4-8 進むもの追うもの
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーシル
マーダンさんを馬車に乗せて飛び出して行ってから約1時間を過ぎた辺りでルルちゃん達は戻ってきた。
「たぶんもう大丈夫だと思うんだけど、気絶しちゃったから確かめられないのよね。」
マーダンさんは縄でぐるぐる巻きにされていた。
「運ぶのも面倒だし、その辺に寝かせておきましょう、イルナ、リンちゃん、お疲れ様。貴方たちは先に休んでて良いわよ、行ったついでにカイ君にここにきてもらうよう伝えてくれる?」
「はっはい!わかりました。」
リンちゃんはすぐにそう返事をするが
「私はここに居ます。」
イルナさんはマーダンさんが心配なようだ
「仕方ないわね、でも直ぐには目を覚まさないと思うわ、とりあえず一度汗を流していらっしゃいな、スッキリしたらまたいらっしゃい。」
「ですが…」
「これわ命令。何もここにいるなって言ってるんじゃないの、そんな張り詰めた状態を続けるなって言ってるの。リフレッシュしたら戻ってきなさい。」
「はい…」
渋々中に入っていく
「ルルちゃんは休まないの?」
「休むわよ、カイ君や剣狼が来たら見張りを頼んで私も休むわ、魔力いっぱい使ったから疲れちゃった。」
「マーダンさんは、大丈夫なんですか?」
「目を覚まさないとなんとも言えないわね。カイ君たちが来たら説明するわ」
そう言っているとカイ君とケンローとソフィーがやってくる。
「どうですか?」
「まずはここから1キロごとにマーダンの頭に魔力を打ち込んでみたわ。」
「反応的には5キロを超えた辺りで奇声は出さなくなったけど念には念って事で出口付近まで行ってもう一度打ち込んだら完全に気絶しちゃったわ」
「それってマーダンさん大丈夫なんですか?」
「ヘーキよ!拷問に耐える訓練もしてるはずだし、この程度で壊れるやつじゃ無いわよ。」
そんな人が気絶までしてるんだから心配なのだけれども…
「まぁ念のため気絶した時点でひん剥いて体は調べてみたけどマーリンみたいに変な体にはなってなかったわ」
ルルちゃん…貴方姫様なんだからもうちょっと方法とか言い方とか…と思ったが。言うだけ無駄なのは知っている。
「あとは目を覚ましたらどうかって所ね。操りの核に近づくと再発するって可能性もあるわ。」
「ルルちゃん…あのね、それ賢智の核で調べられないかな?」
みんながこちらを目をみる
そしてルルちゃんに視線が移動する
「そっそれもそうね、そうしましょう。」
私が直ぐに言えばよかったんだけど、チャンスがなかったの。ごめんね、マーダンさん
早速賢智の核で調べるルルちゃん
単純な命令ならば操りの核から5キロ離れた所で魔力を込められた量を相殺すれば洗脳が解ける。と言うことがわかる。単純じゃ無い場合、洗脳されている場合は距離は意味を成さないようだ。要はおねぇちゃんを元に戻すには例え操りの核から離れて魔力を打ち込んでも解除にはならないと言うことか…ただし方法は何かあるようだ。引き続きそれについては調べてみるとルルちゃんは言っていた。
…と言うことでマーダンさんの縄をときモグラさんにお願いしてベットまで運んでもらう。フーセが居たらあいつにやらせる所だけど…
「一人でできるかよ!シル!お前も手伝え!」
そう言われそうだな…胸元の核を指で弾く。核は水色になっていた。
〜〜〜〜〜〜〜
1日たってマーダンさんが目を覚ます
助け出された事は覚えているが姫を見てからの記憶が無いようだ。
「やっぱり、私がトリガーか。」
「私が姫様を…皆さん私を止めてくれてありがとう。死んでお詫びを…」
「こらこらこら!それじゃあなんで貴方を助けたか分からなくなるでしょ!それに十分罰は与えたからもういいのよ。」
「いえ!私はそんな罰を頂いた覚えはありません。なにとぞ私に罰を…」
みんなが、じとっとした目でルルちゃんを見る。気絶するまで頭に魔力を打ち込まれて罰にはならないといわれたら、じゃぁいったいなにが罰となるのか
ルルちゃんがコホンと咳払いをして話を続ける
「マーダン、私たちははっきり言って今かなり危機的状況にあります。貴方にはこれから全ての戦いの先頭に立ってもらわなければならないでしょう。罰と言うならば貴方にはこう告げます、これから貴方には一切の敗北を禁止します。死ぬことも許しません。私たちを守り続けなさい。良いですね」
「クー・マーダン。確かにその罪承りました。」
「マーダン、今までの事はイルナから説明を受けてちょうだい。とりあえず今は出発までに体を万全な状態に戻して。」
そう言ってイルナさんとマーダンさんを残し部屋を出る。
応接室移動し、リンちゃんが入れてくれたお茶を一口飲んだあとカイ君が口を開く。
「では、これからのことを話しましょうか。」
「その前に、良いかしら。」
カイ君を止めてルルちゃんがモグラさんを見る。
