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剣狼の願い  作者: クタクタニ
第4章 七星剣
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4-5 進む方向

すいません、昨日の更新、間に合いませんでした。頑張りますので応援いただけるとめちゃ嬉しいです。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーソフィー

シーバード山が消えて1週間がたった。


私達はフーセ君を失い

目を覚ましたシルちゃんは泣くでもなくフーセが身代わりに核になった話を聞いて、ただ「そう…」と呟いた。何となく気づいていたのかな。普通に見えるけど、たまにペンダントのように下げたフーセ君の核を寂しそうな目をして手の中で転がしている。


リンちゃんは泣き続けて、今もふさぎ込んでしまっています。目の前で両親が殺されてしまってショックが大きいのでしょう、何とか元気づけてあげたいけれど…そう思っていたところ、何故か、にーさんがリンちゃんのそばにいるようになりました。何を言うでもなく大人しくリンちゃんに撫でられている。ほんと意外。


動物セラピーなんて言うのがあるらしいけれど私も見習ってシルちゃんについてあげようかしら?ダメね、余計なこと話しちゃいそう。


サクマの町を出て私達は次の七星剣の場所に行くかと見せかけて、実は王都に戻ってきている。


もちろん公に町の中を歩くわけには行かないが、灯台下暗し、今は安全の確保と状況の確認、が必要という、カイ君とルルちゃんの話である。


将棋で言うところの飛車角金銀落ち、でもまだ負けてないってカイ君は言ってたけれど…あまり詳しく無い多分それってほぼ負けなんじゃ無いだろうか?


「だいたいの状況はわかりました。」


「聞かせて。」


「まず、ムスシタナ王は健在…と言って良いのかまではわかりませんが生きておいでです。おそらくムスシタナ王国はそのままに、操って政策を進めたほうが混乱が少ないと言うことでしょう。セリスさんが一番隊隊長として出世したと言う発表があったようです。」


「そうですか、娘としてはどんな形であれ生きているのであればまだ希望が持てますが、マーリンの様な例もありますからね、覚悟はしておきます。」


「アソーマ隊長他、ユウヒ、シュウ、マーダンの動向ですが、まずアソーマ隊長、ユウヒ様、シュウ様は消息不明です。王妃様もあの日を境に目撃情報がない為、おそらく王妃様を逃す為に城を出たのでしょう。そしてマーダン隊長ですがクーデターの首謀者という事にされた様で後日処刑が決定している様です。先日マーリンが言っていた様にマーダン隊長の命令でフーセ君が姫様をさらった者として指名手配されています。ちなみにマーリン隊長は死亡した扱いになっている様です。」


「街の様子は?」


「支配がかかっているのは王宮の中、全ての兵士に暗示がかかっているわけではなさそうですが、迂闊に突っつけ無いですね。私の店の方には私がどこに行ったかだけ聞きにきた様です。ですがマーリンに事情が知られた何かされる可能性は高いですね。」


「じゃぁお店は?たたんで逃げる?」


「いえ、特に何もしないでこのまま通常営業を進めます。おそらくあちらも気づいて手を出さないんだと思いますが、うちに手を出した場合、間違いなく王都全体で暴動が起こります。それを避けたい為に頭である私を抑えたいんでしょうね。」


「16で実質の王都の裏ボスね貴方。」


「私が居なくなると大損する人が多いってだけですよ」


「そうなのフフフ。」


「そうなんですよハハハハ」


なんとも言えない笑い合いを見せる、2人。怖い怖い。


「じゃぁ今後の方針ね、とりあえず戦力の確保だけど、一番ありがたいとするならアソーマたちとの合流ね。」


「そうですね、ただ情報を集めて居ますが足取りはつかめて居ません。何しろ情報のプロのシュウ様が居ますからね、むしろ行きそうなところに心当たりはありませんか?


「そうね、西の砦の近くにセーフハウスがあるけど、お父様が操られているって事はそこもばれてるだろうし。」


「わかりました念のため調べさせます。」


「アソーマ達はとりあえず情報待ちね、それで、マーダンだけど…こちらは罠の匂いしかしないのよね。」


「姫さま!でも!」


イルナちゃんが口をはさむ


「はい、それの話し合いだからね、結論を急がない」


「はい…。」


「まず、罠と思うのは、マーリンがあの状態だったからってのが1つ、なぜ同じようにあやつらないの?手駒にした方がいいじゃないの。」


「今回の騒ぎはどんなに隠しても街にも広がります、誰かが責任を取らさねばならないという考え方もあります。それなりの有名人でとなるとマーダン隊長はいいポジションかもしれませんね。」


「罠だとして私たちが王都に戻っていると言うのがバレているって事は?」


「無いとは思いますが…どうでしょうか?絶対か?と聞かれるとわかりませんね、ただあちらが遊んでいるわけでもなければ捕まえに来ない理由もありません。」


「そうね。処刑の日取りは決まってるの?」


「いえ、処刑にすると言うだけで、詳しい事は何も、見せしめと考えるならば公開にはなると思うので、今後の発表待ちですね。」


「どうしたものか…マーダンの力が加わるとこちらも身動きがしやすくなるんだけれども。」


「リスクは大きいですね、それに見合った成果が得られるかと言うところです。」


「私が助けに行きます。」


イルナちゃんが身を乗り出す


「私1人で行けば、失敗しても、問題ありません。」


「問題だらけよ。今貴方が捕まったら全てこちらの情報は筒抜け、いくら貴方が口が硬かろうとあやつられたらおしまい。やるなら全力でやるしか無いの。」


「ルル王女、それでは助けに行くと言っているように聞こえますが?」


「そうね、綺麗に貴方を説得してもしょうがないかと思ってきたわ。今次の行動をするには戦力が必要。マーダンは戦力として申し分ない。そしてそれを見捨てるとこちらはさらに暴走した子がいなくなり戦力は壊滅的に…リスクは承知の上、ここが正念場と私は見るわ。」


