
「これで剣狼さんに乗れますかね?」
「何だろうそうなると金太郎みたいね」
「えーヤダァー」
「私が預かる」
そう言ってボスコミュールを能力を使い、しまう。
「前から気になってはおったがその能力は…」
「…」
「言う気は無いと、今はまぁ良い。商売のタネじゃろうしな、いずれ話してもらうかもしれんがな。」
「ここを出よう、どうにも胸騒ぎがする」
「はっはい」
そう言って滝の裏の洞窟から出る。霧が晴れ日が完全に出ている。
「次はタアキ村ですね。」
「直ぐに…」
そう私が言いかけた時遮る様に狼が叫ぶ
「避けろ!」
とっさに後ろに飛ぶ、自分のいた場所に…木?尖った木の枝が突き刺さっていた。
「トレントじゃ…しかも…」
辺りを見渡すと木の魔獣が三体…
「上にも、崖の上もうねうねしてる枝が見えます」
上に何体いるかはわからないが、あそこを崩されたらまずいな。
「とにかく、ここから離れる、上を崩されたらまずい、リン、シル儂に乗れ、コガラス、モグラについてやれ。」
慌てて娘たちが、狼にまたがる
「殿任せるぞモグラ、2人ともしっかりつかまっておれ、飛ばすぞ」
そう言うと狼がトレントの間を枝を避けながらすり抜けて行く。
無数に飛び交う枝を切り分け突破するが…
突破した先にも新たなトレントが現れる
どうなっている、何処からこんなに湧き出した?
行く先の地面を見るとあちらこちらで地面を掘り返した様な跡がある。
「やっぱりあれかしら?木だけに光合成できる日中しか動けないみたいな?」
ダガーとなったフクロウがそう言う
やはり夜のうちに私1人で来るべきだった。
後悔してみたものの、もう今からどうこう言っても仕方ない
「くそ、数が多すぎるわい」
「きゃぁー」
大きい娘の足にツタが絡まり持ち上げられ…そのまま地面に叩きつけられる、
「シルさん!」
再び持ち上げられた大きな娘に向かい、尖った枝が襲いかかる
「しもうた」
その時娘の首飾りが光る
「ヴァィンヴォルドゥーー!!!!」
襲いかかる無数の枝を破壊する
「ゴーズメル」
娘に絡まったツタを焼き切り娘を抱きかかえる
「フーセさん!!」
「剣狼、リンちゃん。シルを頼む。」
そう言うと娘を狼の背に乗せる
「えっと、モグラ君?時間がねぇから挨拶は後回しだ、ここを突破するにはトレント破壊しまくるしかねぇが、それじゃ森が死んじまう、さっきの滝の洞窟に戻って夜までやり過ごそう、剣狼とリンのアシストしてやってくれ。トレントは俺が何とかする、ボスコミュールとソフィーをくれ」
まるでトレントを破壊し尽くせるともとれる発言、この少年にそんな力がある様には見えないが、今はそれにかけた方が良さそうだ。
ボスコミュールを出す
「あっこれまじかほんと重いや、ソフィー!」
「はいはい」
「よっと、そんじゃとりあえず、滝に戻るためにあっちの二体から!そぉーりゃ!」
一瞬でトレントの幹までたどり付き斬りかかる…が、
「何だよ、全然きれねー」
「軽くしてるからね、普通の剣で切ったのと同じよ」
「そっかーじゃぁソフィー悪いけど主導権貰うよ」
「しょうがないわね」
「そぉーれ!」
トレントが幹で両断される。
「こっちも!」
二体目も切り倒される
「スゲーなこの斧!薪割りしてるみてーだ!ケンロー、モグラ君、いくよ!こいつらのコア壊してないからまた復活しちまう」
倒した二体の間をすり抜けて滝に進む
「牙山城切!」
追っ手を遮るように巨大な壁が出来る
「やっべ!これでやるとめちゃくちゃでかくなっちまった」
「フーセ!これじゃ森がめちゃくちゃになっちゃうじゃない、それ禁止!」
「ごめんごめん、今度は手加減するから。ソフィーもっかい主導権貰うよ。」
「一刀閃刃!」
崖の上にいたトレントに放つ
上から木の上半分が落ちてきて大きな水しぶきが上がる
「コォラァー考えてやらんかぁー!」
「大丈夫!コアは壊してないから…」
「そっちじゃなぁーい!」
めちゃくちゃだ。話には聞いていたがめちゃくちゃだ。
洞窟にたどり着く
「モグラ君!埋めちゃって!」
洞窟の入り口を塞ぐ
「これで一安心かな?」
「一安心じゃぁなぁーい!馬鹿たれ!この寒空で水浴びをさせるとは何事じゃ凍え死んでしまうわい」
「フーセ!城切でひっくり返した地面ちゃんと戻しなさいよ!」
「フーセさん元に戻れたんですね!よかった!でもどうして?」
オオカミ、フクロウ、小さい娘が少年に詰め寄る
「悪かったよ、久々ってのと今の状態に慣れてないんだ力加減がわかんねーんだ」
「今の状態?」
「今の俺は俺だけど俺じゃねぇ」
「はぁ?」
「核になった力だよ、なんて言うんだ?魔力の塊?具現化?そんな感じ。」
「はぁ?」
「とりあえず核の力で一時的にこうなってるだけだってこと、シルに魔力核にもっと込めてくれって言っといてくれ」
「そうだシルさん!」
「大丈夫、多分捻挫と打撲はしてるけど気を失ってるだけだからもうじき目覚めると思う。」
「やっべそろそろ魔力無くなりそう、わりーけどあと頼んだ、モグラ君?2人をお願いね」
「そんな!フーセさん!」
「リンの魔力も貰ったぞ、こうなってわかったけど、かなり皆んなより濃い魔力だ、修業したらルルねーちゃんなんて目じゃないぜ!そうだ、リン。会話の核を使えばトレントの核の位置がわかると思う、夜なったらそれで出来る限りで良いから核に矢を打って破壊してくれ、元の木に戻ると…」
バシュゥ
音と共に少年が大きい娘の核に吸い込まれていく
「あっ!」
慌てて小さい娘が駆け寄り核に魔力を込める
「ありがとうございます、フーセさん。」
小さな穴を開け外を確認するがトレントはまだ辺りを徘徊している、穴を掘ってまで追撃はしてこないようだ。
夜になって動きが止まらない様なら時間はかかるがトンネルを掘って森を脱出するしかないだろう。
なんとも嵐のような少年だった。
私としては彼のようなものには関わりたくない
眩しい光の中では逆に影が目立ってしまうからだ。
具合悪くて更新遅れました申し訳ないです。
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