「まずはマーダンとの戦いで助けてくれたモグラ君にお礼が言いたいの。とっても助かったわ、貴方が居なければ私はマーダンに切られていたかもしれない。」
「いっいや…」
モグラさんがブンブンと手を振る
「貴方にはお礼をしなければならないわ、もう、これでもかって言うくらい。」
「い、いや…」
モグラさんはまたブンブンと手を振る
「ダメよ、お礼をしなくては!私も王族として礼を尽くさないのは恥ですもの、でも、いま。私は直ぐに貴方に渡せる物がないわ、だからね。貴方も一緒に来なさい。私が国を取り戻せたならば報酬は思うがままよ。」
モグラさんはさらに早く手を振る
「私のお願いがきけないのかしら?」
ピタッとモグラさんの手が止まる。
「そうよね?私の側にいたいわよね、モグラ君。大丈夫約束は守るわ、一般人の英雄には出し惜しみのない栄誉と財を送るわ。」
カイ君がビクッとする、そして口を開く
「もっモグラさん、ここは姫様についていってはどうでしょう?姫様に見初められるなんてとても栄誉なことです。私のことなど気にせず。是非是非」
「安心してカイ君、モグラ君にはちゃんとお礼が出来たら貴方の元に返すから」
「いえいえ、モグラさんの力は姫様に非常に役立つはずですから是非お側に置いてあげてください。ねっモグラさん」
「ハハハ」
「ふふふ」
また二人が見つめあって笑い合う。何が起こっているんだろうか。
「じゃあ話の続きをしましょうか、これから再び七星剣を集めに行きましょう。残り4本ね。マーダンがいなくなった事で騒ぎになるおそれもあるし王都からはできるだけ離れたいわね。」
「ならば北西のホークの森に行くのが良いじゃろう。」
「ホークの森か…温泉があったわよねその辺り。」
「こちらから行くと目的の七星剣アルテがあるほうが近いからそれを取って向かう事にはなるがの。」
「余裕が有れば行きましょう。余裕が有れば。」
「シルさん、温泉って何ですか。」
リンちゃんが私に聞いてくる
「なんて事!リンちゃん!温泉に行ったことがないのね?それはいけないわ、大人としてそれは行かなくては行けません。」
「そうじゃ!大人として!温泉の素晴らしさを伝える義務があるんじゃ!よく、言った。良く言ってくれた。」
二人共行きたいなら行きたいって言えばいいのに。
こうして私たちはホークの森へ出発する事となる。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーファル
片腕を失った状態でマーリンが帰ってきた
「どうしたのその腕。」
「分からないの。光が走ったと思ったらこの通りよ。」
「わからないまま帰ってきたの?マーリン」
「私の腕だけじゃないわ、シーバード山が消えたのよ。」
「山が消える?どういう事?」
「言葉通りよ、まるで撃ち抜かれたように半分より上が綺麗さっぱり無くなったわ。」
「詳しく話せ。」
マーリンの話を聞き、セリスが目を見開く。
「そうか、シルがそのような力を。確か核になりかけていたな、山を一つ消失させる力。素晴らしいな。欲しい、欲しいぞ、その力。本人が光り輝いたという事はおそらく既にシルは核になっているだろう。奴らを探せ!何としてもその核。消滅の核を手に入れろ!」
「分かりました、ですがフーセと言うよりはあの子が持ってる核の力が厄介で周りのお姫さんとかも核を使うし、生け捕りは難しいんですよね、私も片手になっちゃったし。」
「セリスに口答えするの貴方。」
「ファル、よい。今私はとても機嫌がいい。まず核が手に入るならば生死は問わん、何としても手に入れろ。そうだな、ファル。妹を迎えに行ってやれ。ついでに他の核も回収しておいで。」
「私はセリスの側に居たいのに。」
「しばらくはこの国の制圧に力を入れる。春までにはこいつに隠居してもらわなくてはな」
そう言ってポンポンとムスシタナ王の頭を叩く
「わかったわ、行ってくる。」
そう言ってセリスにキスをする。
「じゃあマーリン、まず貴方の腕を何とかするわ行きましょう。」
謁見の間を出る。
そうねぇ腕を一から作ってたんじゃ時間が掛かるし、あっマーダンがいたわね、兄弟だしちょうどいいか。マーダンには国民への見せしめになってもらわねばならないが、まぁ生きていれば問題ないでしょ、マーダンの腕を使ってマーリンの腕に合うように培養すればすぐ出来る。
マーリンを連れて地下牢へ行く
「マーダン、起きなさい。衛兵ここを開けて」
「マーリン、お兄さんを捕まえててくれる。」
そう言うとマーリンがマーダンを起こす
「何これ?人形!?」
確認すると少し本人より美形にされた人形だった。
「っく、ルル、やってくれるわね。」
縫ったような後もない人形、おそらく変化の核辺りを使ったわね。
「シーバード山ではカイと一緒だったのよね?兵士を集めて!ファイブアイズ商会へ向かいます。」