「アソーマ隊長達の情報を待つというのは?」


「正直そちらにはあまり期待はしていない、あっちは情報のプロのシュウがいる。もし、情報が聞こえてきたんだとしたらおそらくあっちに余裕は無いんじゃ無いかなぁ?協力関係を組めるなら良いけど足を引っ張るのも引っ張られるのもごめんだわ。」


「わかりました、では。助ける方向でまず考えてみましょう。」


「ありがとうございます。」


イルナちゃんが嬉しそうに頭を下げる


「待ってください、まだ可能かどうかを検証する段階です。不可能であればこの話は忘れてください。」


「それでも…ありがとう…」


ポタポタと涙が落ちる


「ふぅ。一度休憩しましょう、感情が入ってきてはまともな判断は下せません。新しいお茶を用意してきます。」


そう言うと部屋から出て行くカイ君。女の涙は苦手か?


私はカイ君に着いて行く。


「実際のところカイ君はどう思ってるの?」


「呼び捨てで構いませんよソフィー」


「あら、そう?」


「そうですね、マーダンさんは助けれれば一番良いと思いますが、助けれなかった場合、助けれても洗脳されてどうにもならない場合、私達はさらに追い込まれます。いえ、おしまいかもしれません。ここは慎重に動くべきだと思います。」


「うん、客観的に見てるでしょ?カイとして…感情的にはどう思ってるの?」


「それは聞いて意味がありますか?」


「いいえ、興味本位ね。」


「敵陣の本丸ですよ?本来であればこれでもかって言う戦力で立ち向かうところです。自殺行為としか思えない。でもですね、これ出来たら凄いと思うんですよ、根拠はないんですけどね出来る気もするんです。感でしかないんですけどね、それを確かめたいんです。感で動くのは私の中ではアウトです。後押しを探してる段階ですかね。」


「商売人ね。そして男の子ね、いいんじゃない?おねーさんがアドバイスしてあげようと思ってだけど。必要なさそうね。」


「参考までにどんなアドバイスを?」


「少し弱いところを見せた方が女はグッとくるものよ。」


「それは勉強になります。」


「その辺ですよ。」


「その辺ですか?」


「そっ。私にもミルクティーお願いね〜」


部屋に戻り話し合いは続く


結果として、

1、マーダンの居場所の特定

2、イルナちゃんとカイが私、にーさん、ヴァルハラのどれかを使いこなす。

を条件としてマーダン救出を行う事となった。


勿論、居場所が、わかったとしても間違いなく戦闘になるとしたら諦めるって事だけど…イルナちゃんが止まりそうにないのは誰の目に見ても明らかではあった。


特訓は北に続くトンネルで行った。


イルナちゃんは久々に体を動かすため、トンネルの往復ランニングから始め、地道に体力を戻して行く。副隊長というだけあって私やにーさんが口を出す必要は全くなかった。つまらない。


カイはにーさんを持ち指導を受けながら王国剣術を覚えて行く、もともとかじっていたのもあるせいかコツを掴むと閃刃や一閃はなんなく使って見せたが、動き、立ち回りについては今ひとつ踏み込めないところが有った。

フーセと真逆で安全マージンを取り流石のようだ。


「お疲れ様。」


シルちゃんがカイにタオルを渡す。


「ありがとうございます。シルさん」


カイは嫌いじゃないんだけど、こう、シルちゃと仲良くされるとちょっとイラッとしちゃうのよね、さりげなく名前を呼んで目を見るあたりとか…フーセに肩入れしすぎてるのかしら。


「でも凄いね、技とかもすぐに出来ちゃって。」


「いや剣狼様の教え方がうまいんですよ」


「同じ剣狼に教わってもフーセは時間がかかったもの…」


そう言ってフーセの核を手で転がす。

今のはしょうがないよカイ君。やっぱりまだカイ君の方のほうが良さそうね。

仕方ない。私も乗っかってあげましょうか。


「そういえば、フーセの核。どんな能力があるのかしら?」


「フーセの能力?こいつがなんか出来るのかしら?」


「願いが形になるんでしょ?フーセの願いって何かしら?」


「わっぱは最初儂に言ったのはなんでも出来るようにしてくださいって言っておったがの。」


「案外理の核も核も一緒に飲み込まれてるし、なんでも出来るかもね?」


「うーん試しに使ってみようか。」


シルちゃんが魔力を核に込める…


核の色が色々変わり…


「うーん?何にも起こんないな?」


シルちゃんがぴょんぴょん跳ねたり走ったりし始める


「もしかして小娘、飛べたり、瞬間移動できたりしないか確かめてたりするか?」


「ん?そうそう、よくわかったね。」


「理の核をやった時のわっぱと同じことしとるぞ」


シルちゃんの顔が赤くなる


「まさかと思うけど、脳内レベルが一緒になる能力とかなんじゃない!」


笑いが起きる、久しぶりにシルちゃんが笑ったことに安堵する。シルちゃんの胸元で核は赤くなっていた。


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