4-10 七星剣 アルテ
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーールル
ついてしまった。
お城に比べたら実際はそうでもないのだか屋敷のドアが大きく見える。
「マーダン」
コクリと頷いてノックする。
「王国第2部隊隊長。クー・マーダンです。フージ・アストレア様にご面会賜りたい。」
執事が出てきて、マーダンが事情を話している。いざ屋敷に入るとなると、モグラと剣狼とソフィーが屋敷にはいることを辞退する。
動物の姿でいられず、剣になっても預けられる、それはお断りだという事だ、モグラ君は…まぁいいわ。逃げたな、と思ったがしょうがないと言えばしょうがないでしょう。
応接室に通され、夫人を待つ。私とシルの緊張が伝わったのか誰一人口を開かない。とにかくファーストコンタクトがなによりも重要だ。
ノックの後扉が開き、夫人が入ってくる。
「フージ・アストレアです。お待たせいたしました。」
そう言って礼をする。
「急な案件にて突然の訪問をお許しください。お久しぶりです。ルル・ムスシタナ・ホルンです。」
続けてシルちゃんが挨拶する
「フージ夫人、お久しぶりです。シル・ファリーゼです。」
「ファリーゼ?」
ぴくっと夫人の眉が上がる。
「ルル王女、よくお越しくださいました。お急ぎの案件だと思われますが…」
…が?
「その前に少しお話ししなければなりませんね。貴方たちの元教育係として。」
やっぱりキタァ〜
夫人がため息のように息を吐くと目が見開かれるす
「シル?貴方ファリーゼと名乗りましたね?」
私じゃなかったぁー
「はい、今はファリーゼ家にお世話になっています。」
「つまり貴方は王族ではなくなったの。その理解はある?。」
「はい。」
「例え名門であろうと、王族の方と同列の席に座る。これはどう思いますか?護衛であるマーダン隊長はわかります。貴方も護衛ですか?」
「いえ違います。」
「ならば貴方はどうするのが正解ですか?」
シルちゃんが静かに立ち上がりソファーの後ろに立つ。
「よろしい。私は恥ずかしいです。しっかりと教え込んだつもりでしたが、その子、なんていうのかしら?」
後ろにいたリンが一歩出て挨拶する。
「はじめましてアストレア夫人。リンと申します」
「はじめまして、リン。貴方はしっかりと作法ができていますね。それに比べて、貴方がたは」
うわぁやっぱり私にも来るんだ。
「ルル王女、貴方は上に立つお方です、貴方が連れて来る人を指導する立場にあるんですよ?お分かりですか?」
これは長くなるな…
夫人の話は続く、どれほどの時間が経っただろうか?帰りたい。
話に一区切りがつきそうなタイミングでノックされる
「お茶をお持ちしました。」
ぜったいタイミング計ってる、いいからもっと早く入ってきてよ。
「まぁ小言はこれくらいにしましょうか。要件を聞きましょう。」
「王都の現状はご存知ですか?」
「そういえば定期連絡がこないわね、しばらく王都にはいっていないからわからないわ、何かあったの?」
「クーデターです。私たちは王宮の奪還の為に動いています。兵士達も使われてしまい今私達には捜索がかかっています、いずれここにも来るでしょう。」
「成る程、匿って欲しいという事ですか?」
絶対にここに居続ける事だけは嫌だ。
「いえ、奪還の為の戦力として七星剣アルテを借り受けたい。」
「アルテですか。何故ここにあると?」
「他の七星剣が教えてくれました。」
「アルテですか、何年も前に族によりアルテの宝玉は失われていますがそれでも?」
大丈夫です。宝玉はここにあるから。それを言うと面倒くさくなりそうなので黙っておこう。
「はい、どうかお願いします。」
「はいわかりましたと言いたいところですが、アルテはアストレア家の家宝です。はいどうぞと渡すわけにはいきません。今のお話の確認もしなければなりません。今日はこちらにお泊りなさい。よろしいですね?」
「ハイ。」
なんてこと、パッと貰うもの貰って出たかったのに!?
「ガトー、皆様にお部屋の準備を。」
「かしこまりました。」
「では、ルル、シル、そうねリンもおいでなさい。」
「どっどちらに?」
「私の私室です。」
はい、終わったーゴメンねリンちゃんおねぇちゃん達が不甲斐ないばっかりに。これから向かうのは拷問部屋。いえ虎の腹の中。
夫人の後に続き部屋に入る
「お座りなさい。」
そう言われて座る私の後ろにシルとリンが立つ
「もういいのよ、シルとリンもお座りなさい。」
私とシルが目を見合わせる
「ここはもう公式の場では無いわ、気楽にして良いわよ」
シルとリンが私の横に座る
「クッキー食べる。もう一度お茶を用意させるわね」
「えっと…お説教があるんじゃ…?」
「そうねー、沢山ありますよ聞きたい?」
ブンブンと首を振る
「まぁもう私は貴方達の先生ではありませんからね、貴方達が出来ても出来なくても知った事ではありません。」
じゃあさっきの小言はなんだったんだ?
「まぁ点数をつけるなら、75点かしらね。ほとんどがリンのおかげだけどね。貴方ほんと素敵よ。でも、従者ってわけじゃ無いのよね?」
「両親を亡くした私を姫が連れ出してくれたんです。」
「ごめんなさい、リン、悲しいことを思い出させてしまったわね。」
そう言って夫人がリンを抱きしめる
「良い御両親だったのね。貴方の所作を見ていればわかるわ、ルルやシル、他の方にも気づかいを忘れず、一歩下がって全体を見る。うちの従者がドアの前で待機してるのも気づいて、入って来ると同時に手伝いに入ったわね。とても素晴らしい。」
「ありがとうございます。」
「ところでルル?アルテは誰が使うのかしら?」
「カイ君か、マーダンかな。」
「マーダン隊長?まぁ使えない事はないでしょうけど、もしかして勘違いしてないかしら?」
「勘違い?」
夫人が壁を指差す
「あれがアルテよ」
壁には立派な弓が掛かっている。
「七星剣って弓も有るの?全部剣じゃないの?」
シルちゃんも初耳のようだ。
「私の見た所弓兵はいなかったけれど弓を使える人いるのかしら?ましてやアルテは魔術を矢として打ち出す弓。魔術にもたけて居ないと扱えないわよ。」
なんてことだ、弓も魔術もできる人間…
マーダンは却下ね、イルナ…は使えそうだけどヴァルハラの方が相性良さそうね。カイ君、弓は使えるだろうけど魔術はダメそうだ。モグラ君は…やっぱり違うかな。
私?弓はダメだやったことがない。
「シルちゃんは?弓。」
「やったことあるけど全然ダメ。」
「弓なら、山で使ってたんで出来ます。」
リンちゃんが手を挙げる
「リンちゃんなら魔術も行けるこれはもしや行け…ダメでしょリンちゃんに戦わせるなんて」
「持って言っても宝のもちぐされの人たちにアルテは貸せませんよ?まぁ明日皆さんの腕を見せてもらって合格する人がいればお貸ししましょう。」
なんてことだ、アルテが弓だったなんて、これは馬車に残っている3人にお説教だ、あの3人はぜったい知ってたのになぜ言わない!
七星剣、アルテ。
借りる為には誰かが、テストに合格しなければいけない。借りてしまえば後から誰に使わせようとこっちのも。とりあえずイルナに期待することにしよう。




