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剣狼の願い  作者: クタクタニ
第4章 七星剣
47/83

4-9 モグラ

初評価ならびにブックマークありがとうございます。読んでいただいている人がいるという事が活力になります。頑張って更新するのでよろしくお願いします。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーモグラ

私はモグラ君、王都の情報屋であり、今の王都で起こっている異変を調査していた。


調べている最中、王都商業連合のトップ、ファイブアイズのカイから連絡が入る。


金の動きは何よりも得難い情報である。昔から王都の商業連合の情報を集めるために仲良くしていたファイブアイズの倅がまさかここまで大物になるとは思わなかったが…


依頼内容は、反逆の首謀者と言うことで先日処刑が言い渡されたマーダンの調査。


調査報告をしたところ、救助の手伝いも頼まれる。こちらから追加条件を出す、クライアントを教える事。マーダンを救助すると言うのだ間違いなく今回の騒ぎを知る人物に違いない。


しかしまさかそこでルル王女と出会うとは思いもしなかった。


今回の騒動、王女が城に戻ったその日に起こっている、王女が騒ぎの元凶ではないだろうがそれに近い所にいるのは間違いない。


騒ぎのあった日、姫がどうやったのかは不明だが、全ての兵士に向けてセリスとファルの脅威を伝えた。この事からも間違いなく姫は全てを知っている。


直接聞くのも手で有ろうが、敵味方がわからなくなるこの状況で素性を明かすのは危険。何より私は影、誰にも正体を見せない影、例え姫であろうとも自分の素性を話すことはない。しばらく姫に同行し。状況を把握する事にしよう。


「はじめまして、ルル・ムスシタナ・ホルンよ」


そう言って握手を求めてくる姫

今の私は土を這いずり回るモグラ、平民以下のモグラ、その役を演じる、その為に姫の握手を断るが

顔をぐっと持ち上げられ目を覗き込まれる。


姫さまが小さい頃、同じようなことがあったなと思い出す。

王宮では私は顔を隠している。幼き姫は一時期私のマスクを剥がそうと躍起になっていた。余りにひどいために私は姫と向き合い、顔を姫に近づける。喜んでマスクに手をかけた姫に私は言う

「私は影、そのマスクを取られると、私は影でいられなくなる、その時は私はここを去らねばなりません。」

そう言うと幼い姫は私の目をじっと見つめ。

「それはダメ。」

と言って手を離した。


まるでその時と同じようだった姫は変わっておられない。


マーダンの救出は私の力を使いうまくいく。後からわかったがこの力を可能としている玉は姫さまたちが言う核と同じ物のようだ。今は告げる必要はない。


トンネルを抜けると、マーダンの殺気が跳ね上がる。

私は思わず姫の救出に入る。

私が入らねば姫は死んでいた、力は見せずにいたかったが仕方ない。しかし死にかけたと言うのに堂々とした立ち振る舞い。姫は常に死を覚悟しておいでのようだった。上に立つ存在として立派になられた。


マーダンが正気を取り戻し、私は姫からは共に行動するように言われる。こちらとしては内情を知るには入り込んだ方が良いのだが、私の手の内を姫はともかく他のものに見られるのは好ましくないので断ってみた、が、それを良しとするお方ではなかった。姫に認められたからなのか、この時からカイが私をさん付けするようになる。カイからはこれからも情報をもらわねばならない、関係を修復する必要があるだろう。



この後ホークの森に向かう事になり、トンネルを進んで行くと店側から笛の音が聞こえてくる。


「どうやらついに店に兵士達が来たようです、恐らくマーダンさんのことがバレたのでしょう。」

カイが静かに目を閉じる


「親方さんやおかみさんが!」

リンという娘が取り乱す。


「大丈夫、親方や、おかみさんには店を守るな、と伝えてあります、詳しいことは2人にもはなしていないので洗脳されようと情報が漏れることはないでしょう。」


「でも!」


「リン、大丈夫。王都の商人は横のつながりが強いんです。店のみんなに危害を加えようものならばタダではすみませんよ。しかしこの笛が鳴った時点で店側のトンネルの入り口は塞がれます。王都には暫く戻れなくなりますね。」


カイとの関係修復もある。ここは優しい言葉を伝えた方がいいだろう

「俺、イル、アナ、また掘れる。」


「ありがとう。その時はお願いします。」


「トンネルがバレないという保証はありません、急ぎましょう。」


北の森に出る。出ると直ぐに


「モグラさん念のため、ここを塞いで貰えますか?」


「わかった。」


私は力を使い土をだし、トンネルを埋める。

この玉には生命が無いものを吸い込んだり、出したりできる能力がある。いろいろ試したがあのトンネルを開けるための岩土も全て吸い込めるだけの容量はある。また出すこともイメージ出来れば容易に指定したものが出てくる。あくまで生命が無いものなので死体ならば収容も可能であるが草花であっても生きているものは吸い込めずそこに残る。



「行きましょう。」


チラチラと雪が降ってくる。寒くなりそうだ。


〜〜〜〜〜〜

私、マーダン、カイの3人で交互に手綱を持ち、ホークの森の近隣へたどり着く。


「アルテはどこにあるの?」


「このまま森沿いに進めば屋敷がある。そこにあるわい」


森沿いの屋敷…ここらの領主ノースの館か…今の領主はフージのばーさんだったはずだ。また面倒なところにあるものだ。


「フージさんのとこかしらね。だとしたら…めんどくさそうね、はぁー」


「どうして面倒なんですか?」


「女性に厳しい方なのよ。私も昔たいそうお世話になったわ。」


「ルルちゃん、私外で待ってるわ、お願いします。」


「私はそれでもいいけど、いいの?もしバレたら」


「行きます。いや…行くの?マーダンさんやカイ君に任せられない?」


「ダメよ、こいつら絶対私の名前出すもの、そしたらなぜお前がこない的な流れになるもの。そっちの方が怖いわ。覚悟を決めましょう。」


「私出来るかな…?」


「やるしか無いのよ。昔を思い出して…」


「思い…だす?いっいや!私はもう王族じゃ無いの平民なの…」


シルがガクガクと震えだす。


王族のしつけを請け負っていたフージ。かなりトラウマを追っているようだ。これはなんとも助けようが無い。


ようやく覚悟を決めたようで立ち上がり挨拶の練習をし始める2人。


私はこの格好では追い返されるのが目に見えている、大人しく馬車で待つとするか。


2人の練習は屋敷が見える直前までつづいていた。


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